谷垣法務大臣、きょうは、どうぞよろしくお願いいたします。
特に、今、憲法の議論が各所で行われておりますけれども、法務大臣でいらっしゃいまして、法の支配の重要性ということを大変強く強調していらっしゃいますし、大臣の憲法観であったり、立憲主義とは一体どういうものであるのか、それから、やはり法務大臣、人権を擁護するという大きな責任を負っていらっしゃいますので、人権への基本的な考え方、そして、自民党総裁時代に、自民党の日本国憲法改正草案をおまとめになった責任者でいらっしゃいますので、それにも幾つか御意見を賜りたいと私は思っております。
まず、立憲主義ということ、私たちは、憲法に関しましては、改正について賛成の人も反対の人もおりますけれども、立憲主義というものを踏まえた上でどうしていこうかということを議論していかなければならないと私は考えております。この立憲主義を大臣はどのように御認識されていますでしょうか。
谷垣国務大臣
教科書に書いてあるようにきちっと説明できるかどうかは自信がないんですが、多分に私のイメージだと思ってお聞きください。
私は、立憲主義というのは、ポイントは、今、世界の各国の中でも、この政治権力は法の上に立つという政治権力が現実に存在すると思います。立憲主義の一番の根本は、権力といえど法のもとに立つ、法の支配を受ける、そのための装置として憲法をつくる、これは不文の場合も成文の場合もあると思います。
そういうことが立憲主義なんだというのが、教科書に照らして採点すると、いい点がとれるかどうかわかりませんが、私の立憲主義のイメージでございます。
辻元委員
私も同じように捉えておりまして、憲法を最高規範として国家権力を制限する、その範囲の中で、例えば私たちはさまざまな法律などをつくるわけですが、この制限の範囲を超えた法律などをつくると、これは違憲であるということで成立させることはできない。非常に重要な基本原理だと私は思っております。
そんな中で、なぜこの立憲主義のことを申し上げるかというと、何か今の国会を見ておりますと、憲法論議の中で、私は憲法改正、賛成、反対、両方あっていいと思いますが、立憲主義そのものを踏み外しかねない御発言も散見されるということで、非常に危惧を抱いております。
先日の予算委員会で、これは法務大臣もいらっしゃったと思いますが、石原慎太郎日本維新の会代表が、こういう御発言をされました。「憲法を、今の日本の最高指導者であるあなたが」、これは安倍総理のことをお指しになりながら、「これを廃棄すると仮に言われたときに、」総理大臣が憲法を破棄するといったときに、「これを法的に阻害する根拠というのは実際はないんですよ、」ということを予算委員会の場で一党の党首がおっしゃる。
大臣にお聞きしたいんですけれども、憲法を総理大臣が破棄するといったときに、法的に阻害することはできない。いかがですか。私は、これは立憲主義の否定につながると考えるんですが、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣
憲法に関してはさまざまなお考えの方がいらっしゃるので、私が理解できる考え方と理解できない考え方があるのは事実でございます。
ただ、今の引用されたお考えは、先ほど申し上げた私の憲法観とはかなり隔たりがあるなと思います。
辻元委員
私は、法務大臣として、やはりこれは立憲主義から逸脱するのではないかとはっきりおっしゃった方がいいと思うんです。
というのは、要するに、憲法によって権力を制限される側が憲法の廃止を宣言するというのは、これは立憲主義否定につながり、こういうことをさせないために憲法があるというように私は理解しているんですが、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣
今お引きになった石原議員のお考えがどういうことなのか、私は詳細には存じません。
ただ、今までいろいろ憲法の議論をいたしますと、本当にいろいろなお考えの方があるんだなと思います。
それで、これは私の想像ですから、ほかの議員の方のお考えを勝手に想像して解釈するのは大臣としてなすべきことかどうか、若干戸惑いを覚えながら申し上げるんですが、恐らくその背景に、今の日本国憲法の制定手続自体が有効なものではないというお考えがあるのではないかと思います。事実、そういう御議論、ほかの方から伺ったことがございます。
しかし、私は、これはいろいろな議論がございますけれども、今の日本国憲法は大日本帝国憲法の憲法改正条項にのっとって手続的にはきちっとできたものだと思います。もちろん、そういう主権が制限されている中で憲法改正ができるかどうかという、また別の非常に重要な議論はございますけれども、初めから無効なものだという立論は私は違うのではないか。我が国の国会も、それからずっと戦後に行われました選挙も全て日本国憲法のもとで行われている、そういう前提に立って私は考えなければいけないと思いますので、辻元さんのおっしゃったことに正面からお答えしているかどうかわかりませんが、多分、さっきお引きになった考えとは立論の前提が違うのではないかと私は思います。