170-衆-安全保障委員会-4号 平成20年12月16日
辻元委員
社民党の辻元清美です。
私は、きょう、三つの提案をしていきたいと思っています。
一つ目は、自衛隊のシビリアンコントロールと言論の自由の関係の整理という提案、二つ目が、東アジアの信頼構築、そして三つ目が、先ほどから出ております国際的な紛争の予防や仲介、これは非常に外交、安全保障にとって大事な三つの柱だと考えております。
一つ目なんですけれども、浜田大臣、先日からの続きです。
私は、今回の田母神事件で、自衛隊員の皆さんの言論萎縮を防ぐこともとても大事だと思っているんですね。そのためには、ある程度だれでもはっきりわかるルールがあった方が萎縮にならないと思うんです。それがないと自粛しちゃう。ルールがないと、これを言っていいのかな、悪いのかなと思っているうちに不健全な空気が生まれるんじゃないか。ですから私は、はっきりとしたルールをこの際もう一度検討し直すと。
今見ますと、先日御指摘しました金田誠一議員への答弁書と、それから自衛隊関連の法案、それなどしか、ちょっとしかないわけです。もうちょっと具体的に踏み込んでルールをお決めになったらいかがかという御提案を申し上げたいと思うんですが、いかがでしょうか。
浜田国務大臣
辻元先生からの御指摘、大変重要に思っておるところでございます。
当然、もっとわかりやすく言えば、今まで手続をとらなければならないものをとらなかったところもあるわけでありますので、そこは明確にしていきたいというふうに思っています。
特に、部外への意見発表の手続に関しては、従来より防衛省では、論文の寄稿や講演会等において職務に関し意見を発表する場合、あらかじめその旨を上司に届けるように特に大臣官房長通知によって定めておりまして、各幕僚長等にあってはあらかじめ大臣官房長に通報するということにしておるわけであります。
当然この手続について周知徹底を図っていますが、こうした手続が適正に機能しなかった可能性もというか、周知徹底できていなかったからこういう問題になっているわけで、表現の自由等の基本的人権に抵触しない範囲でどのような改善が可能か検討しているところであります。
特に、そしてまたその幅もあると思うんですが、要するに、ただ単に上の方ではなくて、書籍等々もいろいろあるわけでありますので、そういったものにもやはり我々は注意を払わないかぬ。その手続の仕方を明快にしていくことは極めて重要だというふうに思っているところであります。
辻元委員
これはどこの国も、本当にどうするかということの、言論の自由と職務の権限や職務上の守秘義務もありますので、特に外交や安全保障にかかわる部分というのは他の省庁に比べて特殊性がありますから、そこの兼ね合いですよね。
一例、ドイツの例を申し上げたい。
ドイツも、御承知のようにナチスの時代を経てということで、過去の戦争の反省から軍の暴走というものをとめなければいけない。先般この委員会でも、政治的活動は一体何なんだというようなこともございました。
例えば一例、ドイツでは兵員法の十五条で政治的活動を定めておりますけれども、兵士は任務において、その是非にかかわらず特定の方向を持つ政治活動を行ってはならない。これは当たり前だ。この後こういうことがある。同僚同士の会話として自身の考えを述べる権利はこの限りではない。
次、こう続くわけですね。兵舎及び軍施設における任務中あるいは自由時間の間、自由な意見表明は兵員の基本規則によって制約される。自由時間も制約されるとはっきり書いてある。そうしたら、どこで言っていいのか、悪いのかとかいうのがはっきりしているわけですね。兵士は任務における結束を妨げないよう行動しなければならない。特に、兵士は特定の政治グループを宣揚してはならない。この後も、これには演説、文書配布、政治組織の代表につくことが含まれる。
そして、兵士は政治的催しにおいては制服を着用してはならない。これはもうちょっと調べますけれども、制服の着用についてもやはり定めをきちんとする、それの方が皆活動しやすいと私は思うんですね。
兵士は上官の立場として、田母神さんは上官の上官だったわけですけれども、その是非にかかわらず政治的見解について部下に影響力を行使してはならないということです。
そしてさらに、ドイツやスウェーデンの場合は、軍隊との関係でオンブズというものを別に置いています。このオンブズというのは、何かあったとき、独立した権限で、もちろん守秘義務があるわけですけれども、調査できるというようなことを担保しながら、シビリアンコントロールというものをトータルに完成させているわけです。
ですから、私も、やはり先ほど大臣がおっしゃった、これからもう少し踏み込んでいくと。届け出をするというだけじゃなくて、もうちょっと具体的なことまで、別に縛るんじゃないんです、ここはいいよ、ここは悪いよとはっきりした方がむしろ省内の風通しがよくなるんじゃないかなと思っております。
それで、もう一点確認させていただきたいんです。歴史教育の問題がこの間からこの委員会でも多々上がっておりました。その中で、前回私は「翼」という雑誌をお示ししましたけれども、田母神さんの事件が起こる直前の九月五日発行の「翼」を見ますと、こうあるわけです。現在、航空自衛隊では組織を挙げて歴史教育を重視する施策が推進されておりますとなっているわけです。その組織を挙げてやっていたのが、ちょっと大臣の言葉をおかりすれば、右に偏っているんじゃないかとはっきりおっしゃいましたけれども、だったわけですね。
この歴史教育の見直しの進捗状況、あれから大分時間がたっていますので、一たんああいう形で生まれたものですから、廃止も含めて御検討なさったのかどうか。いかがでしょうか。それと、もうちょっと踏み込んで具体的にした方がむしろいいと私は思います、自衛隊の皆さんのために。いかがでしょうか。
渡部政府参考人
お答えいたします。
歴史教育を含めまして、統合幕僚学校を初め、各幹部学校あるいは防大、それぞれにおきます課程あるいは教科書等々を今検討を進めているところでございます。
辻元委員
しっかり国会に報告をしていただきたいというように思います。別に包み隠しすることではなく、バランスとおっしゃっていたわけですから、バランスがとれるものにしていきたいということ、オープンにしていくことが信頼回復への道だと思うんです。ルールをこうしましたということをはっきりと皆がわかるようにする。解釈によってはわかりにくいなということを残した方がむしろ萎縮するし、風通しが悪くなると思いますので。これは一つ目の提案です、シビリアンコントロール。
もう一つは、きょう中曽根大臣に初めて質問させていただきます、東アジアの信頼構築です。
私は、先般の十二月十三日に行われました日中韓首脳会議に注目をしております。前からこういう会議があった方がいいなと実は思っておりました。特にこの中で注目をいたしましたのが、三カ国の防災協力に関する共同発表が行われまして、これから防災協力の連携を強めていこうという、ここに注目しています。
なぜかといいますと、お互いに一つの案件で具体的な協力をし合うことは信頼構築につながり、東アジアの緊張、安全保障上も緊張を低下させていくことにつながっていくと思うんですね。
この防災協力の今後の取り組み、どういうように具体的にお考えでしょうか。