私はこの間、「米艦による邦人輸送」という安倍総理のパネルを、フィクションだと批判してきました。
その根拠は、米国務省・国防総省がそもそも、米国に頼らず自国民を避難させるよう全ての外国政府に要請しているからであり、そうした米国の方針を安倍政権も認めているからです。
2014/6/11辻元清美ブログ:「戦争時に米輸送艦によって邦人が輸送された事例」は過去に存在しないこと(外務省)、米国政府は、米国に頼らず自国民を避難させるよう全ての外国政府に要請していること(内閣官房)を、政府は認めました:外務委員会質疑
2014/6/18辻元清美ブログ:安倍総理、ハリウッド映画の見すぎではないですか――「邦人脱出の米艦防護パネル」はやっぱりありえない。米国務省のウェブサイトを紹介します。
これについては、朝日新聞も「ありえない事例」であることを報じてきました。
2014/6/16辻元清美ブログ:朝日新聞でも「米艦で邦人救出」ありえない事例である、と指摘しています
2014/7/1辻元清美ブログ:「米軍などとの多国間軍事演習」は、やっぱり「米艦による邦人輸送」とは無関係:自衛隊ヘリ→自衛隊艦船での邦人輸送訓練「コブラ・ゴールド」です
安倍総理が「フィクション」をもとに情に訴え、国民をだまそうとしていることは、かなり認識が広がってきていると考えます。
しかし、7月4日に、防衛省の報道官が記者とのやりとりのなかで、また「米艦邦人輸送」について、反論をしているとのこと。
Q、米艦邦人輸送の朝日報道について、防衛省が反論したことについて。
A、現在の日米ガイドラインにおいて、非戦闘員を退避させるための活動が明記されており、そのなかで在外邦人の退避については、米側との協力が行われる、と明確に書いてある。実際上も、日本と米国が参加する共同訓練において、在外邦人を含めた非戦闘員の救出は訓練項目の一つになっていて、日米間で繰り返し訓練を行っているというのが現実である。
→そもそも、日米ガイドラインにはこう書かれています。
(1) 日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力
(ハ) 非戦闘員を退避させるための活動
日本国民又は米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退避させる必要が生じる場合には、日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地当局との関係について各々責任を有する。日米両国政府は、各々が適切であると判断する場合には、各々の有する能力を相互補完的に使用しつつ、輸送手段の確保、輸送及び施設の使用に係るものを含め、これらの非戦闘員の退避に関して、計画に際して調整し、また、実施に際して協力する。
即ち、「各々主体的に行う活動」とわざわざ書いてある事項なのです。さらに「日米両国政府は、各々が適切であると判断する場合」と条件を加えてある。何度も繰り返してきたように、米軍は方針として、非米国民の輸送に責任をもちません。だから、幾重にも条件をつけることで、事実上やらないといっているのです。
Q、邦人は日本の船、米国人は米艦に運ぶ訓練ではないか。米艦に日本人は乗っているのか?
A、いろんなやり方があるが、ガイドラインに書いてあるように日米が協力してやるということになっているので、いろんなシチュエーションを考えながら、いろんな場面を考えながら、訓練を行ってきている。
Q、米艦に日本人を乗せたという想定の訓練か?
A、そういうことも含めて訓練をしているが・・・。
Q、やっているのか?
A、やっているが、訓練の内容についてはアメリカとの関係もあり、我が国の運用上の問題もあり、お答えすることは、どの訓練でやっているかは差し控えたい。
この点については、もう一度、防衛省に確認しました。やはり、「米艦に日本人を乗せたという想定の訓練」は、やっていません。
Q、米艦に邦人を載せているか?
A、米軍のアセットを利用してやる訓練を行っている。米艦も含めて、航空機も含めて、いろんなシチュエーションを踏まえながら検討をしているということだ。
「米軍のアセットを利用してやる訓練」については、「自衛隊機が故障した」という前提で、米軍機が「自衛隊の艦船と想定した米艦」に運ぶ、という訓練は行っているとのこと。あくまで想定は「自衛隊の艦船」です。なぜ本物の自衛隊の艦船を使わないかといえばコストの問題。この共同訓練「コブラ・ゴールド」は、スクリーニングや保安検査などの業務を自衛隊と大使館とで連携して行うことが主眼とされているからです。
防衛省は、民主党の部会などでも、報道官の発言をなぞるような説明を繰り返しています。
安倍総理が事実とかけはなれた認識をお持ちであれば、安全保障のプロとして修正をはかるべき防衛省が、事実をねじまげ、世論をミスリードするようでは困るのです。