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安倍首相の「強制性」に対する認識と、政府の「河野官房長官談話」についての認識、およびオランダ下院議長からの書簡に関する質問主意書

2007.7.3

質問主意書

安倍首相の「強制性」に対する認識と、政府の「河野官房長官談話」についての認識、およびオランダ下院議長からの書簡に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。
平成一九年七月三日
提出者  辻元清美
衆議院議長  河野洋平殿

安倍首相の「強制性」に対する認識と、政府の「河野官房長官談話」についての認識、およびオランダ下院議長からの書簡に関する質問主意書
辻元清美提出の「安倍首相の『慰安婦』問題への認識に関する質問主意書」での「政府は『慰安婦』問題について『すでに謝罪済み』という立場をとっているが、いつの、どの文書や談話をもって謝罪しているという認識か。すべて示されたい。」という質問に対し、政府は二〇〇七年三月一六日、「御指摘の件については、官房長官談話においてお詫びと反省の気持ちを申し上げているとおりである。」と答弁している。
また、同質問主意書に対し政府は「同日(一九九三年八月四日)の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」と答弁した。《答弁A》
これについて、辻元清美提出の「極東国際軍事裁判の証拠資料と安倍首相の『慰安婦』問題への認識に関する質問主意書」での「政府は、三月一六日付答弁書の《答弁A》について、いまも同じ認識か。」「政府は、二〇〇七年五月二八日現在の時点の認識で、『軍や官憲によるいわゆる強制連行』はあった、と考えるか。」という質問に対し、政府は二〇〇七年六月五日、「御指摘の点を含め、慰安婦問題に関する政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものである。」と答弁している。
六月二六日、米下院の外交委員会で従軍慰安婦問題に関する決議案が可決され、「首相が公式の謝罪声明を出せば、日本の誠意と、従来の声明の位置づけに対する一向にやまない疑いを晴らすのに役立つ」とする文言が組み込まれた。米下院本会議での採択もささやかれる今、政府として河野官房長官談話の位置づけを明確にすることは急務であると考える。
また六月二八日、オランダ下院のフェルベート議長は、日本の国会議員らが「女性を慰安婦として強制的に動員した事実はなかった」と反論する意見広告を米ワシントン・ポスト紙に掲載したことなどに関し、釈明を求める書簡を河野洋平衆院議長に送付した。同広告によれば、「日本軍によって、女性が、その意志に反して、買春を強制されたことをはっきりと明示した歴史文書を発見した歴史学者や研究機関はまだない」とされている。また、いわゆるスマラン事件については「規律違反の例」と記述されており、いわゆるマゲラン事件については記述がないものである。さらに、「女性をその意志に反して強制して働かせることのないよう民間業者に対して警告している文書が多数発見された」としている。例示されている「陸軍省副官通帳」(一九三八年三月四日)には「支那事変地に於ける慰安所設置の為、内地に於て之が従業婦等を募集するに当り、故らに軍部諒解等の名義を利用し、為に軍の威信を傷つけ、且つ一般民の誤解を招く虞あるもの、或は従軍記者、慰問者等を介して不統制に募集し社会問題を惹起する虞あるもの、或は募集に任ずる者の人選適切を欠き、為に募集の方法、誘拐に類し警察当局に検挙取調を受くるものある等、注意を要するもの少なからざるに就ては、将来是等の募集等に当りては、派遣軍に於て統制し、之に任ずる人物の選定を周到適切にし、其実施に当りては、関係地方の憲兵及警察当局との連繋を密にし、以って軍の威信保持上、並に社会問題上、遺漏なき様配慮相成度、依命通牒す。」と記されている。
イラク戦争に例を取れば、捕虜収容所での虐待が明らかにされたとき、虐待を与えた当事者をアメリカ政府が処罰したことが理由で、「虐待がなかったこと」になったり、政府が免責されるということはない。またスマラン事件に関与したものが処罰されたのはオランダの軍事法廷であり、日本軍による処罰の有無に関しては、政府は明らかにしていない。政府の対応次第では、オランダとの友好関係が損なわれる危険もあり、真摯な対応が求められている。
従って、以下、質問する。

一 《河野談話に対する認識》について
1 いわゆる「河野官房長官談話」について「同日(一九九三年八月四日)の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と答弁しているが、政府は、河野官房長官談話が「軍や官憲によるいわゆる強制連行」を認めていない、とする認識か。
2 現在、「河野官房長官談話」を「継承している」立場をとる政府は、「軍や官憲によるいわゆる強制連行」を認めないという立場か。
二 安倍首相は、今の段階で、軍が関与した慰安婦を集めるにあたっての強制性には「狭義」と「広義」の違いがある、という見解を維持しているのか。
三 《オランダ下院からの書簡》について
1 安倍首相は、同書簡が送られたという事実、およびその内容について承知しているか。
2 同書簡に対し、誰が、どのように返答したのか。政府は詳細を示されたい。
3 同書簡に返答するにあたり、オランダ政府戦争犯罪調査局が作成し、バタビア臨時軍法会議に証拠資料として提出され、採用された「マゲラン事件宣誓証人調書/オランダ・バタビア臨時軍法会議書類番号23126」およびオランダ政府戦争犯罪調査局が作成し、極東国際軍事裁判に証拠書類として提出され、採用された「マゲラン事件宣誓証人調書/オランダ・バタビア臨時軍法会議書類番号7868」について、「日本軍によって、女性が、その意志に反して、買春を強制されたことをはっきりと明示した歴史文書」として明示したか。してないのであれば、早急に明示すべきと考えるが、安倍首相の見解を示されたい。
4 同書簡に返答するにあたり、軍が関与した慰安婦を集めるにあたっての強制性には「狭義」と「広義」の違いがある、という見解を示したのか。政府は詳細を示されたい。
5 同広告では「規律違反の例」として取り上げられているスマラン事件について、政府はこの事件そのものがあったという事実は認めるか。それとも事件そのものがなかったとする立場か。また、この点について同書簡への返信でどのような姿勢を示したか。政府は詳細を示されたい。
6 同広告では「規律違反の例」として取り上げられているスマラン事件について、政府は旧日本軍による強制連行があったことは認めるか。それとも「規律違反」であって旧日本軍による強制連行とは認めないという立場か。また、この点について同書簡への返信でどのような姿勢を示したか。政府は詳細を示されたい。
7 同広告では軍部諒解等の名義を利用して「女性をその意志に反して強制して働かせることのないよう民間業者に対して警告している文書が多数発見された」とあるが、こうした事実があることを政府は認めるか。また「支那事変地に於ける慰安所設置の為、内地に於て之が従業婦等を募集するに当り、故らに軍部諒解等の名義を利用し、為に軍の威信を傷つけ、且つ一般民の誤解を招く虞あるもの、或は従軍記者、慰問者等を介して不統制に募集し社会問題を惹起する虞あるもの、或は募集に任ずる者の人選適切を欠き、為に募集の方法、誘拐に類し警察当局に検挙取調を受くるものある等、注意を要するもの少なからざる」とあるように、多数の警告が必要になるほど「女性をその意志に反して強制して働かせること」が頻繁に起きていたと考えるか。それとも、こうした警告がなされたことをもって、「女性をその意志に反して強制して働かせること」はいっさいなかったと考えるか。政府の認識を示されたい。また、この点について同書簡への返信でどのような姿勢を示したか。政府は詳細を示されたい。
四 二〇〇七年七月三日現在の政治的判断として、いわゆる「河野官房長官談話」を閣議決定すべきと考えるが、あらためて政府の見解を示されたい。すべきでないと判断するのであれば、その根拠を示されたい。
右質問する。