つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

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2013年5月23日 憲法審査会

2013.5.23

議事録

<自由討議>
緊急事態関連を憲法に入れるかどうかを検討するに当たりまして、特に、東日本大震災がございましたので、その現場から、何が一体できなかったのかということをまず検証することが必要だと思っております。

私は、東日本大震災発災二日後から、総理大臣補佐官として被災地の支援に当たりました。そのときに、今の体制で総理大臣のできること、できないことは一体あるのかという議論や、さらには、被災地支援のための各種会合をしながら、各省庁連携をしながら被災地支援を進めましたが、現行法律上できないことも出てきたことは事実です。これは、その後、災害対策基本法等、迅速に改正をして対応できるようにしていくというようなことがございました。特に、現場の検証が必要である、そして、私たちの今までの政治のあり方はどうだったのかということを考えさせる局面が多かったです。

先ほど、福島の現場からの声がございました。国の役割がなされていない、どういうことかと。最も大きな原因は、それまで原子力事故、原発の事故はないということを想定して日本は動いてきました。例えば、避難の区域をIAEAなどでは三十キロ圏内に指定するように、これは前安倍政権のときですが、日本に対しての指導がありました。しかし、原子力安全委員会でそれを検討しようとしたことを経産省がとめて、日本は相変わらず、十キロ圏内でいいんだと。そして、三十キロに広げる、または原発事故のときの対応を法整備などで整備し過ぎると、原発は事故が起きるということを認めてしまうのでそれは必要ないというような議論が繰り返され、その結果、このような大規模な原発事故への対応がなされてこなかったというような現実があります。

私は当時、被災地、福島の対応もしておりましたが、これは放射能との戦争で、戦後の日本の最大の危機だったと思うし、今もその戦争は続いていると思うんですね。そういう現状の中で、例えば津波に対しても、早くから議員が指摘をし、そして津波の対策が不備ではないかということに対しても、大丈夫であるという、どちらかというと、今から検証すれば、根拠のない政府の答弁を繰り返してきた。

そうであるならば、やはりこれは緊急事態をめぐる文言を憲法に書き込むかどうかという点で、自民党の皆さんも、災害対策基本法や国民保護法、必ずしも憲法上の根拠が必要ではないが、望ましいかどうかの検討であると先ほどおっしゃったかと思うんですが、今の法整備であったり、大規模災害、特に原子力に対するテロの対応ということについても、原子力規制委員会の中で議論されているかといえば、委員長に聞いても、取り扱いではないと。

政府の方では一部議論が始まっているようですけれども、今の私たちがやるべきこと、そして今の憲法下でもできることを考えた上で、しかし、ここが問題があるから緊急事態の項目を憲法に書き入れるべきじゃないかというように、やはり、大きな災害に面したわけでありますから、それへの対処がどうだったのか、どこに不備があるのかということをまず徹底的に検証した上で憲法議論に入らないと、何か、先ほど公明党の斉藤幹事の発言の中にも、憲法にその条項を入れれば、何か免罪符とは申しませんけれども、何でもうまくいくような、そういうことになりかねないという御指摘もありましたけれども、私も同様の危惧を持っております。

この緊急事態を議論する際に、何かやはり実態を伴った議論ではないような印象も受けますので、特にこの大きな災害を経た上で、今の憲法下で本当にできなかったことは何なのかということを突き詰めて考えていく必要があるのではないかと思います。

もう一点、特に武力事態などが起こったときの人権の制限などについてですが、私たちは、過去の戦争の反省に立って、現行憲法下で戦後体制を築いてきました。過去は、やはり拡大解釈をした上で、今すぐそういうことが起こるとは想定しにくい場合もあるかと思いますが、例えば治安維持法であったり表現の自由の制限ということが戦争を長引かせ、泥沼化させていったという歴史も持っているわけです。

ですから、私たちは、緊急事態に人権を一定制限されるということ、憲法の中にそのような解釈ができることを入れるということが、国民を守ることになるのか、それとも、過去の歴史では、戦争がさらに泥沼化に突っ込んでいったという歴史もございますので、そこも過去に鑑みてよく議論しないと、今の災害があったからすぐにこれは必要だ、または緊張が高まっているから必要だという拙速な議論にはならないのではないかという点を指摘させていただきます。

以上です。

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今、中谷幹事からの御発言がございましたので、その意見に対して申し上げたいと思います。

今、中谷幹事は機長の御発言もされたんですけれども、具体的に挙げられた最初の事例、私権の制限が必要な根拠というのは、私はいささか希薄ではないかというように思います。

今回、自衛隊も非常に大きな役割を果たし、自衛隊を中心とした救援活動をしていくに当たって、弊害や活動を阻害する要件があったのかということを具体的にお示しにならないと、権利の制限というときの根拠として漠然とした一般論で議論する、その上に立って、緊急事態を憲法に書き込むというのは非常に大きいわけですから、もっと具体的な根拠を持って御発言していただかないと説得力を欠くし、むしろ権利の制限というところだけがひとり歩きしかねないのではないかと思っております。

今回、被災者の救援や支援、あれだけ大きな被害、そして原子力発電所の事故もあったという、今まで人類が経験をしたことのない事態に遭遇をいたしました。それに当たっても、日本での対応は、日本人だけではなく外国人もたくさん居住しておりますけれども、一言で言えば、誤解を恐れず言えば、かなり団結力があったんですよ。本来憲法で規定されている公共の福祉に鑑みて、被災者も、そして地方自治体も、それぞれの人たちが自分たちの権利だけを主張するのではなく、お互いにどうすれば助け合えるか、地域が復興できるかということをかなり示した事例にもなるかと私は思っております。

ですから、中谷さんが特に党を代表して先ほど発言をされましたので、権利の制限や権利と義務との関係で、先ほど事例に挙げられたようなことでおっしゃるのならば、そして、東日本大震災を経験した私たちであっても、ちょっと説得力に欠けるかなと思いましたので、一言申し上げさせていただきました。