171-衆-海賊行為への対処並びに…-5号 平成21年04月21日
辻元委員
社民党の辻元清美です。
きょうは、参考人の皆様、本当にありがとうございます。
私はピースボートという船に乗っておりまして、一万トン級の客船でしたが、あの海域を何回も走りました。スエズもパナマも何回も通過をし、地球一周を続けてまいりました。そういう意味では、船というのが大好きですし、海の安全を守るということの必要性、非常に痛感をしております。
以前、マラッカで私自身も、乗っている船舶が、海賊か漁船かわからないベトナム難民を救助した折も、最後まで、海賊かもしれないということで、慎重な対応をしながら救助をしたというような経験もございます。
さて、そういう中で、今回このような事態に至っていること、本当に深刻でかつ解決が難しい問題だなと思っております。私自身は、短期的な対応、そして中期的な対応、長期的な対応、三つをしっかりやっていかないと解決しないと思うんです。
きょう、皆様のお話を伺っておりましても、ソマリアの国情の安定、これは長期的対応が必要だと思います。中期的には、周辺国家の沿岸警備活動を初め、海上保安力を高めていくこと、これに日本がどう貢献できるかということも大事だと思います。そして、短期的な対応としてのやり方をどうしていくか。しかし、この短期的な処方せんを間違えますと、中期的、長期的に至る前にさらに混乱と危険が増幅するというようなこともありますので、それで今回この委員会でいろいろな立場から慎重な審議がなされていると考えております。
さてそこで、ちょっと視点を変えまして、私が今危惧しているのは、あの海域が全く通れない海域になってしまう可能性を危惧しております。といいますのは、まず水島先生にお伺いしたいんですが、先ほど暴力の連鎖という御発言がありました。記事でも大きく取り上げられておりますけれども、アメリカの海軍が三人の海賊を射殺したということに端を発して、報復だというような物騒な言葉が聞かれ、その後、このソマリアの混乱というのは単に海賊だけの問題ではなくて、アメリカが、二〇〇六年でしたか、空爆をかけました。結局、テロとの闘いの最前線の一部にソマリアを位置づけ、そしてアメリカが大規模な空爆をジブチからかけました。百人ぐらいのソマリアの民間人も亡くなったということが国連でも問題になって、潘基文事務総長もアメリカに対して非常に懸念を表明しました。ジブチから米軍機が飛び立ったために、ジブチも事前承認なくソマリアを攻撃した、幾ら無政府の状態でも何をやってもいいというわけではないということで、そういうようなことも、この間、この数年起こってきていることです。
そういう混乱がある中で、アルカイダがあんな、何かそれに乗じてといいますか、攻撃せよみたいなことをホームページで言っているというような情報も飛び込んできている。そうなりますと、この三人の射殺ということが引き金になるかどうかわかりませんけれども、この海域自体がさらなる危険な、ややこしい、今の状況よりもさらに複雑な国際情勢が絡んできたような危険海域になる可能性がないとも言えないな、それを一番心配しているんですね。そうなると、みんな、喜望峰を回らなあかんということになるかもしれない。
そういうような観点から、水島先生が先ほど暴力の連鎖を危惧するというようなお話をされましたので、最初にその点をお伺いしたいと思います。
水島参考人
ソマリアの海賊はどういう人たちかという議論がある中で、元漁民であるとか、あるいは沿岸警備隊員だった、こういう話があります。
最近ドイツのディ・ベルトという新聞に、ソマリアの海賊のインタビューが出ました。彼は、海賊で金を稼いで、今は金融業をやっております。その彼の言葉を聞きますと、今、若い人がどんどんソマリアで海賊になっている、これがその傾向であると。つまり、ソマリアという国が破綻した後、先進国がいろいろと、先ほど申し上げた乱獲をやったりごみを捨てたりする。その怒りが、海賊に向かうのと同時に、安易な拝金主義で、金稼ぎの道具になる。つまり、いわゆる海賊ビジネス化している。その側面があることはよく報道されます。
私も、カッセル平和研究所の分析したものを読んだところ、やはり海賊の背景の中に、そのような貧困だけじゃなくて、かなりソマリア内部におけるそういう格差社会が新たに生まれてきて、そういう流れの中から、金を早く効果的にとろう、そういうビジネスライクな行動があって、だから殺さない海賊だったんですね。その殺さない海賊たちに対してアメリカが三名狙撃をしたということによって、言ってしまうと、そういう海賊たちと専ら暴力をプロとする人たちが連合しながら、最終的にはそういう手段であの地域で海賊が凶暴化する可能性というのは、先生がおっしゃる点は私も危惧しております。
そういう意味でいうと、どちらが引き金を引いたかということでいえば、もちろん海賊側がやっているわけですが、RPG—7を使って皆殺しにするとか、そういう手段を超えるような海賊のこの間のあれよりは、むしろ非常にビジネスライクにやっている、この怪しい海賊たちに向かう方法が、いわゆる射殺という方法でやったことで流れが少し変わってくるのではないかという面は、私は危惧をしております。
辻元委員
今後、これで海賊が減っていく効果があるのかどうか。効果のある対策を打たないと意味がないと思うんですね。
要するに、最近では、各国の艦船がいない海域をねらってまた出てくるとか、それから、各国の艦船、自衛隊も含めまして、ずっとそこにいるわけにはいかないわけですね。あっちにいるからもう一隻行け、こっちにいるからもう一隻といかない。そうしますと、これは、出口戦略といいますか、艦船を派遣するときも、いつまでかというのもわからないというような状況になってくるわけです。
そうしてきますと、先ほどから現場の三名の方が、やはり根本的な解決には別の方法も並行してやっていかなくちゃいけないというお話を前川参考人から伺い、そして森本参考人からは、力でねじ伏せて解決できるものではないけれども、とりあえず今こういう事態を何とかしなくちゃいけないという、苦渋の選択といいますか、そんな御発言があったように承ります。それから、海員組合、いろいろな過去の歴史も踏まえてソフトパワーの併用ということを、現場の声として承りました。
私は、先ほどからマラッカ海峡の例が出ておりまして、ソマリアに即は当てはまらないと思います。ただ、オマーンやジブチやイエメンからは、日本に対しての、やはりかつての経験からの指導であったり、リーダーシップを発揮してほしいと。先日は、イエメンの沿岸警備隊の方が直接日本にもいらっしゃいまして、要請があったんです。
そういう中で、マラッカの中で、直接すぐには当てはまらないかもしれませんけれども、あそこで実績を上げた、そして日本の海上保安庁が活躍をしました。皆さんも、民間と海上保安庁と協力し合ってさまざまな取り組みを進められたと思うんですが、その中で、これは効き目があったと思われるところをお三人の現場の皆さんに、具体的にこれはよかったと思うというような点をぜひ参考にお聞かせいただきたいんです。よろしくお願いいたします。
前川参考人
マラッカ・シンガポール海峡というのは、恐らくアデン湾、スエズ海域よりももっと重要な海路、海上交易の要衝だと思っております。それと、あの海域は極めて狭いんですね、海峡としては。シンガポール、マレーシア、インドネシアという国に囲まれて。その中で、私ども船主協会としては、あの海域の航路安全を確保するために、例えばブイのメンテナンス等々に、船主協会からマラッカ・シンガポール協会を通じて寄附を行い、安全航行を確保するための方策も講じております。協力させていただいております。
海賊問題については、私ども船主協会、各国の船主協会の集まりで、アジア船主フォーラムというのがあります。もう十年以上前からやっているわけでございますけれども、この中に五つの委員会がありまして、その五つの委員会のうちの一つが、やはり海上安全の委員会でございます。その中で、民間の立場で各国の船主協会の代表が集まり、海賊防止のための有効な手だてはないかと。これは、主として、自分たちで議論したことを各国の政府を通じてお願いする、こういうことでございます。
したがって、最終的には政府がどういうふうにかかわってくるか、こういうことだと考えておりまして、我々、民間の立場からも、そういう集まりを通じて議論したことをそれぞれの政府にお伝えし、要請する、こういう立場かと考えております。
それから、済みません、先ほどイエメンの話がありましたけれども、私どもも、船主協会の立場でイエメンの大使とも面談をいたしました。イエメンの大使の方も、イエメンの国としてもあの海域の安全航行を守ることについて、やはりそれなりの責任と意図を持っているんだけれども、何分にも、いわゆるコースタルラインが長くて、なおかつ、国として、そういうところに投資といいますかお金をつぎ込む余裕がないから、あるいは日本のODAなり、あるいは海上保安庁なりに、いわゆる巡視船あるは巡視艇の供与をお願いできないかというような話もされておりました。
したがって、民間としての立場でいろいろなことはやるつもりでございますけれども、やはり最終的には、政府としてどういったことを取り上げてやっていくか、こういうことだと考えております。
森本参考人
マラッカ海峡の場合、何が一番効果があったかということは、私は専門家ではございませんのでよくわかりませんが、現象だけで言わせていただきますと、海賊が急に減ったのはあの大津波の後です。あの後はうんと減りました。ですから、また起こってくれたらとは言いませんけれども、その後、大体それほど、かつての頻度で海賊が出てくるということはなくなりました。これは、そのほかに何か社会的な背景もあるんじゃないかと思いますが、その辺はちょっと私にはよくわかりません。
以上です。