さて、前回に引き続きまして、官房長官にもお出ましいただいております。最初三十分ということですので、冒頭、長官から御答弁を何点かいただきたいと思います。
先日の党首討論でも徴兵制のことが問題に出ました。そして、昨日、石破大臣もテレビのインタビュー等で徴兵制について触れられているようなんですね。
ここで、ちょっと官房長官に御認識を伺いたいと思います。
安倍総理は、先日、徴兵制について、憲法が禁じるところの苦役に当たる、これは明快であるわけでございますと御答弁されたんですね。この苦役というのは、憲法十八条のことだと思います。「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」これだと思うんですね。
これは、しかし、ここ、どこを見ても徴兵制は禁止していると書いてないんですよ。ということは、政府の解釈で禁止というような、政府が解釈をしているということでよろしいですか。
○菅国務大臣
徴兵制は、本人の意思に反して、兵役と言われる役務の提供を強制されること等から、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨から見て、憲法上許容されるものではないということに解されています。
○辻元委員
今、徴兵制は禁止すると明文はないけれども、十三条と十八条の趣旨からこれは禁止と解釈されているのではないかという御答弁だったと思います。
さて、そこで、前回、菅官房長官に私は、今回の一連の政府お出しの安全保障関係の法案について合憲という学者の方はいらっしゃいますかということで、具体的には三名の方のお名前を挙げました。
私、この三名の方の御主張を調べてみたんです。そうしますと、三名とも、徴兵制は憲法違反とする政府の解釈は間違いであると御主張されている方で、びっくりしたんですよ。御存じでしたか。三人とも徴兵制は、この政府の解釈じゃなくて、できると言っているんですが、御存じでしたか。その事実だけ、三人とも言っていたということを御存じかどうかだけお願いします。
○菅国務大臣
そのことは私は知りませんでした。
○辻元委員
例えば、最初に、トップバッターとして名前を挙げられた西修さん、政府の徴兵制に関する解釈はおよそ世界的に通用しない解釈と言わなければならない。そして、二人目にお名前を挙げられた百地章さん、意に反する苦役に反するから徴兵制はできないという議論は私は反対でありますとおっしゃっています。そして、もう一人、三人目に挙げられました長尾一紘さん、この方は、徴兵の制度と奴隷制、強制労働を同一視する国は存在しない、徴兵制の導入を違憲とする理由はないとおっしゃっているんですね。
官房長官、私、ほかの方、十名ほどと言うので、憲法審査会等でお名前を自民党議員の方が挙げられた方も見ましたけれども、特にこの三名、ほかの方ももっとすごいことを言ってはるんです。非核三原則はもう要らぬのちゃうかとか、それからいろいろなことをおっしゃっていますよ。もっと、憲法は集団的自衛権のフルサイズと言われているものまで解釈できるんちゃうかとか。この三名のお名前を挙げられましたので、徴兵制もできる、解釈で変えられると言っているわけですよ。
私、憲法規範というのは要するに長年の歴代の積み重ね、これを安易に、例えば中曽根総理はこうおっしゃってきました。
ちょっと、後ろからやめてね。お願いしますね。官房長官、聞いてほしいんです。
尊敬されていると思います中曽根総理は、憲法の解釈論は、この後なんです、政策論や願望でやるべきでないと思うと。時々政策を変えなきゃいけないかもしれないけれども、それはやはり憲法の枠内でできることを精いっぱい考えていかないと、もし政策論や願望でやれば、総理大臣がかわるごとに憲法の解釈が変わるという危険性もあると言っているわけですね。
こういう中で、きのう石破さんの発言が飛び出しているわけです。よく似た御発言の趣旨だと思いますよ。石破さんが総理大臣になられるかどうかは知りませんけれども、なられてまた、いや、解釈で変えられるんじゃないか、こうなりかねないわけですね。
総理は、国際情勢に目を向けると、従来の憲法解釈固執は政治家として責任放棄というように昨日おっしゃいました。
歴代の総理は、やはり政策や願望はある、しかし、それで憲法解釈をころころ変えたらいかぬといってやって今日まで日本をもたせてこられたわけですね。
今、合憲だと御主張なさっていると政府が頼りにしている西さんは安保法制懇に入っていましたよ。そういう方が、例えば徴兵制の一例を見ても、解釈で変えられるんだと。ころころ変えられるということですよ。
こういう方々で、立派な方かもしれませんけれども、憲法とか政府の解釈に明記されていなければ、砂川もそうでしょう、自衛権と書いてあるけれども、集団的自衛権はだめと明記されていないから、これは集団的自衛権も含んでいるかもしれないという解釈でしょう。今政府のやろうとしていることはそういうことなんですよ。
そして、これら三名の方は、御自身のイデオロギーや主張に合わせて、菅さんがこの間名前を挙げられた方ですよ、歴代政府が積み重ねた憲法解釈を変えても問題はないとお考えのようなんですね。
徴兵制の件でも明らかなように、自己の主張に憲法を合わせようとする、このような方々が今回の法案を合憲と主張されても説得力に欠けると思いますが、いかがですか。
○菅国務大臣
それはあくまでも憲法学者の一つの意見だろうというふうに思っています。
○辻元委員
憲法学者の方、各種報道機関も世論調査をしておりますが、名前を挙げられた方とは別の方々の場合もあるけれども、大体、合憲はどんな調査も三人になるんです。百人以上の人がとか、また反対は二百人以上の方がいらっしゃる。
要するに、政府が名前をお挙げになった方々などのように、他の解釈もその時々の情勢によって変えられると言う人しか今回合憲と言っていないということなんです。ここを心得てほしいんです。
さて、そこで、横畠長官。横畠長官も徴兵制について過去答弁されているんですね。これも同じ答弁。十三条、十八条などの規定から見て許容されるものではないと御答弁されていたり、政府の閣議決定された答弁書もあります。
しかし、集団的自衛権の行使などについても、歴代の政府が答弁書も確定し、大臣も、中谷大臣も答弁したり、もうさんざんやってきたわけです。それを、一部ならいいとか、限定的と切り出したり、砂川判決の自衛権に集団的自衛権は書いてないからいいんだとか、四十七年見解は後でやりますけれども、これは論理と当てはめだから反対の結果が出てもいいんだとやっているでしょう。
横畠長官は徴兵制は許容されるものではないと今御答弁されていますけれども、安全保障環境や時代が変わったら、これから少子化ですよ、どんどん若い人は減っていきますよ。そして、もしも、こんなことはあってはならないことですけれども、後方支援だと言っていて自衛隊員に被害者が出た、そうすると、自衛隊員に募集する人が減るかもしれませんよ。また、日本の国の周りが大変だ、安全保障環境が危ない危ないと言いながら、それやったら必死で日本を守らなあかんのに、いやあ後方支援に行け、任務がどんどんふえてきたら、自衛隊員の数も足りなくなるんじゃないですか。
そうすると、日本国憲法草案、自由民主党、ここにあります。この自民党の改憲草案には、国は、国民と協力して、領土、領海、領空を保全し、こう書いてあるわけですね、国民と協力してと。それで……(発言する者あり)今、当たり前だとおっしゃった人たちは、憲法十三条と十八条をよく見た方がいいと思いますよ。
これは、自民党は、言ってみれば、国民に協力しろと言っています。憲法でそういう方向に変えようとしているわけです。
横畠長官は、今できないと言っているけれども、今回と同じような手法で、徴兵制についても、時代環境が変わった、自衛隊員が足らぬ、安全保障環境が危ない、環境によって徴兵制を、一部限定的徴兵制とかを編み出してまたしけるようにできるんじゃないかとお考えですか、これは未来永劫できないとお考えですか。どうですか。
○横畠政府特別補佐人
限定的徴兵制というものが全く思いつきませんので、このたび議論させていただいております、集団的自衛権一般ではなくて新三要件において我が国を守るための必要最小限度ということを明確に限定した集団的自衛権の議論とは全く別であろうかと思います。
徴兵制そのものにつきましては、単なる環境の変化によって法的評価が変わるはずもないわけでございまして、今後とも違憲であるという判断に変更はあり得ないと考えております。
○辻元委員
今答弁されても、この間、私と横畠長官との議論、やりとりで、誰が、昭和四十七年、一九七二年見解について、論理と当てはめだというような理解の仕方、今までの歴代の法制局長官及び政府がやってきたのかと言ったら、私が考えましたとおっしゃったんですよ。答弁していますよ。
ですから、今長官がないと思いますと言っても、政府の憲法それから憲法解釈への信頼というのは、歴代内閣が積み重ねてきた議論の上にあるわけです。そうすると、今答弁されていることも、それから閣議決定されたことも変えられるんじゃないかというところが今回の大きな一つの問題なんです。これは憲法規範が揺るぐということなんですよ。ですから、中曽根さんは、政策や願望で憲法の解釈は変えてはならぬと言っているわけですね。その一線を越えているんじゃないか。
官房長官、私の言っていること、わかりますか。憲法規範の信頼が今揺るいでいると思いますよ。いかがですか。
○菅国務大臣
私たち政府の最大の仕事というのは、やはり国民の皆さんの命と平和な暮らしを守る、このことが政府の責務だというふうに思っています。
今日までのさまざまな憲法の問題でも、自衛隊発足当時は、憲法違反である、まさに憲法学者の皆さん、大勢じゃなかったでしょうか。あるいは、PKO法案が国会で議論されたときに、自衛隊を派遣すべきじゃなかった、このことについてもまさに憲法学者の皆さんは多くの方が反対だったんじゃなかったでしょうか。
しかし、今のこと、今日のことを考えているときに、自衛隊そしてPKO活動については、今、国民の皆さんの大きな御理解をいただいているというふうに思います。
いずれにしろ、私たち政府の最大の仕事というのは、たびたび申し上げましたように、国民の皆さんの生命と平和な暮らしを守るために憲法の枠内の判断で何が必要かということを考える中で、今回法案を提出させていただいたということであります。
○辻元委員
今までは、積み重ねの中だったんです。よく、戦争に巻き込まれてこなかったのはどうしてかという議論がありましたが、集団的自衛権の行使という一線を越えていなかったからだと思いますよ。例えば、朝鮮戦争のときに、日本は危ないかもしれぬ、今言われている米艦防護に行かねばならないといって行っていたら、戦争に巻き込まれていたかもしれませんよ。
それは、いろいろな見方があります。日米安保もあります。しかし、集団的自衛権の行使という一線を踏み越えてこなかった、中曽根さんを初め歴代の総理がその線を越えてこなかったことが日本を守ってきたということは事実なんです。
それで、お聞きしたいと思いますが、数ではないとおっしゃった。そして、この後、数ではないんだという根拠に、最高裁、憲法の番人は最高裁である、その見解に基づいてこの法案を提出させていただいたとおっしゃっているわけですね。砂川判決が根拠ですか。どうぞ。
○菅国務大臣
まず、砂川判決というのは、最高裁の判断が判例として法的拘束力を持つという意味の根拠ではなくて、まさに法制局長官もそのことが前提である旨ということは述べているというふうに認識をしております。
私たちは、まさに新三要件のもとで定められている限定的な集団的自衛権の行使、このことに限られるものであって、昭和四十七年の政府見解、そうしたものを踏まえて行ったことでありますし、砂川判決についても軌を一にしている、こういうふうに思っています。
○辻元委員
この前は砂川判決のことだけ御答弁されていて、ちょっと軌道修正されているんですね、その後、記者会見で、昭和四十七年見解に基づいて。これは軌を一にして、中谷大臣も前回の御答弁でこうおっしゃっています。砂川判決そのものを根拠としたものではなくて、あくまでもこれまでの政府見解の基本的論理から導き出したものでございますと。しかし、砂川判決と軌を一にしているとおっしゃったわけですね。そのとおりですね、大臣。
○中谷国務大臣
はい、申し上げました。この点は、内閣法制局長官と共通した部分でございます。
○辻元委員
ということは、一番基本的な論理というのは昭和四十七年、一九七二年の政府見解をもとにしている、根拠にしている、そして砂川判決もそれと軌を一にしているというのが今回の合憲、憲法との整合性の柱であるということです。
そこで、官房長官にお聞きしたいと思います。
となると、この昭和四十七年、一九七二年の政府見解、そして軌を一にしている砂川判決と言われているこの論理が、矛盾があるじゃないかとか、政府の主張はおかしいじゃないかということが論証されれば、この法案は憲法違反ということになり、撤回される、それでよろしいですか。憲法違反になるでしょう。その論理がもしもおかしいということになれば憲法違反ということになる、裏返せばそういうことじゃないですか。
○菅国務大臣
私たちは、全く合憲であるという自信を持って法案を提出しているというところであります。
○辻元委員
その根拠は、昭和四十七年の政府見解をもとにしているということですね。
○菅国務大臣
今回の法整備に当たっては、今、昭和四十七年の政府見解の基本的論理、これは全く変わっていないというふうに私たちは考えています。
この基本的論理において、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」としている。砂川事件に関する最高裁判決、この考え方と軌を一にしているということでありまして、また、今回、この整備に当たって、集団的自衛権の行使、一部限定容認しましたけれども、それはあくまでも自衛のための必要最小限度に限定をいたしております。
集団的自衛権の行使を日本は認めるものではなくて、他国の防衛それ自体を目的とする行使は認められなくて、あくまでも国民の生命と平和な暮らしを守ることが目的であって、極めて限定的なものでありますし、さらに、この点は新たな三要件が明確に示しておりまして、憲法上の明確な歯どめとなっております。その上で、今回の法制ではこの三要件は全て法律の中に盛り込んでおりますので、法律上の要件となっております。
あくまでも昭和四十七年の政府見解の基本的論理の枠内である、こういうふうに考えています。
○辻元委員
ということは、最後のあくまでもから結論だと思いますが、昭和四十七年見解の枠内ではないんじゃないかということになれば憲法違反になるということですね。
○菅国務大臣
私たちは自信を持って、枠内という形で国会に法案を提出させていただいているところであります。
○辻元委員
ここははっきりさせておいた方がいいんです。政府は何をもって合憲と言っているか。そのラインというか、それは何か。それは四十七年政府見解であると言っているわけですから、この枠内でないということになれば憲法違反、踏み出してしまうということでいいかと聞いているわけです。
○菅国務大臣
政府としては、一年間さまざまな検討をして、閣議決定の後に今回法案を提出していますから、当然、憲法の枠内であるということの法的根拠の中で今回提出をしているということであります。
○辻元委員
この憲法の枠内でという、はかる物差しというか、それは昭和四十七年見解だとおっしゃったので、この昭和四十七年見解の適法性というか論理性がおかしいなということになれば憲法違反になる。
もう一回聞きますよ。今おっしゃっていることの裏返しですから、そこははっきりさせてほしいんですよ。じゃないと、要するに、今、憲法違反の議論があるけれども、政府は憲法に合うと言っている。では、それが合わなければ憲法違反なんだなというのは、この昭和四十七年見解とおっしゃったので、これが適合しないということになれば憲法違反ということでいいんですね。もう一回、官房長官。
○菅国務大臣
今の四十七年の政府見解の基本的論理の枠内、そしてこのことは最高裁が判断しています砂川事件と軌を一にしている、そういうことでありまして、それと同時に、新三要件の中に明確に憲法上の歯どめも行っていますので、政府としては、間違いなく憲法の枠内という形の中で提出をさせていただいています。
○辻元委員
では、枠内でなければ憲法違反ですね。
○菅国務大臣
私たちは、今説明をさせていただきましたけれども、説明したとおりに、憲法の枠内であるという形の中で法案を提出しているということです。(発言する者あり)
○浜田委員長
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○浜田委員長
速記を起こしてください。
もう一度官房長官から答弁をさせます。菅内閣官房長官。
○菅国務大臣
たびたび申し上げていますけれども、今回の法整備に当たっては、四十七年の政府見解の基本的論理、これは全く変わっていないということです。そして、この基本的論理において、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」としている。砂川事件における最高裁判決の考え方と軌を一にしている、そういうことであります。
私たちは、まさにその上に新三要件が明確になっておりますので、憲法上の歯どめにもなっているということで、今回の法案はこの昭和四十七年の政府見解の基本的論理の枠内ということであります。
○辻元委員
簡単に聞きましょう。
今るるおっしゃった、官房長官が最後に、これが憲法の枠内になっているということについておっしゃったようなことが、昭和四十七年見解、砂川判決が軌を一にしている、そこから新三要件を導き出した、これが合憲のラインであると。ですから、これが崩れれば憲法違反になるということでいいですね。ここは確認しておかないと。要するに、どこが合憲のラインなのか。だから、これが崩れたら、論理がおかしいなということになれば憲法違反ということになりますね。
答えてくださいよ。もうここは答えておいた方がいいよ、官房長官。答えておいた方がいいですよ、堂々と。堂々と、自信があるんだったら答えてください。自信がないから答えないんじゃないの。そういうことです、そうでございますでいいんですよ。
○菅国務大臣
堂々と、崩れないと考えています。
○辻元委員
だから、崩れたら憲法違反だということでいいですね。もう一回。(発言する者あり)
○浜田委員長
静粛に願います。
○辻元委員
もう一回。はいとお答えいただければいいんです。(発言する者あり)
○浜田委員長
冷静に願います。
○菅国務大臣
先ほど来、論理については四十七年の話をしているじゃないですか。そういう中で私たちは堂々とこのことを、自信を持って枠内であるという形の中で提出させていただいているわけでありますから、それ以上でもそれ以下でもないと思います。
○浜田委員長
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○浜田委員長
速記を起こしてください。
辻元清美君。
○辻元委員
今、四十七年見解の話が出ておりますが、これが唯一の根拠。そして、中谷大臣が、砂川判決そのものを根拠にしたものではなくて、これは軌を一にしているということですから、そぎ落としていけば、一九七二年、昭和四十七年の政府見解が合憲の唯一の根拠である、これでよろしいですか、官房長官。
○菅国務大臣
私申し上げましたけれども、四十七年の政府見解の基本的な論理の枠内であり、そしてこのことは最高裁も述べています砂川事件と軌を一にしている、そういうことであります。
○辻元委員
唯一の根拠は四十七年見解なんですよね。中谷大臣も、砂川判決そのものを根拠としたものではなくて、でも軌を一にしていると言っているだけなんですよ。ですから、四十七年見解が合憲の根拠であるということでいいですね。そこははっきりさせてください。
○浜田委員長
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○浜田委員長
速記を起こしてください。
一旦整理させていただきます。
官房長官の記者会見の時間も迫っておりますので、もう一度、辻元清美君から質問をいただき、そしてそれにしっかりと官房長官に答えていただきたいと思います。
辻元清美君。
○辻元委員
合憲の根拠は、この昭和四十七年、一九七二年の見解が唯一の見解か。ほかに合憲の根拠というものがあるのなら示してください。
○菅国務大臣
これについては、先ほど来私が答弁していますことと全く同じ答弁になります。
それは、四十七年の政府見解の基本的論理、これは全く変わっていないわけでありますし、それと同時に、基本的論理において、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」としている。砂川事件に関する最高裁の判決、これとは軌を一にしている、そういうことであります。そして、今回、平和安全法制は、この基本的枠内で私たちは自信を持って法案を提出している、こういうことです。
○辻元委員
砂川判決も、そうすると、私の質問の他の根拠に当たるんですか。
○中谷国務大臣
この根拠ということでございますが、私が申し上げましたのは、最高裁の判断が判例として法的拘束力を持つという意味での根拠ではないという趣旨でありまして、法制局長官もこのことは前提である旨述べております。
なお、砂川事件の最高裁の判決では、まず、国連憲章は、全ての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有しているということは承認していると述べております。
そして、判決は、憲法九条によって我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、我が国憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないとした上で、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」と述べております。
この部分が四十七年と軌を一にしているわけでありまして、この憲法上認められる自衛の措置については、個別的自衛権、集団的自衛権という区別をして論じているわけではないということであります。新三要件で認められる限定的な集団的自衛権の行使は我が国の自衛の措置に限られるものでありまして、砂川判決の範囲内のものでございます。
この意味で、砂川判決は、限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であるということの根拠たり得るものであるということでございます。
○辻元委員
根拠たり得るものであると今おっしゃいましたね。ということは、もう一回確認しますよ、砂川判決は、法的拘束力がないが、根拠たり得るわけですね。
○中谷国務大臣
まず、昭和四十七年の政府見解は憲法の解釈の基本的論理を示したものでありまして、この基本的論理は維持をしている、そして憲法の範囲内であるということで、この四十七年の政府見解のいわゆる一の部分、こういった「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」、これは砂川判決で示された判決の部分でありまして、そういう意味では軌を一にしている、また範囲の中であるということでございます。
○辻元委員
大臣、そうすると、砂川判決と集団的自衛権の行使が絡まるというか、いつ大臣はそういうことに気づいたんですか。
私、先日、この間も名前が出た山崎拓さんに聞いたんですよ、砂川判決というのは今まで政府の中で集団的自衛権の行使の議論の最中に出てきたことがあるか。あの方は中曽根総理のときから官房副長官をされて、そんな話は政府で聞いたことがない、突然今回出てきたということなんですけれどもね。
中谷大臣は、いつ、誰から聞いたの。高村さんに教えてもらったんですか。いつから知っていましたか。
○中谷国務大臣
これは昨年でありますけれども、昭和四十七年の政府見解をもう一度じっくりと熟読いたしまして、この基本的な論理の中に、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」と。
この文章は、まさに砂川判決の部分の「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」、まさにこの部分が四十七年の政府見解に書いているということで、これは軌を一にする、その範囲の中であるというふうに自分なりに理解したわけでございます。
○辻元委員
昨年とおっしゃいました。だから、昨年以降なんですよ、この論理は。そうでしょう。それまでは違うわけですよ。
では、ちょっと法制局長官にお聞きします。
次は、砂川判決は昨年以降そういう理解になったと今おっしゃったわけですが、四十七年見解の方に行きます。
長官は、「昭和四十七年見解の一、二の部分は変えようがない、変えることができない、憲法改正をしなければ変えることのできない、まさにそういうものである、」と、前回のこの委員会で、十五日、答弁されております。ですから、基本的論理の二の部分をきょうは質問したいと思います。本当に変えていないのかということなんですが。
この二の部分、皆さんのお手元の資料の三枚目の、いつも出している資料ですが、二のところを見てください。「だからといって、」のところからですが、平和主義をその基本原則とする云々かんぬんあって、ここで波線を引いてある、これは以前も議論になっておりますが、あくまで外国の武力によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処して、そのときは武力行使していいですよということを示されていますが、昨年の閣議決定以前、以前ですよ、長官、以前は、この外国の武力攻撃というのは、外国の我が国に対する武力攻撃という理解だったと思うんですね。
これは一ページ目を見ていただいたら、後で申し上げますが、安倍総理が昔から集団的自衛権の一部容認、限定容認はできるんじゃないか、できるんじゃないかと何回も質問してはるんですね。それに対して秋山長官の答えで、三のところの中ほど、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、これと軌を一にするように、自衛隊法でも直接侵略。
ですから、昨年の閣議決定までは、このいうところの基本論理二の外国の武力攻撃は、我が国に対する武力攻撃ということで歴代法制局も理解をしてきたということでよろしいですか。昨年までで結構です。第二次安倍政権が出てくる前まではどうだったか。
○横畠政府特別補佐人
この昭和四十七年見解の一、二の部分は、まさに憲法第九条のもとで我が国として武力の行使ができる場合がある、極めて限られていますけれども、そういう場合があるんだという理由、根拠をまさに述べているところでございます。
御指摘の二の部分でございますけれども、さすがの日本国憲法第九条も、国民が犠牲になる、まさに国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される、そういうときに日本国の政府なり国として何もしないのか、そんなことまで憲法九条が命じているはずがないだろうという、まさにその根本論理を述べているところでございます。
その意味で、外国の武力攻撃という意味ですけれども、四十七年見解の二の外国の武力攻撃という部分については、まさに国家レベルのといいますか、そういう武力攻撃という意味でありまして、三の結論から振り返って見ますと、それは実質、我が国に対する武力攻撃がこれに当たるというのが、三の結論を踏まえればそうなりますけれども、二の論理そのものからしますと、先ほど申し上げたように、九条のもとで武力の行使ができる根拠というものを示しているわけですから、必ずしも我が国に対する直接の武力攻撃に限定されているものではない、二の論理としては限定されているものではないということでございます。
○辻元委員
一ページ目の三でも、我が国に対する武力攻撃。ですから、長官、長妻さんとのやりとりでも、去年の閣議決定以前といいますか、第二次安倍政権が出てくるまでは、この外国の武力攻撃は、法制局の中でも我が国に対する武力攻撃であるというふうに捉えていらっしゃったと思いますし、政府の答弁は全部、我が国に対する武力攻撃なんですよ。
ですから、別にその後の話を聞いているのではなくて、それ以前の政府の解釈は、我が国に対する武力攻撃という解釈で来たということでよろしいですねとお聞きしております。
○横畠政府特別補佐人
二の論理の解釈そのものをしたことはないわけでございます。三の結論まで至った場合について、それがどれに当たるかということになりますと、三の結論で言っていることを踏まえますれば、我が国に対する武力攻撃というものが二の外国の武力攻撃に当たる、そのように考えていたわけでございます。
○辻元委員
もう一度聞きますよ。一、二は基本論理であるとおっしゃっています。ただ、今までの政府は、ここで言うところの外国の武力攻撃、そのときは日本は反撃していいですよというこの外国の武力攻撃の解釈は、昨年の閣議決定以前は、秋山答弁だけではありません、自衛隊法三条でも直接侵略と出ています、ですから外国の我が国に対する武力攻撃という理解で今までは来ましたねということ、解釈してきましたねということだけお聞きしています。この論理を議論したとかしないじゃないんですよ。そういう解釈で我が国は来ていますねということを確認しています。
○横畠政府特別補佐人
昭和四十七年見解の二の部分の解釈として三を述べているわけではなくて、この点はるる御説明しておりますけれども、一、二に該当する場合としては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという事実認識を前提として三の結論を導いているということを説明させていただいております。
○辻元委員
事実認識を認定してということであるから、昨年の、昨年の……(発言する者あり)
○浜田委員長
では、ちょっととめてください。
〔速記中止〕
○浜田委員長
速記を起こしてください。
内閣法制局長官、再度答弁願います。
○横畠政府特別補佐人
昭和四十七年見解の一、二は基本論理でございます。二の部分の外国の武力攻撃ということについての解釈の結果として三の結論が出てきたということではございませんで、これもるる御説明しているとおりでございまして、この一、二の要件に当てはまる、そのような場合はどういう場合があるのかというこれは事実認識でございますけれども、その点につきましては、当時以降昨年までは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみがこの一、二の要件に当てはまるのだという事実認識のもとで三の結論を導き出していたということでございます。
○辻元委員
そうしたら、長官、別の角度から聞きます。
昨年の七月以前も、ここに、外国の他国に対する武力攻撃も読める、入っているというように法制局は理解してきたということでいいですか。
○横畠政府特別補佐人
ですから、この二の部分は、実質的に、何で憲法第九条のもとでも武力の行使ができるのだというその理由をまさに説明しているところでありまして、先ほども申し上げましたけれども、国民が犠牲になる、そういうときに本当に武力の行使まで禁じているのかというとそうではない、そこの根本的な理由、かつ、それがまさに限定されるんだというそこのところを述べた肝のところでございます。
ここに言う外国の武力攻撃ということについて、それ自体の解釈ということで、それがまさに我が国に対する武力攻撃に限るということを申し上げたこともございませんし、その意味で、ここの外国の武力攻撃というものは……(発言する者あり)
○浜田委員長
静粛に願います。ちょっと抑えて。
○横畠政府特別補佐人
国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される、その原因となるようなまさに国家レベルの武力攻撃、そういうような意味にこれは当然とれる、解されるということでございます。
○辻元委員
これは肝なんですよ、長官がおっしゃったように、二のここは。どんな攻撃を受けたときに我が国は武力行使ができるのかという肝が、この外国の武力攻撃にある意味集約されているんです。ここをどう読んできたかということなんです。
そして、去年の七月までは全て、外国の我が国に対する武力攻撃という解釈で、答弁書も答弁も統一されておりました。そして、先ほど申し上げた自衛隊法三条でも直接侵略に対する。軌を一にしているんですよ。ですから、去年の七月までは、外国の我が国に対する武力攻撃のときだけよと解釈をしてきた。しかし、去年の七月、何とかしなきゃということで、ここに外国の他国に対する武力攻撃も、書いてないから読めますよというように変えたんじゃないですか。
参議院の答弁で、我が国でない他国に対する外国の武力攻撃ということも含まれると考え出したのは横畠長官が初めての法制局長官ですかという質問に対して、同様に考えていた者がいたかどうかは存じませんと答弁されている。
ということは、ここの解釈をあなた自身が編み出した。ああよかった、外国の武力攻撃としか書いてない、我が国はここには入っていない、だから我が国の武力攻撃のときだけ日本は武力行使できるという基準をこれで動かせるな、やったと。さっきの砂川と一緒ですよ。自衛権に集団的自衛権はだめよと書いてない、だからこの外国の武力攻撃を他国も含まれるというふうに、ほかにそう考えていた人は知りませんと。あなたが考えたんですね。
○横畠政府特別補佐人
私が考えたわけではなくて、もともと書いてあるということを申し上げたわけでございます。
○辻元委員
どこに書いてありますか。今までの答弁書、答弁、それから政府のいろいろなさまざまなところのどこに外国の他国に対する武力攻撃という言葉が書いてありますか。示してください。
○横畠政府特別補佐人
過去の答弁でいろいろ申し上げているのは、昭和四十七年見解の三の結論までたどり着いた後の、その状態を前提として御説明しているわけでございます。
なぜそのような武力行使が許されるかという理由、根拠を述べているのが一、これは砂川判決と軌を一にしている、ちょっと広いんですけれども。二のところでまさに憲法第九条を前提として絞り込んでいる、そういう論理構造になっているわけです。三の結論に至るのは、この二の外国の武力攻撃という文言を解釈してそうなっているということではないということをるる申し上げているわけです。まさに実質的な理由が一、二でございます。
これまでの、従前の事実認識として、その一、二に該当するようなことというのは我が国に対する武力攻撃が発生した場合しかないのだという、それは事実認識でございます。それを前提にしますと従前の三の結論になるんだ、そういう論理構造であるということを申し上げているわけです。
○辻元委員
寺田委員に少し時間をもらいましたので。
今、三をもとにとおっしゃいましたが、三の結論を導き出す一と二は基本的論理、物差しなんですよ。物差しの解釈を政府はどうしてきたかということを私は問うておるわけです。そうでしょう。
前回の私の質疑で、この一と二は基本論理で三は当てはめ、こういう理解の仕方、何代か前の法制局長官もそんな理解の仕方をしたことはないとおっしゃっているから、誰がやったのと言ったら、私ですと答弁されたんですよ。あなたが理解の仕方も変えて、そしてその基準となっている、あなたが言うところの一と二の論理の部分の一番肝の、どういうときに武力攻撃ができるかというところの解釈の仕方、外国の武力攻撃、我が国に対する武力攻撃のときだけよというのが基本論理の解釈であって、その他国というのを、そうすると、今までここに他国を含めてきたということを証明できないじゃないですか。わかりますか、言っていること。
あなたが、基本的構造も私が考えました。そして、この外国の武力攻撃に他国も含まれているということもあなたが考えました。先ほど申し上げました基本的論理の物差しの解釈の仕方というのは非常に重要だと思いますよ、今まで。それを、我が国に対する武力攻撃というのを他国に対する武力攻撃もオーケーよというように、ここの部分の解釈を、誰かが解釈しないと導けないわけですから、変えたのはあなたですね。同じようなことを言っていた人は他に存じ上げておりませんと言っているから、今まであなたと同じように外国の武力攻撃しか書いてないから他国も含むと言っていた人がいたら教えてください。そして、そういう文献とかがあったら提出してください。どうですか。
○横畠政府特別補佐人
何度も申し上げていますけれども、その一、二の部分は物差しでございます。
従前は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合、それに物差しを当てればよかったということでございます。つまり、物差しを当てるもの、対象は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合だけだったわけです。その意味で、この物差しを集団的自衛権に当てようと試みたことはなかったかもしれません。
今回は、集団的自衛権一般ではなくて、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるようなまさに究極の状況にある、そういう場合における他国に対する武力攻撃が発生して、まだ我が国に対する武力攻撃に及んでいないかもしれませんけれども、そういう場合があるんだという認識のもとに、それにこの一、二の物差しを当てはめることにした。当てはめてみたら、ちゃんとその範囲におさまっているという判断ができるんですよということを申し上げているわけです。
○辻元委員
わかりやすく御説明いただきましたが、横畠長官がやったことは、物差しの目盛りを変えたということです。(発言する者あり)
○浜田委員長
静粛に願います。
○辻元委員
歴代がつくってきた物差しの目盛りを、集団的自衛権の行使を何とか認めようということで、目盛りの幅とかを変えちゃったんですよ。(発言する者あり)
○浜田委員長
静粛に願います。
○辻元委員
これは、続きはまた引き続き行いますが、要するに基本論理二の肝のところの解釈の仕方を変えた。これは、物差しの目盛りを変えた、また形を変えたんです。これは後でやりますが、我が国への武力攻撃で線を引いてきたのを、自国防衛ということで広げたんですよ。これはまたやりますよ。物差しの目盛りを自国防衛に変えたんですよ。
最後ですけれども、長官はこうおっしゃっています。「意図的、便宜的な解釈というのは何だというお尋ねでございますが、具体的に言いますと、例えば、これは」「昭和四十七年見解の一、二の部分を変えるような解釈であろうかと思います。」変えるような解釈をしているんですよ。今まで誰も、外国の我が国に対する武力攻撃だけで、他国のなんて入れていない。解釈を変えたわけですよ。
ですから、この四十七年見解の一と二は物差しで、当てはめというのもあなたがお考えになった。そして、一と二の物差しの目盛りもあなたは変えて結論を導き出そうとしている。ですから、私は、四十七年見解は根拠にならないし、中谷大臣が砂川判決は去年聞いたとおっしゃっていた。そんなもの、論理になりますか。だから違憲だと言っているんです。
最後にもう一回申し上げます。来週の二十四日、会期末ですが、それまでよく考えて、撤回してください、この法案。
終わります。