ソマリア沿岸への自衛隊派遣とソマリアについての国連決議に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成二一年四月三〇日
提出者 辻元清美
衆議院議長 河野洋平殿
ソマリア沿岸への自衛隊派遣とソマリアについての国連決議に関する質問主意書
ソマリア沿岸での海賊問題に対処し、日本国民の生命と財産を守るという目的で海上自衛隊の海外派遣が海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(以下、海賊新法)の国会での審議を待たずに行われている。ソマリア沿岸の海賊に対処することは国際社会の要請でもあるという。しかしながら、国会の議論を待たずして海外へ自衛隊を安易に派遣することは、多くの疑念を持たざるを得ないものである。
従って、次の事項について質問する。
一 自衛隊のソマリア沿岸派遣と国連決議について
1 海賊新法が成立する以前に自衛隊法第八二条の「海上警備行動」規定によって自衛隊のソマリア沿岸派遣は根拠付けられている。一方、ソマリア沿岸での海賊の対処については、国連安保理決議第一八一六、一八三八、一八四六、一八五一が採択されている。上記の国連安保理決議それぞれに対する政府の見解を示されたい。
2 海賊新法案、第一条(目的)では、国民生活への重要性と国連海洋法条約の規定が根拠とされている。同条項では「公海その他いずれの管轄にも属さない場所」における海賊行為を当該場所において取り締まることが規定されている。他方、国連安保理決議一八一六、一八四六、一八五一は、ソマリア暫定政府の「能力の欠如」を理由に、ソマリア領域内での海賊対処を容認している。これら安保理決議は、海洋法条約と乖離しているが、安保理決議が海洋法条約の限度を越えていることをどのように認識しているか示されたい。
3 国連安保理決議一八一六、一八四六、一八五一は、ソマリア暫定連邦政府(以下、TFG)の承認を前提としている。日本政府は、このTFGを未承認である。日本政府がこれらの安保理決議を承認するにあたってなんら問題を生じないのか示されたい。また、これまでに、当該国の政府を認めないまま安保理決議を承認した例はないのか示されたい。
4 国連安保理決議一八一六、一八四六は海賊の制圧のためにソマリアの領海内で、また、決議一八五一は、ソマリア領土内であらゆる必要な措置をとることができるとしている。日本政府は、ソマリアの領海内や領土内であらゆる必要な措置をとることに賛同しているのか。また、その場合に、自衛隊がそのような措置をとる可能性があると考えるか。
5 金子一義国土交通大臣は、衆議院における海賊新法案の審議で沿岸国の同意を得た場合、あるいは要請を受けた場合、当該国の領海内に立ち入ることは可能であると答弁している。その場合の国内法上の根拠を示されたい。
6 同様にこれらの決議は、国連憲章第七章に基づく武力行使を含む「必要なあらゆる措置」を認めているが、それについての政府の見解を示されたい。
7 ソマリアの「海賊」は、かつてプントランド自治政府が創設した沿岸警備隊が中核になっているとの有力な情報がある。海賊行為に従事している集団とTFGないし、ブントランド自治政府(政府高官や軍幹部)との関係はいかなるものか説明されたい。
8 仮に、「海賊」がTFGないし、プントランド自治政府関係者と密接な関係があった場合、その組織は「国家に準ずる組織」になり得るのではないか、見解を示されたい。
二 ジブチ共和国との地位協定について
1 ジブチ共和国との地位協定終結の手続きはどのような経緯で行われたのか示されたい。
2 ジブチ共和国に派遣する自衛隊の人数と部署、装備、役割を海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊それぞれ詳細に示されたい。
3 海上自衛隊の哨戒機2機が派遣されることが報道されているが、この哨戒機の活動する領域を示されたい。
三 ソマリア国への国際協力活動について
1 ソマリア国に関する国連決議一八三一、一八四四、一八五三、一八六三について、政府の見解をそれぞれ示されたい。
2 ソマリア国領土内での国連の活動について、自衛隊派遣の検討をしているか、しているとすれば、どのような役割での派遣と考えているか示されたい。そのための準備活動を実施している場合は、それについて内容を示されたい。
3 前項以外のソマリア国への国際協力活動も検討状況について示されたい。
右質問する。