今国会の最大の議題のひとつである、福島第一原発の汚染地下水問題。
10月30日に開かれた経済産業委員会で、私は東京電力の広瀬社長、原子力規制委員会の田中委員長、茂木経済産業大臣に、福島第一原発の地下水について質問した。
ご承知の通り、蒸気を使ってタービンを回している以上、原発には大量の淡水が必要だ。
福島第一原発は灌漑用ダムであった坂下ダムから東電自らパイプラインをひいて淡水を得ていた。が、坂下ダムができるまでの数年間は、どこから淡水を得ていたのか。
実は福島第一原発の建設予定地には有効な淡水元がなく、ボーリング調査の結果地層深くに豊富な地下水脈が走っていることがわかった。その地下水がなければそもそも福島第一原発は設置できなかったのだ。
私が入手した、昭和41年提出の原子炉設置許可申請書には、地下水の水圧で原子炉建屋が浮き上がってくるのを防ぐために、250mの井戸を掘ってその大量の地下水をくみ上げ、補給水として使うことが明記されていた。
原子炉設置許可申請参考資料はこちら(PDF)
さらに、当時の土木工事について現場の方が書いた報告も入手したが、そこには、工事が地下水によって幾度も阻まれた様子が記されている。
土木工事の概要はこちら(PDF)
1.2メートルごとに井戸をほって湧水を汲み上げたり、湧水線を切ったりと、難工事であったことなどがあちこちに書かれているのだ。
私はこれらの書類を見て、背筋が寒くなった。
活断層については各原発とも厳しいチェックがされているが、地下水系については、現在まで、明確な審査基準は設けられていないのだ。
茂木大臣に、毎日850tの水をくみ上げないと原子炉建屋が浮き上がってくるという事実を知っていたかどうかを尋ねたが、回答はしどろもどろだった。
福島第一原発は、このような地盤の上に、コンクリートの建屋が浮かんでいるようなもの。
日々汲み上げていた850tのうち、建屋に流れ込んでいるのは400t。残りの450tがそのまま海に流れているとは考えづらく(それならば汲み上げ量も400tでよかったはずではないか)、地下に滞留している可能性もある。
日本は非常に地下水が豊富な国だ。
それだけ自然が豊かだということだが、ひとたび震災や原発事故が起これば、「想定外だ」などでは済まされない。
各原発の地下水系がどうなっているのか調べるということを、今回の教訓として再稼働基準のなかに入れるべき、と田中原子力規制委員長に提案。「今後注意深く点検していきたい。必要があればそういう対応も必要」と委員長は述べた。
現在、他の原発がどうなっているかを調査中だ。
また、東京電力広瀬社長と田中委員長の面会についても尋ねた。
広瀬社長は労働者の作業環境の改善などを述べたが、まったく甘い認識だ。私は今年の4月の予算委員会でも働く人の問題について指摘したが、今と同じ答えだったではないか。
私は田中委員長に、「福島第一原発の対応がしっかりできるまで、当面は柏崎刈羽原発については再稼働を凍結せざるを得ないと思っているのか」と問うた。田中委員長は、「さまざまな困難なあるので、実施状況を見極めて判断していきたい」と述べた。働く人の問題、使用済み燃料の取出し問題など、難問が山積みだ。
もしも柏崎刈羽原発を再稼働するということになれば、そちらにも技術者がとられることになる。福島第一がこうした状況である以上、再稼働は困難といわざるをえない。
質問時間の最後には、小泉進次郎復興大臣政務官に、原発政策に対する私見を尋ねた。とくに使用済み核燃料、いわゆる「核のゴミ」というツケを未来にこれ以上残さないためには、一日も早く脱原発に向けて国の方向性を変えるということ、はっきりと意思を示すことについて、問うたのだ。
小泉純一郎前首相の「原発ゼロ発言」に対し、政務官は「父は父、私は私」と答えていたが、では「私」はどう思っているかを尋ねたかったのだ。
小泉政務官はこう答えた。
「使用済み核燃料の扱いは誰もがなんとかしなければいけないという思いを共有している。脱原発をしようと、しなかろうと、どうやって解決していくかということは必ず取り組まなければいけない。」
しかし、このような答弁は、今回の福島第一原発事故以前も含めて、ずっと政府が言ってきたことだ。
「努力していかなければならない」ではなく、実際に舵を切らなければ何の解決にもならないことを、私たちは今回の事故で認識したはずだ。
政府の中でどれだけ自分の思いを達成していくかということにも、ぜひ政務官としてチャレンジしていただきたい、と質問をしめくくった。
委員会の質問の模様が、「衆議院TV」で見られます。こちらからどうぞ