164-衆-日本国憲法に関する調査…-10号 2006年04月27日
辻元委員
社会民主党・市民連合の辻元清美です。
きょうは、お忙しい中お越しいただきましてありがとうございます。大変参考になる御意見を現場の皆さんに聞かせていただいたと思っております。特に、訓示規定であっても、これは反対であるという明確な意思を示していただいたというふうに思っております。
私たちも、表現の自由ということを最優先すべきであって、これは憲法をどうするかという手続法に限らず、メディアに対する規制というのはないところから始めるというのが出発点、あらゆるところで規制をかけるということには反対していかなきゃいけないという立場で質問をさせていただきたいと思っております。
その中で、今、規制が強まっているかどうかという御意見の中で、それぞれ強弱はあったとしても、やはり何らかの規制が強まっていく流れの中で、今回の国民投票というものに対しても、訓示規定であっても入れたいという動きがあるのではないかと私は危惧しているわけなんです。
そこで、この規制ということで大きな焦点となりました個人情報保護法の影響がどのように出てきているのかということを参考のためにまず一つ伺いたいと思います。
新聞協会として、この法律についてどのような統一見解を出され、現在、どのように、総括なのかどうかわからないんですが、議論されていることがあったら、影響という点を規制との関係でお聞かせいただきたいと思います。どなたがよろしいかそちらで決めていただきまして、お願いしたいんですが。
藤原参考人
先ほども申し上げたように、内閣府に対して、意見を求められましたので、ヒアリングに応じてきました。それで、新聞協会の方で、個人情報保護法が運用になって以降、どれくらい社会的な混乱がありましたでしょうかということを加盟各社に呼びかけて、その記事をコピーして持っていったんですが、量にするとこのぐらいですね。(辻元委員「これぐらいというと、十センチ、十五センチなものでしょうか」と呼ぶ)縮まればこうでしょうけれども、いずれにしてもかなり膨大な記事のスクラップになりました。つまり、これは先ほども言いましたけれども、法律に対する過剰反応ですね、あるいは拡大解釈というか。
例えば、大きな事件、事故がありましたが、その病院が個人情報保護法を名目に警察に対して名前を言わない。あるいは、学校で子供の保護の連絡網というのがありますね、電話番号が書いてあって、順送りでお願いしますよというものもできにくくなっている学校もある。あるいは、また学校のことを言いますけれども、卒業アルバムの顔写真を拒否する人が出てきた。卒業アルバムもできない。あるいは、私たちのかかわりで言うと、例えば一学期、二学期、三学期の、やあい、新学期が始まるよ、元気のいい子がたくさんいるねという写真がありますね、その写真を撮りに行くときでも、学校によっては、あらかじめどの写真を、どの子の写真を載せるか教えてくださいとか。
もちろん、守るべきプライバシー、個人情報というのはありますけれども、それは何をもって、どういう理由で守らなければならないのかなど、社会的な合意形成がまだできていない、そうした混乱が起きていますよ、こういうことを申し述べてきました。それで、意見書も添えました。その意見書は、かくもさまざまなところで混乱が起きていますということで、見直しも含めた検討をお願いしたい、こういう趣旨でした。
辻元委員
今のことに関連しまして、先ほど石井参考人が、民主主義の危機というような御発言もございました。随所に規制が出てきているという御発言。もう少し具体的な事例を御紹介していただければというように思うんです。
これは、今起こっていることがどういうことであるかということを聞くことが、やはり規制をしていくということはこんな結果につながる、または、おかしいではないかという主張に幅を持たせることになると思いますので、お聞きしたいと思います。
石井参考人
個人情報保護法の関連でちょっと御説明をします。
例えば地域社会で、ちゃんと暮らしておられるかどうか高齢の方を見回るボランティアのグループがある。この人たちが行政に対してどういう方がどこにおられるか教えてくださいと言うと、これは教えられません、個人情報保護法がありますというふうな答えを返される。つまり、地域社会の助け合う共助の仕組みというのが成り立たない状況が出てきている。要するに、もっと広く情報を共有した方がいいにもかかわらず、それが妨げられているという状況になっている。
それから、大きな問題で、公務員の処分の問題があります。ほとんどが処分した名前は出さない、あるいは理由も出さないということが広がっている。例えば、東北のある市の出来事なんですが、学校の先生が性的な非行で免職になった。それは教育委員会は発表しない。それで、この方が民間の塾に再就職をして、やはり同じような事件を起こす。そのとき初めて同じような非行があって仕事をやめていたということが明らかになる。塾の経営者は、当然、どうしてそれが開示されないのかと言う。
つまり、行政あるいは国の機関で何が起きているかということを国民が知ることができない状況がある。その多くの理由が、個人情報保護法があるということになっている。
私どもの取材のあり方に対する制約というのは当然ありますけれども、それ以上に個人情報保護法ができたことによって社会に非常に大きな影響が出ている。ですから、社会の基盤が崩れている、崩れかけているという危機的な状況である。
そのほかに、言論に対するストレートな規制が民主主義社会を脅かすということは、先ほどから申し上げていることです。
辻元委員
ちょっと違う視点からの質問を次にさせていただきたいと思います。
憲法にまつわる議論というのは、先ほどから自由で活発な議論が最も保障されなければいけない重要なテーマであるというふうな御発言があったように思うんですけれども、その中で、例えば新聞などでさまざまな識者とかいろいろな方々の論調や意見を紹介することがあると思います。今までも、各紙、そういう紙面を拝見したこともあるんですが、今後、外国人の識者から意見を積極的に、積極的かどうかは別として、掲載していくということも十分あり得ると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
これは憲法の議論などで、外国人がそれに参加することについて、それは意見の濃淡はあるんですけれども、おかしいんじゃないかというところから、論調はいいけれども運動はおかしいんじゃないかとか、組織的な運動はおかしいんじゃないかとか、ここでもさまざまな議論が出ているわけですけれども、その活発な議論を保障するまたは提供していくという立場から見れば、さまざまな外国の識者の意見を紹介していくということについてはどのようにお考えでしょうか。もしもよろしければ三人の皆様にお聞きしたいと思います。