安倍首相の「慰安婦」問題についての発言に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成一九年五月二五日
提出者 辻元清美
衆議院議長 河野洋平殿
安倍首相は二〇〇七年三月一日に「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」と発言。さらに三月五日の参議院予算委員会で「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった」と発言した。
また、辻元清美提出の「安倍首相の『慰安婦』問題への認識に関する質問主意書」に対し、政府は二〇〇七年三月一六日、「同日(一九九三年八月四日)の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」と答弁した。《答弁A》
ニューズウィーク誌のインタビューに答え、慰安婦問題について安倍首相は「そのときにそういう状況が、つまり、彼女たちがいわば慰安婦として存在しなくてはならないという状況になったことについて、われわれは責任がある」と発言した(二〇〇七年五月二、九日号)。
また安倍首相は、二〇〇七年四月二七日(現地時間)のキャンプ=デービッドにおけるブッシュ米大統領との記者会見において、下記のように発言している。
Q A question on the wartime comfort women issue. Mr. Prime Minister, on this issue, did you explain your thoughts to President Bush, and on this matter, did you talk about further factual investigations on the matter, and any intent to apologize on the issue?
PRIME MINISTER ABE: Well, in my meeting with the congressional representatives yesterday, I explained my thoughts, and that is I do have deep-hearted sympathies that my people(*) had to serve as comfort women, were placed in extreme hardships, and had to suffer that sacrifice; and that I, as Prime Minister of Japan, expressed my apologizes, and also expressed my apologizes for the fact that they were placed in that sort of circumstance.
The 20th century was a century that human rights were violated in many parts of the world. So we have to make the 21st century a century — a wonderful century in which no human rights are violated. And I, myself, and Japan wish to make significant contributions to that end. And so I explained these thoughts to the President.
これに対し、ブッシュ米大統領は下記のように述べている。
PRESIDENT BUSH: The comfort women issue is a regrettable chapter in the history of the world, and I accept the Prime Minister’s apology. I thought it was very — I thought his statements — Kono’s statement, as well as statements here in the United States were very straightforward and from his heart. And I’m looking forward to working with this man to lead our nations forward. And that’s what we spent time discussing today.(米ホワイトハウスホームページより、日本の政府ホームページには掲載なし)
慰安婦問題をはじめとする日本の人権問題は、米国の議会や世論にとって、今後の日米関係を大きく左右しかねない重大関心事となっている。安倍首相が四月三日、ブッシュ米大統領に電話で「自分の真意や発言が正しく報道されていない」と伝えたと報道されているが、日本国民にとっても、安倍首相の発言が正しく翻訳され、正しく米国側に伝わっているかどうかを検証するのは、必要な作業であると思われる。その結果、正しく伝わっていないのであれば、あらためて米国に向けてメッセージを送る必要があると考えられる。
従って、以下、質問する。
一 《ニューズウィークでの安倍首相の発言》について
1 安倍首相のいう「われわれ」とは、具体的に誰を指しているのか。
2 安倍首相のいう「われわれ」には具体的にどのような責任があるのか。安倍首相の見解を示されたい。
3 その責任に対し、安倍首相のいう「われわれ」は具体的にどのような行為をしてきたか、また今後していくべきと考えているか。安倍首相の見解を示されたい。
二 《ブッシュ米大統領との記者会見における安倍首相の発言》について
1 安倍首相は、このときの記者会見を英語で発言したのか。日本語で発言し、通訳を使っているのであれば、該当箇所について日本語の原文を示されたい。
2 安倍首相はこのとき、誰に対して、どのように謝罪を表明したのか。安倍首相の見解を示されたい。
3 安倍首相の発言における「my people」とは誰を指すのか。安倍首相の見解を示されたい。
三 安倍首相の「われわれは責任がある」「expressed my apologizes」という発言の通りであるとすれば、政府は、三月一六日付答弁書の《答弁A》を撤回する意志はあるか。
四 安倍首相の「われわれは責任がある」「expressed my apologizes」という発言の通りであるとすれば、政府は、二〇〇七年五月二八日現在の時点の認識で、「軍や官憲によるいわゆる強制連行」はあった、と考えるか。ないという認識であれば、その根拠を示されたい。
五 安倍首相の「われわれは責任がある」「expressed my apologizes」という発言の通りであるとすれば、安倍首相は、二〇〇七年五月二八日現在の時点の認識で、「官憲が家に乗り込んで人さらいのように連れて行くような強制性は」あった、と考えるか。ないという認識であれば、その根拠を示されたい。
六 安倍首相の「われわれは責任がある」「expressed my apologizes」という発言の通りであるとすれば、安倍首相は、二〇〇七年五月二八日現在の時点の認識で、「当初、定義されていた強制性を裏付けるものは」あった、と考えるか。ないという認識であれば、その根拠を示されたい。
右質問する。