平成二十六年六月十八日提出
質問第二六九号
「建屋の止水」の「実現性」等に関する質問主意書
提出者 辻元清美
「建屋の止水」の「実現性」等に関する質問主意書
六月二日に提出した「福島第一原子力発電所における「凍土壁」の解凍要件及び撤退要件に関する質問主意書」(六月二日質問主意書)について、六月十日に答弁書(六月十日答弁書)が閣議決定された。
六月二日質問主意書における「『建屋内の止水』として、どのような工事を検討・予定していたか。その検討は、どこで、何時から、どのように検討されてきた、あるいは検討されているのか」「平成二十五年九月三十日までに、『建屋内の止水』の方策およびその困難性について、具体的に検討していたのか」という問いに対して、六月十日答弁書で政府は「廃炉対策推進会議、汚染水処理対策委員会等において検討が行われ」とし、検討内容として「例えば、委員会報告書においては『止水策は(略)技術的に非常に難易度が高い(略)したがって、貫通部等の止水策は、対応可能なものから速やかに着手し、他の対応策の実現性が明らかになってくるまで継続的に実施していくべきである』」と例示している。さらに同答弁書には「人による作業が可能な個所については、既に、防水剤や止水パネル等を用いた建屋の止水に着手しており、また、高線量等のため人による作業が困難な場所については、現在、ロボットによる除染を進めているところであり、今後、線量が下がらない場合に備え、例えば、ロボットによる遠隔作業に係る研究開発を経済産業省の補助事業により行うこととしている」とある。
六月十日答弁書におけるいくつかの点について、政府への確認と再質問が必要と考える。そこで、以下のとおり質問する。
一 ここで例示されている「委員会報告書」は、平成二十五年五月三十日の汚染水処理対策委員会報告(以下五月三十日報告)であるが、この報告の後に、「建屋内の止水」の方策およびその困難性について、言及されたものはあるか。もしないのであれば、政府の「『建屋内の止水』の方策およびその困難性について」の認識や知見の積み重ねは、この段階で止まっていると考えてよいか。
二 五月三十日報告における「対応可能なもの」とは具体的にどのような作業を想定しているのか。建屋の、どの部分について、どのように止水する作業を指しているのか。その「対応可能なもの」に、建屋内部、とくに建屋底部の止水工事は含まれているのか。
三 五月三十日報告における「他の対応策(の実現性)」とは具体的にどのような作業を想定しているのか。建屋の、どの部分について、どのように止水する作業を差しているのか。その「他の対応策」に、建屋内部、とくに建屋底部の止水工事は含まれているのか。また、「建屋の止水」についての五月三十日報告の結論は、報告書が出された時点で「他の対応策」については「実現性」が明らかになっていなかったということか。すなわち、報告書が出された時点では「建屋の止水」については、実現する方策が見つかっていなかったというということか。
四 現時点で、「他の対応策」についての「実現性」は明らかになっているか。そうであれば、どの機関・委員会で、いつ、どのように検討されたのか。
五 「他の対応策」についての「実現性」が明らかになっていないのであれば、「凍土壁」の「解凍」時期についても見通しが立たないということではないか。政府の認識を問う。また、先の質問主意書で「建屋の止水」の所用期間を「七年程度」とした根拠について問うたが、答弁が得られなかった。あらためて、「他の対応策」についての「実現性」が明らかになっていない状況で、所用期間を「七年程度」とした根拠について問う。
六 「人による作業が可能な箇所」とは具体的にどこを指すのか。「防水剤や止水パネル等を用いた建屋の止水」とはどのような作業を指すのか。そこに、建屋内部、とくに建屋底部の止水工事は含まれているのか。つまり、「建屋の止水」であっても、「建屋内の止水」ではないのではないか。平成二十六年度の作業で、上記作業の他に予定されている作業はあるか。
七 「高線量等のため人による作業が困難な箇所」とは具体的にどこを指すのか。「ロボットによる除染」とはどのような作業を指すのか。
八 「防水剤や止水パネル等を用いた建屋の止水」や「ロボットによる除染」について、「建屋の流入」を抑制する効果は現れているのか。具体的に示されたい。
九 「ロボットによる遠隔作業に係る研究開発」とは、いつまでに、どのような達成目標となるのか。それは、平成三十二年までに完了し、現場で使えることになるのか。もしも当該「研究開発」が十分な結果を得られなかった場合、「建屋の止水」は不可能という認識か。そうであれば、当該「研究開発」が「凍土壁」の「解凍要件」となるという認識か。当該「研究開発」についての詳細は、政府発表文書等のどこに示されているのか。
一〇 五月三十日報告書における「全体計画の実施スケジュール」には、「原子炉建屋等の内部への流入抑制策」があるが、「平成二十六年から七年程度」とする建屋の止水工事は、この工程表と一致しているか。
一一 現在、高濃度汚染水は、原子炉建屋とタービン建屋等すべてを通じてほぼ等しい水位で滞留している。したがって、すべての建物を止水する必要があると考えるが、政府の認識も同じであると理解してよいか。また、同「全体計画の実施スケジュール」には、「原子炉建屋等の内部への流入抑制策」があるが、トーラス室があるのは原子炉建屋のみであって、他の建物について言及されていないように読める。この「等」には、廃棄物処理建屋及びタービン建屋は含まれているか。また原子炉圧力容器の補修については触れられていないが、これはどの工程で行われると理解すればよいか。
一二 同「全体計画の実施スケジュール」によれば、「トレンチ止水工事」は平成二十五年度中に完了していなければならないはずである。現在、山側から建屋に入ってくる地下水の流入箇所特定はどこまで進んでいるのか。一日に四〇〇トンといわれる汚染水の、具体的に何トン分が特定されたのか。それに対する止水工事はどれだけ完了しているのか。その実績を問う。また、同「全体計画の実施スケジュール」に照らしたとき、貫通部止水の全体工程のうち、どれくらいの進捗状況となっているのか、明らかにされたい。
右質問する。