今後の経済見通し等に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
令和元年六月十二日
提出者 辻 元 清 美
衆議院議長 大 島 理 森 殿
今後の経済見通し等に関する質問主意書
二〇一四年十一月二十八日、内閣府は、「固定資産残高に係る参考試算値」として、連鎖方式にもとづいた実質値の固定資産残高を公表した。
それを受け、二〇一五年二月十二日、内閣府は、GDPギャップの推計方法の改定を行った。
その際、資本ストックの減耗を考慮しない民間企業資本ストック(粗資本ストック)から、減耗を考慮した実質固定資産残高(純資本ストック)にデータを切り替えたことにより、資本ストックの水準が大きく変更されることとなった。
また、それに伴い、潜在成長率の寄与度内訳も変更され、資本投入に代わって全要素生産性(TFP)の寄与度が大きく上昇した。
以下質問する。
問一 二〇一三年度以前の過去二十年の各年度の全要素生産性(TFP)上昇率について、二〇一五年二月十二日の見直し前と後の双方の数字を示されたい。
問二 二〇一四年度から二〇一八年度の各年度の全要素生産性(TFP)上昇率の数字を示されたい。
問三 二〇一九年三月十三日の第八回社会保障審議会年金部会の資料二「年金財政における経済前提について(検討結果の報告)」では、全要素生産性(TFP)上昇率の設定について、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(二〇一九年一月三十日経済財政諮問会議提出、以下「内閣府試算」)の対象期間である二〇二八年度までは「内閣府試算」に準拠した設定とされ、足下の〇・四%から、成長実現ケースでは一・三%まで、ベースラインケースでは〇・八%までそれぞれ上昇する設定とされている。
その上で、二〇二九年度以降は、成長実現ケースに接続するものとして二〇二九年度以降も一・三%で推移するケース(ケースⅠ)、一・一%で推移するケース(ケースⅡ)、〇・九%で推移するケース(ケースⅢ)と、ベースラインケースに接続するものとして〇・八%で推移するケース(ケースⅣ)、〇・六%で推移するケース(ケースⅤ)、〇・三%で推移するケース(ケースⅥ)を設けたとされている。
二〇一三年度から二〇一八年度の各年度の全要素生産性(TFP)上昇率について、〇・八%、〇・九%に到達した年度をそれぞれ示されたい。
問四 「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」に関して、「平成二十六年財政検証結果」、「平成二十一年財政検証結果」について、それぞれ何月何日に社会保障審議会年金部会に資料を提出したか示されたい。
問五 年金積立金管理運用独立行政法人の二〇一八年度の管理及び運用実績の状況について、公表予定日を示されたい。
問六 二〇一九年六月三日に公表された「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』」の十頁に掲載されている、「高齢夫婦無職世帯(夫六十五歳以上、妻六十歳以上の夫婦のみの無職世帯)」((出典)第二十一回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料)について、実収入のうち「社会保障給付」は一九一、八八〇円とされているが、そのうち公的年金の額がいくらか示されたい。
また、二〇一九年度の国民年金の年金額を示されたい。
問七 二〇一九年六月十日の参議院決算委員会において、安倍総理は
「積立金におきましても六年間で四十四兆円、運用益は出ています。これはまた申し上げたくないんですが、民主党政権時代の三年間の十倍これ増えて」
と答弁しているが、安倍総理が言うところの「民主党政権時代の三年間」の運用損益の数字を示されたい。
その上で、安倍総理が言うところの「民主党政権時代の三年間」において、二〇〇九年財政検証により算出された年金財政上必要な運用利回りを確保していたかどうか、また、結果として年金財政上何らかの問題があったのか明らかにされたい。
加えて、安倍総理が言うところの四十四兆円と、「民主党政権時代の三年間」の運用損益の双方について、為替の影響を除した金額を示されたい。
問八 年金積立金の運用について、二〇一四年財政検証により算出された年金財政上必要な運用利回りを確保した上で、それを超える利回りを確保した場合、「それを超える利回り」を確保したことで現在の公的年金受給者の受給額が増えるのか明らかにされたい。
問九 二〇一四年財政検証時に使用された全要素生産性(TFP)上昇率は内閣府が二〇一五年二月十二日に見直す(上方修正する)前の数字であり、今回の二〇一九年財政検証にあたって二〇一九年三月十三日の第八回社会保障審議会年金部会の資料二「年金財政における経済前提について(検討結果の報告)」で示されている全要素生産性(TFP)上昇率は内閣府が二〇一五年二月十二日に見直した(上方修正した)後の数字であることを、厚生労働省として社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会の委員に説明を尽くした上で検討が進められたか明らかにされたい。
問十 二〇一九年六月十日の参議院決算委員会において、安倍総理は
「その上でですね、この上において、年金、年金一〇〇年安心がうそであったという御指摘でございますが、そうではないということを今申し上げさせておきたいと、これ重要な点でありますから申し上げたいと思いますが、この国民の老後所得の中心となる公的年金制度については、将来世代の負担を過重にしないために、保険料水準を固定した上で、長期的な給付と負担の均衡を図るマクロ経済スライドにより一定の給付水準を確保することを前提に、これ持続可能な制度に改めたものであります」
と答弁している。
まず、安倍総理が言うところの「一〇〇年安心」は誰のための、あるいは何のための安心なのか見解を明らかにされたい。
その上で、この「一〇〇年安心」は、具体的にいつからいつまで(西暦何年から西暦何年まで)の一〇〇年を指すのか示されたい。
加えて、二〇〇四年年金制度改正における年金財政フレームでは、年金積立金の活用として、「おおむね一〇〇年間で財政均衡を図る方式とし、財政均衡期間の終了時に給付費一年分程度の積立金を保有することとし、積立金を活用して後世代の給付に充てる」とされたが、二〇一四年財政検証における財政均衡期間の終了時はいつ(西暦何年)か。
また、当年時点では年金積立金は給付費一年分程度となり、それ以降は給付費一年分程度を上回る年金積立金は保有するのか、しないのか明らかにされたい。
問十一 二〇一九年六月十日の参議院決算委員会において、安倍総理は「将来世代のためのマクロ経済スライド調整を行った上で、なお現在の受給額がプラスの改定になったものであり」と答弁している。
この点に関して、二〇〇〇~二〇〇二年度にかけて、物価下落にもかかわらず、特例法でマイナスの物価スライドを行わず年金額を据え置いたため、本来の年金額より二・五%高い水準(特例水準)で支払われていた時期があったが、この特例法を成立させた時の政権の総理が誰か示されたい。
また、この特例水準が適用されていた期間(西暦何年度から西暦何年度まで)と、その期間において本来水準を超えて支払われた総給付額がいくらだったか示されたい。
さらに、この特例水準が残った状態でのマクロ経済スライド調整が可能であったか示されたい。
その上で、この特例水準について、二〇一三~二〇一五年度までの三年間で解消する法律を二〇一二年十一月に成立(二〇一三年十月から施行)させた時の政権の総理が誰か示されたい。
最後に、この特例水準の解消は、安倍総理が言うところの「将来世代」の年金額を確保することにつながったか見解を明らかにされたい。
問十二 金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第二十一回、平成三十一年四月十二日)の議事録によれば、厚生労働省は二〇一七年度の総務省「家計調査」を示して、以下のように報告している。
「現在、高齢夫婦無職世帯の実収入二〇万九、一九八円と家計支出二六万三、七一八円との差は月五・五万円程度となっております。その高齢夫婦無職世帯の平均貯蓄額は、赤囲みの部分、二、四八四万円となっております。今後、実収入の社会保障給付は低下することから、取り崩す金額が多くなり、さらに余命も延びることで取り崩す期間も長くなるわけで、今からどう準備していくかが大事なことになります。」
今後、実収入が「低下」するという見通し、「実収入」と「家計支出」の「差」が開いていくという見通し、その差を貯蓄の取り崩しで埋めていくことになるという見通しは、政府全体の見解か。
右質問する。