平成二十六年五月二十日提出
質問第一六九号
集団的自衛権の解釈に関する再質問主意書
提出者 辻元清美
集団的自衛権の解釈に関する再質問主意書
辻元清美が提出した質問主意書に対し、政府は以下の答弁を閣議決定した。
●二〇一四年四月二十五日提出「集団的自衛権の解釈に関する質問主意書」
二 安倍総理大臣の質問に対し、内閣法制局は「憲法解釈において政府が示している、必要最小限度を超えるか超えないかというのは、いわば数量的な概念なので、それを超えるものであっても、我が国の防衛のために必要な場合にはそれを行使することというのも解釈の余地があり得るのではないかという御質問でございますが、(略)お尋ねの集団的自衛権と申しますのは、先ほど述べましたように、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するものでありまして、ただいま申し上げました自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないものでございます。したがいまして、従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面がございますが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で申し上げているものでございまして、お尋ねのような意味で、数量的な概念として申し上げているものではございません。」(秋山收内閣法制局長官、二〇〇四年一月二十六日、衆議院予算委員会)と答弁している。
しかし、安倍総理大臣は当該答弁の後もこのように答弁している。「そこで、この答弁の際にも、言わばこの概念として、絶対概念ではなくて量的概念として必要最小限を超えるという当時は判断をしているわけでございます」(安倍内閣総理大臣、二〇一三年五月八日、参議院予算委員会)
「数量的概念」とする安倍総理大臣の見解と、「第一要件を満たしていないという趣旨」とする内閣法制局の見解と、どちらが「当時」の政府見解か。また、「現在」の政府見解はどちらか。
●二〇一四年五月十三日閣議決定答弁書
一及び二について
現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである。他方、集団的自衛権の問題については、現在、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)において、前回の報告書が出されて以降、我が国をとりまく安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、我が国の平和と安全を維持するためどのように考えるべきかについて検討が行われているところであり、政府としては、懇談会から報告書が提出された後に、対応を改めて検討していく考えである。
この答弁は、質問に対応していない不誠実な答弁である。質問では「当時」と「現在」の政府見解をただしているのであって、「将来」について問うたものではない。
以下、質問する。
一 「現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである」ということだが、この答弁書が閣議決定された二〇一四年五月十三日時点における政府見解について改めて問う。
1 「集団的自衛権は、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するもの」という政府見解で間違いないか。
2 「集団的自衛権は、自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないもの」という政府見解で間違いないか。
3 「従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面があるが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で説明しており、数量的な概念ではない」という政府見解で間違いないか。
二 二〇〇四年一月二十六日における政府見解についてあらためて問う。
1 「集団的自衛権は、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するもの」という政府見解で間違いないか。
2 「集団的自衛権は、自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないもの」という政府見解で間違いないか。
3 「従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面があるが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で説明しており、数量的な概念ではない」という政府見解で間違いないか。
三 二〇一三年五月八日における政府見解についてあらためて問う。
1 「集団的自衛権は、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するもの」という政府見解で間違いないか。
2 「集団的自衛権は、自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないもの」という政府見解で間違いないか。
3 「従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面があるが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で説明しており、数量的な概念ではない」という政府見解で間違いないか。
四 二〇〇四年一月二十六日における政府見解と、二〇一三年五月八日における政府見解と、二〇一四年五月十三日における政府見解で、次の点について変更された点があるか。
1 「集団的自衛権は、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず外国のために実力を行使するもの」という政府見解について。
2 「集団的自衛権は、自衛権行使の第一要件、すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていないもの」という政府見解について。
3 「従来、集団的自衛権について、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものという説明をしている局面があるが、それはこの第一要件を満たしていないという趣旨で説明しており、数量的な概念ではない」という政府見解について。
五 「そこで、この答弁の際にも、言わばこの概念として、絶対概念ではなくて量的概念として必要最小限を超えるという当時は判断をしているわけでございます」(二〇一三年五月八日、参議院予算委員会)という安倍首相の答弁は、二〇一三年五月八日当時の政府見解と一致しているか。
六 二〇一四年五月十五日の記者会見において、安倍首相は「もうひとつの考え方は、我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方です。」「生命、自由、幸福追求に対する国民の権利を政府は最大限尊重しなければならない。憲法前文、そして憲法十三条の趣旨を踏まえれば、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることは禁じられていない。そのための必要最小限度の武力の行使は許容される、こうした従来の政府の基本的立場を踏まえた考え方です。」と発言した。当該発言について問う。
1 安倍首相の当該記者会見が行われた段階で、集団的自衛権に関する「従来の政府の基本的立場」は変わっていないということで間違いないか。
2 「最小限度」の憲法解釈については「現時点(二〇一四年五月十三日)で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである」という答弁が閣議決定されている。従って、安倍首相の発言における「必要最小限度」とは「第一要件を満たしていないという趣旨で説明しており、数量的な概念ではない」という「従来の政府の基本的立場」を踏襲したもので間違いないか。
3 そうであれば、「必要最小限度の武力の行使は許容される」のは個別的自衛権に関する憲法解釈であり、「集団的自衛権」に関するものではない。したがって安倍首相のいう「限定的に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方」と「こうした従来の政府の基本的立場を踏まえた考え方」とはまったく別のものと考えてよいか。
4 そうであれば、安倍首相はなぜ二つのまったく異なる「考え方」が同じものであるかのような、国民に誤解を招くような表現をしたのか。このような発言について、内閣法制局の見解はいかがか。
七 二〇一四年五月十五日の記者会見において、安倍首相は「その場所で突然紛争が起こることも考えられます。そこから逃げようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が救助、輸送しているとき、日本近海で攻撃があるかもしれない。このような場合でも日本自身が攻撃を受けていなければ、日本人が乗っているこの米国の船を日本の自衛隊は守ることができない」「こうした事態は机上の空論ではありません」と「具体的な例」を示した。当該発言について問う。
1 過去、海外在留邦人が紛争国から脱出するケースで、米国に救助され、米国の艦船で輸送された事例はあるか。救助・輸送された海外在留邦人のうち民間人の人数・割合はどれくらいか。
2 過去、海外在留邦人が紛争国から脱出するケースで、紛争の一方の当事国に救助され、当該国の艦船で輸送された事例はあるか。救助・輸送された海外在留邦人のうち民間人の人数・割合はどれくらいか。
3 過去、紛争の当事国である米国が、紛争の相手国に在留する第三国(第三国は米国と同盟関係にある)の国民を救助し、米国の艦船で輸送した事例を政府は把握しているか。その場合、救助・輸送された人のうち民間人の人数・割合はどれくらいか。その際に第三国が集団的自衛権を発動した事例はあるか。
4 過去、A国と同盟関係にあるB国と、C国との間で紛争が起きた際に、C国に在留するA国の国民が、B国に救助され、B国の艦船で輸送されたというような海外事例を政府は把握しているか。その場合、救助・輸送された人のうち民間人の人数・割合はどれくらいか。その際にA国が集団的自衛権を発動した事例はあるか。
右質問する。