福田首相の慰安婦問題への認識に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成一九年一〇月三〇日
提出者 辻元清美
衆議院議長 河野洋平殿
福田首相の慰安婦問題への認識に関する質問主意書
安倍前首相は、慰安婦問題に関して下記のような発言・答弁をしてきた。
「(慰安婦問題について)今に至っても、この狭義の強制性については事実を裏づけるものは出てきていなかったのではないか。」(安倍前首相の発言、二〇〇六年一〇月六日、衆議院予算委員会)。・・・答弁(一)
「官憲が家に押し入って人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった。」(安倍前首相の発言、二〇〇七年三月五日、参議院予算委員会)・・・答弁(二)
「同日(一九九三年八月四日)の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかったところである。」(辻元清美提出・安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書、二〇〇七年三月一六日)・・・答弁(三)
上記のような発言・答弁が繰り返されたことから、アジアや欧米諸国との関係悪化を懸念する声が国内外から多数あがった。米下院は七月三〇日の本会議で、「慰安婦問題」について日本政府が歴史的責任を認め、公式に謝罪するよう求める決議を採択した。決議は、「旧日本軍が若い女性に性的な奴隷状態を強制した歴史的な責任」を日本政府が「明確な形で公式に」認め、日本の首相が謝罪声明を出すよう求める内容となっている。この動きについて安倍前首相は「この決議案については事実の誤認等を含むものもあると、我々はこのように認識をしているわけでございます」(二〇〇七年三月九日、参議院予算委員会)と答弁し、辻元清美提出・「慰安婦問題」についての米下院決議と安倍首相の謝罪に関する質問主意書に対して「全体的に言えば、特に、慰安婦問題に対する日本政府の取組に対して正しい理解がなされていないと考える。」とする答弁書を出している(二〇〇七年八月一五日)。・・・答弁(四)
一方、福田首相は、小泉内閣の官房長官として民主党・岡崎トミ子議員の「日本軍が組織的に性的強制を行ったのか」という質問に対して「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、さらに、官憲等が直接これに加担したこともあった等々記述されております。そういう事実はあったんだろうというように思っておるところでございます。」と答弁している(二〇〇三年三月二〇日、参議院内閣委員会)。・・・答弁(五)
今後、福田首相がどのような歴史認識を示すかについては、国内外から大きな注目が集まっている。
従って、以下、質問する。
一 安倍前首相による「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする答弁(三)について、福田首相は同じ認識か。
二 福田首相は、「官憲等が直接これに加担したこともあった・・・そういう事実はあった」とする答弁(五)について、いまも同じ認識か。
三 福田首相は、慰安婦の募集などにおいて、安倍前首相がいうところの「狭義の強制性」はなかった、と考えるか。
四 福田首相は、慰安婦の募集などにおいて、安倍前首相がいうところの「官憲が家に乗り込んで人さらいのように連れて行くような強制性」はなかった、と考えるか。
五 福田首相は、米下院から「慰安婦問題」に関する決議が出されたことについて、どのような見解を持っているか。
六 福田首相は、米下院の決議にあるように「旧日本軍が若い女性に性的な奴隷状態を強制した」ことについて、日本政府には「歴史的な責任」があると考えるか。責任がある、ないで答弁されたい。また、そう考える根拠も併せて示されたい。
七 福田首相は、米下院の決議に対して日本政府としてどのような取組をすべきと考えるか。また、米下院の決議に応えて、「旧日本軍が若い女性に性的な奴隷状態を強制した歴史的な責任」について公式に謝罪する意志はあるか。
八 安倍前首相による「慰安婦問題に対する日本政府の取組に対して正しい理解がなされていない」とする答弁(四)について、福田首相は同じ認識か。そうであれば具体的にどのような取組に対し、どのように「正しい理解がなされていない」と考えるか。
九 二〇〇七年一〇月三〇日現在の政治的判断として、明確で公式な謝罪として、いわゆる「河野官房長官談話」を閣議決定すべきと考えるが、あらためて政府の見解を示されたい。すべきでないと判断するのであれば、その根拠を示されたい。
右、質問する。