いよいよワールドカップが開幕しました。大阪・摂津出身の本田圭佑選手をはじめ、日本代表の活躍が楽しみです。
しかし一方で、政治の状況は楽観できるものではありません。
安倍首相は、自分は総理大臣なのだから憲法も「国民投票」にかけるのではなく、自分の「自説」で変えてしまうことができると言い張っています。
国会を無視した政府与党だけの議論で、国の根幹を変える。これでは事実上のクーデターではないですか。
報道によれば、自民党・公明党は「戦争中に、日本人を乗せた米輸送艦を防護する」という事例にしぼって協議するということ。そして、来週にも集団的自衛権の行使容認で合意をめざす、と。
実は、安倍首相が「皆さんのおじいさんやおばあさんを守ることができない」とパネルで示して絶叫したこの事例こそ、ほとんど「妄想の産物」であることを、私は国会質疑で追及しつづけました。
安全保障委員会、海賊テロ特別委員会、外務委員会。この一週間で三回、防衛大臣や外務大臣、内閣法制局長官に質問を重ねてさまざまな事実を明らかにしたのです。
まず、これまで戦争中に米輸送艦が日本人を輸送した例があるのか、と聞くと、ついに政府は「ない」と認めました。
水島朝穂・早稲田大学教授が雑誌「世界」7月号で明らかにしているのですが、米国の国務省・国防総省が出した文書には、明確に「すべての外国政府に、自国民の退避については米国政府に依存しないよう要請する」と書いてあるのです。これは政府も認めました。
さらに米国統合参謀本部の文書には、「非戦闘員の退避作戦は民間航空機で実施」と書いてあります。私は日米協議の担当者に確認しましたが、かつて日本は、日本人の救出を米軍にお願いして、断られた経緯があるのです。つまり安倍首相は、米国がもっとも認めたくないケースを持ち出して、もっとも必要なケースであるかのように国民を欺いているのです。
しかも政府は「米艦が攻撃されるというのはどういうことか」という私の質問に「潜水艦による魚雷攻撃など」と答えました。では、「米艦を守る」とはどういうことか。魚雷を発射する潜水艦を撃沈すること、そして乗務員を殺すことです。日本が攻撃されていないのにそんなことをすれば、相手は、日本が「先制攻撃」をして「宣戦布告」したととり、全面戦争に発展することになるのです。
安倍首相は記者会見で「北朝鮮のミサイルは、日本の大部分を射程に入れています」と国民を脅しました。そのミサイルで、原発を狙われたら日本はどうなるか。日本の原発は五〇数機。ミサイルを撃と落とすためのPAC3配備数は、三〇数台。もちろん現時点で、原発を守るために配備されてなんかいません。
「米艦を護る」と自衛隊が撃った一発により、報復のミサイル攻撃で原発を破壊されたら、日本壊滅につながるのです。戦争に「ちょっとだけよ」はない、と私は強く政府に迫りました。集団的自衛権を行使するということは、前線の自衛官の命を危険にさらすことはもちろん、日本国民すべてを危険にさらすことと引き換えです。
しかし、このリスクをどう回避するのか、政府ではまったく検討せずに、海外での武力行使もできる国に変えようとしているのです。安倍首相は「国民の生命を守る」と叫びながら、「国民をリスクにさらす」可能性が高いのです。こんなことは憲法九条を変えない限りできません。私は反対です。アフガン戦争停戦後に行われた武装解除で、日本が大きな役割を果たせたのは、九条をもつ日本への信頼があったからです。安倍首相はむざむざ、この貴重な外交資源を捨てようというのでしょうか。
国民に最悪のシナリオを隠し、国民不在で決めようとしている安倍首相の暴走を止めるため、がんばります。政治は戦争をさせないためにあるのですから。