163-衆-安全保障委員会-4号 平成17年10月21日
辻元委員
社民党の辻元清美です。
本日は、防衛庁の職員の給与等の改正案ということで、私は特にこの中の自衛隊員が海外に派遣される場合の手当について、イラクへの自衛隊の派遣と関連して幾つか御質問をしたいと思っております。
まず、資料を見させていただきますと、イラクの領域の中で、航空関係以外の特別手当については、いわゆる基地の中と外、外は二万四千円、中は二万円というふうにお聞きをしております。
さてそこで、派遣をされてから三年目に入りますけれども、間もなく期限が切れるということで、これからどのような判断をしていくのかという非常に重要な時期に来ていると思います。
そこで、まずこの特別手当だけ、要するに、人件費は防衛庁の本体の予算に組み込まれていると思いますけれども、この特別手当、それぞれ各年ごとにどれぐらい支出しているか、まずお答えください。
飯原政府参考人
実績の数字ですので、事務当局からお答えさせていただきます。
平成十五年度は約四億円、平成十六年度は五十六億円、平成十七年度は、年度途中でございますが、七月三十一日現在で約十三億円ということでございます。
辻元委員
大体一日、一日といいますか、派遣の隊員数は約五百前後ということになりまして、一日平均二万円としますと、特別手当だけで一千万円かかっていると。私は、この間のイラクでの自衛隊の皆さんの活動の中身と、そしてこの費用のかかり方ということで考えますと、本当に莫大な予算を使っている。そういうことを、これから派遣をどうするかということを考えるに当たって、しっかり点検すべきだ、内容とそしてかけた費用ということが見合っているのかということを考える時期だと思っています。
さらに、それはなぜそういうことを言いますかといえば、本当の意味で私はイラクへの人道支援が必要だと思っているからなんです。日本として、今イラクで困っている人たちにどういう有効な人道支援ができるかということにおいて、自衛隊の皆さん一人一人は現場で汗を流してやってはると思います。しかし、政治の判断として、自衛隊をイラクに送って、そしてそこでやられた活動の内容というものが、どれだけの費用をかけた割には活動の内容がどうだったのか、しっかり総括をすべきだと思います。
さて、そういう中で、一日一千万かかっているということで、これは既に活動の内容についてもこの委員会でも以前議論があったと思いますけれども、私もNGO活動を随分してまいりました。実際サマワでも他国のNGOが活動していて、予算でいえば百分の一程度の予算で同等の活動ができるということは、もう結構日本じゅうの人も御存じのとおりだと思うんですね。
それで、長官にお聞きしたいんですけれども、今延長を検討されていると。先ほどから、東京新聞の記事も出ていますけれども、私は今、活動の内容を聞きますと、学校とか道路の修復を幾つかやってはる。それで一日一千万です、特別手当だけで。それでこのまま、ずるずると言うたら悪いんですけれども、活動を続けていくという意味、今実際にイラクで必要なものというのは変わってきています。特に子供たち、これはアメリカ側は認めていませんけれども、劣化ウラン弾などの影響による子供たちの医薬品の不足とか、一番は医薬品の不足です。そういうところに人道支援すべき内容の比重が変わってきているわけですね。日本の中でも一生懸命NGO活動している人たち、薬を運んでいます。この自衛隊員の一日の特別手当だけの一千万円があったら、かなりの薬を運べるわけですね。しかし、一日、特別手当だけで一千万使っているわけです。
私は、日本が本当に人道支援をしたいというのであれば、このまま、確かに、学校をあと三つ直しました、四つ直しました、そこの現場の近所の人、喜んでくれはるかもしれませんけれども、政策判断として、私は、自衛隊は撤退して、本当の意味で今困っているところへの人道支援を手厚くしていく、そこにお金をかけていくという方がいいと考えますけれども、長官、いかがですか。
大野国務大臣
まず第一の辻元先生の御指摘は、サマワの自衛隊の活動について、その手当が高過ぎるのではないか、こういうことでもあろうかと思いますが……(辻元委員「そういう、高過ぎると言うているんちゃうんですよ」と呼ぶ)手当というのはやはり、勤務条件がどうだ、劣悪な勤務条件の中で働いていく、それから業務の困難性、こういうことを考えて設定しているわけでございますから、私は、手当自身の水準というのはそんな高いものではない、このように思っておるわけでございます。まことに妥当なものじゃないか、適切な水準だと思っています。
次に、問題は、これだけのお金をかけて一体コスト・ベネフィットという観点から割が合っているんだろうか、NGOでやったらもうちょっと安いコストで大きな仕事ができますよという御指摘でございます。
私どもは、まず第一に申し上げたいことは、自衛隊というのは実力組織でございますから、いつまでもこのイラク・サマワに駐在しているわけにはいかない、このことは当然のことでございます。
しかし、今自衛隊がサマワで駐在して活動している、それはなぜかというと、民間の方々ではそこへ駐在して活動できない。つまり、ホテルの、宿泊施設とかあるいは食糧の問題、いろいろな面で、よく自衛隊は自己完結型と言われておりますけれども、自己完結でこういう行動ができるのは今自衛隊だけでございます。そして、その自衛隊の活動がやはりイラク・サマワの民生の安定につながっている、そして地元から大変大きな歓迎と評価を受けている、このことは御理解をいただきたいと思います。
特に、一例で申しますと、現地の世論調査によりますと八割の人が、自衛隊の皆さん、まだまだいてほしい、こういう要望でございます。
もう一例申し上げますと、やはり学校を修復する、そして道路を修復する、そういたしますと、学校の教室の中にイラクの国旗と日本の国旗が、こちらの要望じゃないんですよ、イラク・サマワの地元の人が、日本の国旗とイラクの国旗を並べて教壇の方に掲げておこうじゃないか、こういうことで、大変イラクと日本の友好関係に大きなる貢献をしている、いわばソフトパワーの力を十分発揮している、このことは私は大事なことだと思っています。
しかし、いつの日かやはり条件が整えば、自衛隊からNGOの皆さんにバトンタッチしていく、こういうことは考えておかなきゃいけない戦略上の大きな問題だと思っています。ただ、このバトンタッチがうまくいかなければ、せっかく築き上げた心のかけ橋というのが直ちにもう壊れてしまう。
私は、この後、自衛隊がいつの日か撤退する日が来ると思います。その条件について、きょうはもう時間がかかりますから言いませんけれども、そういう日に、どうぞひとつ日本の心がイラクに届くように、NGOの活動あるいはODAの活動、こういうのは大事な要素だと思っております。
辻元委員
これは多面的に検証すべき問題だと思っているんですね。特に、イラクでこれから復興人道支援をどう展開していくかということは、世界じゅうが協力し合わなければいけないと思うわけです。
こういう側面もあるわけです。イラク、特にイスラム圏では、日本は非常に今まで評判がよかったです。私も、いろいろなNGO活動でしている人たち、アフガニスタンでもそうでした。これも多々指摘されておりますけれども、実際に自衛隊の皆さんが行かれて、私は自衛隊お一人お一人の方々の活動をされていることに対して何か批判をしているわけではないんです。政治判断なんですよ。自衛隊が行かれた後、例えばイラクで今までずっと人道支援活動をしていた日本人の団体などが、戦略的に見ればアメリカと日本というのは一体化に見られておりますので、アメリカへの反米感情も強くなってくる中で、実際に今まで人道支援していた人たちが活動しにくくなってきているという側面もあるわけです。
イラクの人たちと一緒にやってきた活動について、そのイラク人が、もう日本人と一緒にいるだけでねらわれると。アメリカとか日本とか一緒に、これは同じグループと見られていますからね。この後イラクで果たして活動を続けられるかどうかというような側面も出てきている。非常に難しいんですよ、NGOへの移行といっても。これは私は自衛隊の派遣による総括の中にぜひ入れていただく面だと思っております。
というのは、今、米軍再編の問題に絡めて、日米でこれからどういう活動をしていくかという中に、アメリカの任務の肩がわりというような呼び方で新聞にも報道されているんですね。やはり、人道支援というものと、軍隊で行ってできる活動というものは、ただ単に学校つくりました、道つくりました、幾つつくりました、よかったでしょうという話ではない側面が今の国際社会の中で出てきます。
ですから、費用の面から考えても、イラクからは撤退して、そして、今自衛隊が使ってはる予算については、本当に苦しんでいる子供たちの薬品や、本当にNGOで、お金ちょっと集めて、一千万集めるの大変ですねん。二、三千万の分だけでも物すごい喜ばれるわけですよ。私は、そういう有効的な人道支援に振り向けていくという時期ではないかということを強く主張して、先ほど長官のお言葉の中にも撤退という言葉が出ました。私は、真剣に考えていただきたいというように思っております。
時間が十分しかなくて、もう終わっちゃいましたので、答弁は結構です。
以上です。