(つじとも通信31号 2014年夏号に掲載)
「こんなことが許されるわけがない」と呆れるようなことを何の恥じらいもなく推し進める安倍政権。その最たるものが、憲法解釈変更だけの「集団的自衛権の行使」容認です。
五月一五日安倍首相は、同じ考えの「お友達」を集めただけの、何ら法的根拠のない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書を受けて、憲法解釈による「集団的自衛権の行使容認」について記者会見を行いました。
私は、これを見て「国民を欺いている」と怒りを覚えると共に、得意げにパネルを使って説明する安倍首相の姿を、「これが一国の総理大臣のすることか」と情けなくなりました。
それは、安倍首相が示している具体的な「危機」の事例があまりにも現実とかけ離れ、国民の生命と財産をさらに危険にさらすのでは、と考えるからなのです。
リスクを広げる集団的自衛権
集団的自衛権というのは、かつてアメリカが南ベトナム政府に対して行使したのが典型的なように、小国の紛争に大国が介入する根拠に使われてきました。当時、遠いアメリカ本土がベトコンに攻撃される危険は、ほぼ皆無だったはず。
しかし、安倍首相が前提にしているのは日本の近隣で起きた紛争です。自衛隊が「限定的」のつもりで撃った一発の銃弾が相手国には「宣戦布告」ととらえられ「全面戦争」に突入すれば、近隣であるがゆえに相手国の報復は容易です。しかも、ターゲットは原発。
さらにいうと、戦争のカタチも変わってきています。イラク戦争のあと、武力攻撃に積極的に参加した英国で、どれだけテロが横行したか。
「子どもたちを守る」どころか、原発を攻撃されたら日本の半分に人が住めなくなるようなリスクや、テロで安心して電車にも乗れなくなるようなリスクを、一国の総理大臣が微笑みながら押し付ける。しかも先頭で殺し、殺されるのは、自衛隊の若者です。
これまで日本が、海外での武力行使を行わなかったからこそ、アフガン戦争後のタリバンの武装解除などで優れた国際貢献ができたのです。これは、世界でも貴重な日本の外交資源。「軍事大国」の一員になるより、「人道支援大国」こそ、日本はふさわしいのです。
立憲主義に反する安倍首相
日本は憲法九条のもと、「海外での武力行使はしない」と決めています。いくら総理大臣が駄々をこねても、変えることはできません。
憲法はたとえ選挙で多数をとっても、最高権力者であっても「やってはいけないこと」が書いてあるのです。時の権力者が好き勝手できる、というのは独裁です。だからあらかじめ憲法で権力の行使の範囲を決めている、これが万国共通の立憲主義のルールです。
憲法を変えるための国民投票にもかけずに、時の権力者が日本を「海外で戦争のできる国」に勝手に変えてしまおうということは通用しません。国際的にも信頼されません。
「対立」より「対話」を
私は五月十四日から十六日まで中国を訪問し、日中関係の要人と会談をしました。七月には超党派の女性議員で韓国を訪問します。拉致問題も拳を振り上げるだけでは解決しません。交渉や対話が大事です。対立している時こそ対話のチャンネルが必要なのです。
子どものころに、祖父に「なぜ、日本は戦争になったの?」と尋ねると「いつのまにか反対できなくなった」と。二度と同じ過ちを繰り返させるわけにはいきません。
政治は戦争をさせないためにあるのですから。危機回避のメカニズムの構築のために行動を続けます。
消費増税分は黒字企業減税に!?
誰でも、自分や家族の「介護」の心配があるのではないでしょうか。実は、毎年十万人もの方が、家族の介護を理由に離職しているのです。
消費税三パーセント増税分は約八兆円、今期は四月からの実施で税収は五・一兆円が見込まれています。ところが、介護・医療・子育てなど社会保障に直接使われるのは五〇〇〇億円。このうち介護に使われるのは四〇億円だけ。一方、東京オリンピックのスタジアム建設だけで二〇〇〇億円近くも使うのです。
安倍政権になってから、公共事業のオンパレード。昨年度は七兆七九六〇億円、今年度は七兆七七億円も公共事業費を計上。私が国土交通副大臣の時、無駄な公共事業をカットして四兆円台に絞り込みました。しかし、倍近くにドンドン復活させているのです。
また、消費税増税による景気減速の緩和ということで五・四兆円の経済対策も打たれました。その中身も二兆円の公共事業、そして一兆円の企業減税です。さらに企業の復興増税免除で一兆九〇〇〇億円の減税も。
これでは、全国民から集めた消費税アップ分が、公共事業と法人税を納める一部の黒字企業(企業全体の三割)の経営支援にまわったことに。「公共事業と税の一体改革」で、古い自民党の「先祖がえり」です。
憲法をねじ曲げてまで戦争準備に血道を上げる。一方、国民の福祉はそっちのけ。介護難民が増える。ゴリ押しを続ける「残業代ゼロ法案」まで出てきました。
福井地裁による大飯原発運転差し止め判決は、画期的でしたが、政府の川内原発再稼働に向けて動きは加速されています。決定過程や効果に疑問が残る凍土壁も、ついに着工。
国民の抵抗が大きいものはオブラートに包んで、「笑顔」の下には「鎧」が見えかくれ。これが安倍政権のいつもの手口。これでは、「国民を守る」と口では言いながら、「国民を見捨てる」ことになるのでは。
私の使命は、悪夢のようなこの現実にストップをかけることです。
「平和なくして福祉なし」
の信念で頑張ります。