「慰安婦問題について、政府は官房長官談話をもって謝罪している」は教科書検定基準における「政府の統一的な見解」に相当:村山談話・河野談話についての質問主意書に対する答弁書2本が閣議決定されました
2014.4.18
本日、4月10日に辻元清美が出した質問主意書2本の答弁書が閣議決定されました。
答弁がわかりづらいので、整理して掲載します。
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「安倍政権における村山談話及び河野談話に係る「統一的見解」に関する質問主意書」
平成二十六年四月十日
提出者 辻元清美
二〇一四年二月二十一日の衆議院文部科学委員会における菊田真紀子委員の質問および三月二十六日の宮本岳志委員の質問に対し、下村文部科学大臣は「村山内閣総理大臣談話は閣議決定されていない」と答弁した。それに対し、四月九日の衆議院文部科学委員会において、「同(村山)談話は、平成七年八月十五日に閣議決定の上、発表されたものでした」と答弁を訂正、謝罪している。
また同日の同委員会において、河野官房長官談話について辻元清美が提出した質問主意書に対する答弁で「政府の基本的立場は、官房長官談話を継承しているというものであり、その内容を閣議決定することは考えていない。」(平成十九年三月十六日内閣衆質一六六第一一〇号)と閣議決定している、という宮本委員の指摘に対し、下記のような答弁をしている。
「安倍内閣としても河野談話を継承している旨を明らかにしており、質問主意書の答弁で、河野官房長官談話を受け継いでいる旨を閣議決定しております。この内容は、検定基準上の、閣議決定等により示された政府の統一見解に該当いたします。したがって、教科書検定に当たっては、慰安婦問題についての政府の基本的立場を踏まえて実施するということになります」(答弁一)
さらに同日の同委員会において、吉川元委員の質問に対して、下記のような答弁をしている。
「村山談話は、平成七年八月十五日に閣議決定の上発表されたものでありまして、今回の教科書検定基準において規定する『閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解』に該当するものでございます」(答弁二)
また、本年三月二十五日に辻元清美が提出した質問主意書における「一 政府は『慰安婦』問題について『すでに謝罪済み』という立場をとっているが、いつの、どの文書や談話をもって謝罪しているという認識か。すべて示されたい。」という質問に対し、
「お尋ねについては、先の答弁書(平成十九年三月十六日内閣衆質一六六第一一〇号)三の3についてでお答えしたとおりである。」(平成二十六年四月四日内閣衆質一八六第九二号)という答弁を閣議決定している。当該答弁は、「三の3について 御指摘の件については、官房長官談話においてお詫びと反省の気持ちを申し上げているとおりである。」(答弁三)というものである。
下村文科大臣の答弁は明快なものであるが、これが政府としての統一見解に相当するかについて確認する必要がある。
以下、質問する。
一 教科書検定基準の「閣議決定その他の方法で示された政府の統一的な見解」における「その他の方法」とは、具体的にどのようなものを指すのか。本年二月二十一日の衆議院文部科学委員会において、下村文科大臣は「改正後の検定基準における『政府の統一的な見解』は、現時点で、有効な閣議決定等により示されたものを指します。」とも答弁しているが、「等」とは具体的にどのようなものを指すのか。
二 答弁一について。
「政府の基本的立場は、河野官房長官談話を継承している」という内容が、教科書記述の基となる「『閣議決定その他の方法で示された政府の統一的な見解』に該当する」というのは、政府の統一的な見解か。
三 答弁二について。
「村山総理大臣談話」が、教科書記述の基となる「『閣議決定その他の方法で示された政府の統一的な見解』に該当する」というのは、政府の統一的な見解か。
(答弁)
一から三までについて
義務教育諸学校教科用図書検定基準(平成二十一年文部科学省告示第三十三号)及び高等学校教科用図書検定基準(平成二十一年文部科学省告示第百六十六号)(以下「教科用図書検定基準」という。)の解釈は、文部科学大臣の権限と責任において行われるものであり、お尋ねの「その他の方法」及び「等」とは、文部科学省としては、閣議了解を指すものと考えている。
四 答弁三について。
「慰安婦問題について、政府は官房長官談話をもって謝罪している」という内容は、教科書記述の基となる「『閣議決定その他の方法で示された政府の統一的な見解』に該当する」か。
(答弁)
四について
文部科学省としては、衆議院議員辻元清美君提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書(平成十九年三月十六日内閣衆質一六六第一一O号)三の3についてでお答えした内容は、教科書用図書検定基準において規定する「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」に該当するものであると考えている。
「村山総理大臣談話の「閣議決定の有無」についての認識と、「事務方から上がってきたペーパー」に関する質問主意書」
平成二十六年四月十日
提出者 辻元清美
二〇一四年二月二十一日の衆議院文部科学委員会における菊田真紀子委員の質問および三月二十六日の宮本岳志委員の質問に対し、下村文部科学大臣は「村山内閣総理大臣談話は閣議決定されていない」と答弁した。それに対し、四月九日の衆議院文部科学委員会において、「同(村山)談話は、平成七年八月十五日に閣議決定の上、発表されたものでした」と答弁を訂正、謝罪している。
また同日の同委員会において、下村文部科学大臣は、吉川元委員の質問に対して下記のような答弁をしている。
「考えてみれば、総理大臣談話ですから、閣議決定されなくてなぜ通ったのかということについては、もうちょっと、事務方から上がってきたペーパーについて注意すれば済んでいたことかもしれませんが、そのままそのとおりに追認したということでありまして、これは私の最終的なミスでもございます」(答弁1)
下村文科大臣は「そのままそのとおりに追認した」ことを「私の最終的なミス」と認めている。しかし、教科書検定を行う文部科学省が政府の基本的認識について、しかも今国会審議における最も注目されている事項について初歩的な事実誤認を行ったことは、極めて遺憾である。こうした事態が今後起こることのないよう、事実関係を確認する必要がある。
以下、質問する。
一 答弁1について。
1 「事務方から上がってきたペーパー」とは、いつ、どのような経緯で作成され、いつ、どのような形で下村文科大臣に渡されたものか。
(答弁)
一の1について
御指摘の「事務方から上がってきたペーパー」(以下「本件答弁資料」という)は、平成二十六年二月二十一日及び三月二十六日の衆議院文部科学委員会における質問に関する答弁資料として作成され、当日、文部科学大臣に渡されたものである。
2 「事務方から上がってきたペーパー」には、「村山内閣総理大臣談話」の「閣議決定の有無」について、具体的にどのように記されていたのか。明確に、「村山内閣総理大臣談話は閣議決定されていない」旨が記されていたのか。
(答弁)
一の2について
本件答弁資料には、平成七年八月十五日の内閣総理大臣談話(以下「談話」という)は閣議決定されたものではない旨記載されていた。
3 「事務方から上がってきたペーパー」を作成するにあたり、文部科学省は、内閣官房等に事実確認を行っているか。
(答弁)
一の3について
本件答弁資料を作成するに当たり、文部科学省は、内閣官房その他の同省以外の府省庁に談話の閣議決定の有無に係る事実確認はしなかった。
4 文部科学省は、野党質問に対する答弁を控えた下村文科大臣に対し、答弁の基礎となる事実関係を間違って報告するという手違いが起きた理由を、どのように認識しているか。
(答弁)
一の4について
本件答弁資料を作成するに当たり、文部科学省が談話の閣議決定の有無に係る事実確認を怠ったためと認識している。
5 「事務方から上がってきたペーパー」を「追認」する以前に、下村文科大臣は「村山内閣総理大臣談話」の「閣議決定の有無」について、どのように認識していたのか。
6 「事務方から上がってきたペーパー」を見たとき、下村文科大臣はその記述内容に対して疑問を持たなかったのか。
7 もしも「村山内閣総理大臣談話」の「閣議決定の有無」について正しい事実認識を持っていたならば、文部科学省に対して確認を求めるべきだったと考えるが、確認を求めたか。求めなかったとすれば、その理由は何か。
(答弁)
一の5から7までについて
文部科学大臣は、本件答弁資料を受け取った際、談話の閣議決定の有無について明確な認識はなく、本件答弁資料における談話に係る記載が事実であると誤認したものである。
二 安倍総理大臣の、「村山内閣総理大臣談話」の「閣議決定の有無」についての認識を問う。
1 下村文科大臣が「村山談話が閣議決定されていない」と答弁する以前は、安倍総理大臣は「村山内閣総理大臣談話」の「閣議決定の有無」についてどのように認識していたのか。
(答弁)
二の1及び3について
内閣総理大臣は、平成二十六年二月二十一日及び三月二十六日の衆議院文部科学委員会における談話に係る文部科学大臣の答弁(以下「本件答弁」という。)の前から、談話が閣議決定されているものと認識していたところである。
2 下村文科大臣が「村山談話が閣議決定されていない」と答弁したことを安倍総理大臣が知ったのはいつの時点か。
(答弁)
二の2について
内閣総理大臣は、本件答弁について、平成二十六年三月二十七日の報道等によって承知したところである。
3 安倍総理大臣は下村文科大臣が「村山談話が閣議決定されていない」と答弁したことを知った時点で、「村山内閣総理大臣談話」の「閣議決定の有無」についてどのように認識していたのか。
(答弁)
上記「二の1及び3について」と同
4 安倍総理大臣は下村文科大臣が「村山談話が閣議決定されていない」と答弁したことを知った時点で、下村文科大臣及び文部科学省等に対して事実誤認であることを指摘したか。また答弁修正を指示したか。
(答弁)
二の4について
お尋ねのような「指摘」や「指示」は行っていない。
5 政府は、下村文科大臣が菊田委員の質問に対して「村山談話が閣議決定されていない」旨を答弁した後から宮本委員への質問に対して同様の答弁をする間に、誰も事実誤認であることと指摘しなかったのか。内閣官房や外務省等は、この間にどのような対処をしたのか。三月二十七日には、韓国外交部が定例会見で「非常に望ましくない発言」と批判したように、国際問題となりうるという認識はなかったのか。
6 下村文科大臣が菊田委員の質問に対して「村山談話が閣議決定されていない」旨を答弁してから、答弁修正が行われるまで、一カ月半を要している。答弁修正に一カ月半を要した理由は何か。
(答弁)
二の5及び6について
内閣官房及び外務省は 本件答弁について、平成二十六年三月二十七日の報道等によって承知し、直ちに文部科学省に対し事実誤認である旨を指摘したところである。同省においては、内閣官房及び外務省からの当該指摘を受けて本件答弁が誤りであることを承知し同年四月四日の衆議院文部科学委員会理事会及び同月九日の同委員会において本件答弁を訂正する旨の発言を行ったものである。