私は、三点申し上げたいと思います。
一点目は、まず、立憲主義と集団的自衛権の行使の憲法解釈について、先ほどの北側幹事に反論をしたいと思います。
憲法九条だけではなく、憲法には解釈の限界というのがある、この限界を超えた場合は憲法改正をするということが原則だと思います。
そこで、このたび行われました集団的自衛権の行使の憲法解釈について言えば、先ほど新三要件ということを言われました。今までの三要件というのは、我が国が武力攻撃を受けた場合のみということで、これは憲法九条の戦争放棄に基づく解釈というよりも原理として存在してきたものだと思います。この原理を超えた場合は憲法改正が必要である。
このたびは、新三要件によって、明白な危険、存立を脅かされるということですけれども、これは法制局長官とも議論いたしましたが、時の政府の判断で、何が明白な事態であるかということを決める。これは原理でなくて政策判断なんです。
今までは、戦争放棄にのっとった、明らかな、政府がやってはいけないことを書いてあったわけですが、時の政府の政策判断によって、海外での武力行使に参画できる新三要件を満たせばということになれば、これは、政府がやってはいけないことを書いている憲法の解釈というより、原理から逸脱するのではないか。時の政策判断になります。その場合は、憲法の原理そのものを変えて実行すべきであって、このたびの集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の変更ではなく、原理の逸脱であるから、立憲主義に反すると申し上げているわけです。
二点目は、先日、安倍総理がアメリカの議会でスピーチされました。これは、立憲主義及び民主主義を支える、ここは立法府ですが、三権分立を踏み外しているのではないかと思われるような発言をしています。いわゆる今の集団的自衛権の行使、憲法解釈に基づく発言ですけれども、こうおっしゃっています。
日本は今、安保法制の充実に取り組んでいます、長いですから一部割愛しますが、戦後初めての大改革です、この夏までに成就させます、ここで皆様に御報告したいことがあります、これはアメリカ議会に御報告したいことがあると言っています。一昨日、ケリー国務長官、カーター国防長官は、私たちの岸田外相、中谷防衛相と会って協議をしました、今申し上げた法整備を前提として、日米がその持てる力をよく合わせられるようにする仕組みができましたと言っています。これはガイドラインのことです。昨日、オバマ大統領と私は、その意義について互いに認め合いました、皆様、私たちは真に歴史的な文書に合意をしたのですとアメリカの議会に報告しているわけです。
この憲法解釈の変更と言われるもの以来、日本の国会に説明どころか法案の提出もされていない中で、アメリカの議会で安倍総理は、夏までに成就させるとか、御報告をいたしますというような発言をしているわけです。これは三権分立から見たら、ここにいる憲法審査会のメンバーだけではなく立法府として、何をしているのかと。日本の国会で説明もなく、そして法案の提出すらしていないことを、アメリカの議会に御報告いたしますとしている。
私は、立憲主義、そして三権分立の一つの立法府である憲法審査会こそ、それこそ安倍総理をここに呼んで、どういうつもりなんだと、参考人に来てほしいぐらいです。そういうことが一方で行われている。
そして、先ほど話がありましたように、本来は憲法九条を改正したいけれども、国民を憲法九条にならすために、簡単なところからまず国民投票をやってしまったらいいんじゃないかというような、先ほど出ましたお試し改憲というような話すら漏れ伝わってくる状況です。
憲法というのは私たちを縛る規範であって、憲法の原理と、それから私たちはそれをどう規範として扱うかという作法が必要だと思います。それをしっかりここで認識したいと思います。
最後になりますが、私は十五年前から、この調査会から議論してまいりました。十五年間、なぜ憲法が改正されてこなかったのか。これだけ、したいしたいという人もようけ発言があったんですよ。それは、国民が憲法改正を喫緊の課題として感じていないからだと思います。ここのところ、特に憲法改正をする必要がないのパーセンテージがふえてきているということを最後に申し上げて、発言を終わります。