171-衆-外務委員会-14号 平成21年06月10日
辻元委員
社民党の辻元清美です。
本日は、国際通貨基金協定の改正及び国際復興開発銀行協定の改正、そして日本・香港刑事共助協定、日本・中国領事協定と、四本の案件が取り扱われておりますけれども、私はその中で、金融危機と言われる昨今の状況をかんがみまして、国際通貨基金、IMF、これを中心としたIMF体制のあり方、そしてさらに刑事共助協定などについて中心に質問をしたいと思っております。
まず最初にお伺いしたいんですけれども、金融危機でサミットが二回開かれました。その中で私、大事なことは、やはり何が間違っていたのかと。経済体制がここまで来たのにはやはり原因があるわけですね。そこの分析をしつつ、例えば国際的な機関としてIMFがさまざまな課題に新たにどのような改革を進めながら取り組んでいくのかということが大事だと思うんですね。
といいますのも、例えばヘッジファンドの暴走とか、それからアメリカの行き過ぎたいわゆる新自由主義的な流れとか、いろいろ言われておりますけれども、IMF体制というのは少なくともこの金融のど真ん中にいたわけですね。ですから、世界の金融市場の番人と言う人もおりますし、役割としましては、経済的な安定、危機の予防、それから危機が発生したときにはその解決のための活動、そしてさらには貧困の緩和という、非常に重要な位置にいたわけです。しかし、現在のような金融危機に至ってしまったというのは、やはりその中心にいたIMF体制そのものの見直しもこの際しっかり議論しなければならないと思うんです。
そういう中で、未然に危機の予防というのがIMFにとっても非常に重要な役割であったはずなんですけれども、今回は防げませんでした。そういう中で、今までのIMF体制のあり方について、日本政府としてはどういう点が問題だったという認識でいらっしゃるんでしょうか。
中曽根国務大臣
IMFにおきましては、今回の世界金融経済危機、これにつきまして十分に事前の警戒機能を発揮できなかった、そういう反省も踏まえまして、IMFが金融安定理事会、いわゆるFSBですけれども、これとも協力をいたしまして、早期警戒の実施に向けた取り組みが進められているところでございます。
今回の金融経済危機に対しましては、IMFが加盟国の危機対処への支援や、それから将来の危機予防に積極的に役割を果たすということが強く求められているわけでございまして、我が国といたしましても、引き続いてIMFの資金基盤の強化とか、またサーベイランス機能の強化などの改革に積極的に取り組んでいく考えでございます。
辻元委員
今の大臣の御答弁の中で、事前の予防が十分今回はできなかったという、その理由をどう考えるか、分析するかということなんですね。そこの部分は政府としては議論をされているんでしょうか。後でちょっと聞きたいと思いますけれども、事前の予防ができなかったから、これから早期に予防、警戒するような体制をつくると言われているんですが、では、なぜ、どういうことが問題で事前にいろいろな危機を察知できなかったのか、この点についての分析をやはりしないとだめだと思うんです。
政府として、そこは分析をしているのかどうか。そして、その主たる理由を例えば一つ二つ挙げるとこういう点が問題だったなという点を、どのようにお考えでしょうか。
中尾政府参考人
お答え申し上げます。
大変難しい質問ですけれども、先生おっしゃいますように、IMFは、国際的な通貨システム、金融システムの中心的な部分でありながら、十分な役割が果たせなかったんじゃないかと言われておりまして、その一つは、アジア通貨危機のときもそうでしたけれども、金融危機に直接関係があることに本来絞ってアドバイスをし、資金を貸していくべきなのに、いろいろな周辺的な構造問題にまで踏み込んでアジア各国なんかを離反させてしまったような面もございます。
それから、アジアの国を含めて、新興市場国の出資額が少ない、それに見合った資金のアクセスというか借入額も限られているということで、十分な資金が供与される仕組みになっていなかった。
それから三つ目は、非常に問題が起こってから出て行くものですから、IMFからお金を借りたということ自身が既にスティグマというか汚名につながってしまって、必ずしも予防的な役割を十分果たせなかった。
それから、サーベイランスというか、各国の経済問題を監視していくということがございますけれども、アメリカを含めた先進国を含めて、十分な問題点の指摘が行われたのかどうかということも問題になっている。
それから、その問題点の指摘になる背景としてのマクロ経済政策についての考え方も、物価が安定し、成長率が高く、金利も低いような状況が続いていた中で、実はいろいろな矛盾が、資産価格が上がっていったり、それから非常に過剰な貸し付けが行われた、後になってみるとこれは明白なんですけれども。そういうことについても、インフレが安定して、成長率も高いということの中で、十分な注目がなされなかった。
いろいろな問題点が指摘されておりまして、そういうことについては我が国も含めて国際的な議論をして、反省に立ってやっていこうということに。それから、IMFの融資制度それからサーベイランスのあり方などについても、日本の主張なんかも含めて議論している。特に日本は、九〇年代にいろいろIMFのアドバイスを受けた、それからアジア通貨危機の中でも中心的な救済の役割を果たしたということで強い関心を持っておりますので、積極的に関与しているということでございます。
辻元委員
今の幾つかの点、非常に重要な点の御指摘だったと思います。
その中で、やはり一番最初に御指摘された点、アジアの危機があったときに、これは九〇年代後半ですけれども、このときのIMFのあえて介入という言葉を使えば、そういうふうに見られている国々もありますので、このときのいわゆる構造調整プログラムなどについて、一つのモデルを押しつけていくというようなやり方がかなりなされた。これに対してのIMFに対する信頼性だけではなくて、私は、IMFの基本にあるその考え方といいますか、そこがやはり、多様な世界に対して一つの価値観の物差しで、行き過ぎたところがあるんじゃないか。
この点について、次はちょっと、過去のアジアの通貨危機のときの事例で検証を幾つかしてみたいと思うんですね。それがない限り、やはり次に進めないと思うからなんです。
きょう、竹下副大臣にお越しいただいているんですが、竹下副大臣は以前、財金の委員会で三月にこういうように答弁されているんですね。「IMFの課したコンディショナリティー、」、要するに、アジア諸国を中心にいろいろな国に、条件が余りにきつ過ぎるんじゃないかという不満が残っていて、「本当にIMFによる解決が一番の正解だったのかねという思いがアジアの国々の中にはまだ残っていることは紛れもない事実でございます。」とお答えになっているんですね。
財務省としても、やはり今もここの点は、アジアの国の一つですから、これからのIMFの改革の中身を提案していくに当たって、この視点は非常に大事だと思うんですが、財務省としては、この点を踏まえて、どのように今後の改革に取り組んでいこうとされているんでしょうか。