日本の核武装についての麻生首相の認識に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成二〇年一〇月二一日
提出者 辻元清美
衆議院議長 河野洋平殿
日本の核武装についての麻生首相の認識に関する質問主意書
二〇〇六年一〇月一七日の衆議院安全保障委員会において、辻元清美の、二〇〇三年の新聞アンケートで麻生外相(当時)が「核武装を検討すべき」と回答しているがいまも同じ認識か、という質問に対し、麻生外相(当時)は「核兵器というものの保有について検討すべきか、だんだんだんだん隣がみんな持っていくときに、日本だけ何の検討もされていないというのはいかがなものか」と答弁した。続いて一〇月一八日の衆議院外務委員会で、「日本の核保有について全くしていないのは多分日本自身であって、ほかの国はみんなしておるというのが現実」「隣の国が持つというようなことになったときに(略)一つの考え方としていろいろな議論もしておくというのは大事なことだ」と答弁している(答弁一)。
こうした発言に対し、「(核廃絶を求めた過去の)国会決議に背き、国是を否定する」「北朝鮮の核放棄に向けた国際社会の努力に水をさす」などとして、社民党、民主党、共産党、国民新党の四野党は同年一一月九日、安倍晋三首相(当時)に対し麻生外相(当時)の罷免を要求している。
同年一一月三〇日の衆議院安全保障委員会における辻元清美の質問に対し、麻生外相(当時)は、「核をつくる能力(略)を持っていることも確かです」「ロケットを、少なくとも移動衛星、静止衛星、偵察衛星等々を飛ばす、搬送する技術も日本はあります」と答弁して、日本が核兵器製造能力を有することを明らかにした(答弁二)。
なお米国務省は二〇〇八年一〇月一一日、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除したと発表した。これについて「ブッシュ大統領から首相への直接の指定解除通告は、米国務省の正式発表の三〇分前」と報道されている(読売新聞、二〇〇八年一〇月一三日)。報道が事実であれば、すでにライス国務長官が解除の書面に署名してから三時間が経過しており、マスコミも報じた後だったことを考えると、極めて遅い通告だったといわざるをえない。
元米国務省の外交官が「日本で独自の核兵器開発の気運が高まれば、米政府と中国政府双方の不利益になる可能性が高い」と発言するなど、米国内には日本の核武装への懸念を示す機運も生まれている(AFP通信、二〇〇八年一〇月一六日)。
また麻生首相は、同年一〇月一九日の茨城県小美玉市における航空観閲式で「『日米安全保障体制の信頼回復を一層向上させる』と訓示し、後から秘書官が『信頼性』の向上だと訂正する一幕があった。首相周辺は単なる原稿の読み間違いと説明しているが、北朝鮮へのテロ支援国家指定解除について、米側から直前まで連絡がなかったことから、『信頼喪失』の本音が表れたのではとの憶測を呼んだ」と報道されている(NIKKEI NET、二〇〇八年一〇月一九日)。
外相時代に日本の核武装をめぐって罷免要求を受けた麻生首相が、現在どのような認識を持っているかは、国際社会が注目するところである。
従って、以下、質問する。
一 麻生外相(当時)の答弁一について
1 麻生首相は、二〇〇八年一〇月二一日現在において、日本は核兵器保有の議論がなされていないという認識か。
2 麻生首相は、二〇〇八年一〇月二一日現在でも、日本における核兵器保有の議論を検討すべきという認識か。
二 麻生外相(当時)の答弁二について
1 麻生首相は、二〇〇八年一〇月二一日現在でも、日本のプルトニウムを使って核兵器を作る能力が日本にあるという認識か。
2 麻生首相は、二〇〇八年一〇月二一日現在でも、核兵器をロケットなどで搬送する技術が日本にあるという認識か。
三 ブッシュ米大統領から麻生首相への直接の指定解除通告について
1 麻生首相が、ブッシュ米大統領から「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」の連絡を受けたが「正式発表の三〇分前」というのは事実か。連絡を受けた日時を正確に示されたい。できないのであれば、その理由を示されたい。
2 ライス国務長官が解除の書面に署名してから、ブッシュ米大統領の連絡が入るまでに、麻生首相へ「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」を知らせる何らかの連絡は米国からあったのか。あったとすれば、それはいつ、誰から、どのような内容であったのか。
3 外務省は、麻生首相に「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」を知らせたか。知らせたとすれば、いつ、誰が、どのような内容を知らせたのか。
4 麻生首相は、ライス国務長官が解除の書面に署名してから、ブッシュ米大統領から連絡が入るまで、「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」を知らなかったのか。知っていたとすれば、いつ、誰から、どのような内容を知らされたのか。
5 麻生首相は、「北朝鮮のテロ支援国家指定解除」を知ってから米国に対し、抗議や異議表明を行ったか。行ったとすれば、いつ、誰に、どのような内容で行ったのか。
6 「日米同盟の強化。これが常に、第一であります」と麻生首相は所信表明演説で述べている。麻生首相が就任以降、日米同盟は強化されたと考えるか。もしくは弱体化していると考えるか。麻生首相の認識と、そう考える根拠を示されたい。
四 麻生首相の航空観閲式での発言について
1 麻生首相が「日米安全保障体制の信頼回復を一層向上させる」と発言したことは事実か。事実であれば、それは麻生首相個人の考えか。
2 訓示の原稿は本来どのような文言だったのか。秘書官がどのように訂正したかも含めて、明らかにされたい。
3 「日米安全保障体制の信頼」は、二〇〇八年一〇月二一日現在において、回復する必要があると考えるか。麻生首相の認識と、そう考える根拠を示されたい。
右質問する。