平成二十六年五月十三日受領
答弁第一四八号
内閣衆質一八六第一四八号
平成二十六年五月十三日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 伊吹文明 殿
衆議院議員辻元清美君提出「砂川判決」と集団的自衛権に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員辻元清美君提出「砂川判決」と集団的自衛権に関する質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねは、国会議員としての質疑に係るものであり、政府としてお答えする立場にない。
一の2及び3について
昭和三十五年三月三十一日の参議院予算委員会における御指摘の岸信介内閣総理大臣(当時)及び林修三内閣法制局長官(当時)の答弁は、憲法と集団的自衛権との関係に対する質問に対し、「米国に対して施設区域を提供」することや「米国が他の国の侵略を受けた場合に、これに対してあるいは経済的な援助を与えるというようなこと」を「集団的自衛権というような言葉で理解すれば、こういうものを私は日本の憲法は否定しておるものとは考えません」と述べて当時集団的自衛権の内容について議論があったことに言及した上で、「いわゆる集団的自衛権というものの本体として考えられておる締約国や、特別に密接な関係にある国が武力攻撃をされた場合に、その国まで出かけて行ってその国を防衛するという意味における」集団的自衛権、すなわち武力の行使を内容とする集団的自衛権の行使については、憲法第九条の下では許容されない旨を述べたものである。
一の4から9まで、二及び三の1から3までについて
現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである。
他方、集団的自衛権の問題については、現在、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)において、前回の報告書が出されて以降、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、我が国の平和と安全を維持するためどのように考えるべきかについて検討が行われているところであり、政府としては、懇談会から報告書が提出された後に、対応を改めて検討していく考えである。
いわゆる砂川事件は、昭和三十五年法律第百二号による改正前の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法(昭和二十七年法律第百三十八号)の合憲性が争われた事案であり、砂川事件最高裁判決(昭和三十四年十二月十六日)の結論は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(昭和二十七年条約第六号)が一見極めて明白に違憲無効であるとはいえない以上、同法も違憲ではないというものである。
当該判決において、憲法第九条に「いわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、(中略)わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」であるという考え方が示されているが、これは、平成二十六年四月十六日の衆議院外務委員会等において小松一郎内閣法制局長官が答弁しているとおり、従来からの同条に関する政府の解釈の基盤にある基本的な考え方と軌を一にするものであると考えている。
御指摘の安倍晋三内閣総理大臣の発言は、このような問題意識について述べたものである。
三の4について
集団的自衛権とは、国際法上、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利と解されており、政府は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第六条に基づく施設及び区域の提供並びに合衆国軍隊の我が国への駐留は、実力の行使に当たらず、集団的自衛権の行使に当たらないと解してきている。
答弁第一四八号
内閣衆質一八六第一四八号
平成二十六年五月十三日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 伊吹文明 殿
衆議院議員辻元清美君提出「砂川判決」と集団的自衛権に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員辻元清美君提出「砂川判決」と集団的自衛権に関する質問に対する答弁書
一の1について
お尋ねは、国会議員としての質疑に係るものであり、政府としてお答えする立場にない。
一の2及び3について
昭和三十五年三月三十一日の参議院予算委員会における御指摘の岸信介内閣総理大臣(当時)及び林修三内閣法制局長官(当時)の答弁は、憲法と集団的自衛権との関係に対する質問に対し、「米国に対して施設区域を提供」することや「米国が他の国の侵略を受けた場合に、これに対してあるいは経済的な援助を与えるというようなこと」を「集団的自衛権というような言葉で理解すれば、こういうものを私は日本の憲法は否定しておるものとは考えません」と述べて当時集団的自衛権の内容について議論があったことに言及した上で、「いわゆる集団的自衛権というものの本体として考えられておる締約国や、特別に密接な関係にある国が武力攻撃をされた場合に、その国まで出かけて行ってその国を防衛するという意味における」集団的自衛権、すなわち武力の行使を内容とする集団的自衛権の行使については、憲法第九条の下では許容されない旨を述べたものである。
一の4から9まで、二及び三の1から3までについて
現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである。
他方、集団的自衛権の問題については、現在、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)において、前回の報告書が出されて以降、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、我が国の平和と安全を維持するためどのように考えるべきかについて検討が行われているところであり、政府としては、懇談会から報告書が提出された後に、対応を改めて検討していく考えである。
いわゆる砂川事件は、昭和三十五年法律第百二号による改正前の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法(昭和二十七年法律第百三十八号)の合憲性が争われた事案であり、砂川事件最高裁判決(昭和三十四年十二月十六日)の結論は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(昭和二十七年条約第六号)が一見極めて明白に違憲無効であるとはいえない以上、同法も違憲ではないというものである。
当該判決において、憲法第九条に「いわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、(中略)わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」であるという考え方が示されているが、これは、平成二十六年四月十六日の衆議院外務委員会等において小松一郎内閣法制局長官が答弁しているとおり、従来からの同条に関する政府の解釈の基盤にある基本的な考え方と軌を一にするものであると考えている。
御指摘の安倍晋三内閣総理大臣の発言は、このような問題意識について述べたものである。
三の4について
集団的自衛権とは、国際法上、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利と解されており、政府は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第六条に基づく施設及び区域の提供並びに合衆国軍隊の我が国への駐留は、実力の行使に当たらず、集団的自衛権の行使に当たらないと解してきている。