4日間の「提言型政策仕分け」も最終日。11月23日は11時に会場に集合し、他の評価者(仕分け人)のみなさんと、最終的な打ち合わせ。
私が参加するのはワーキンググループAの「中小企業:経営支援、商店街活性化支援策」だ。私の家は小さな商いを営んできて、商売の厳しさには子どもの頃からいやというほど触れてきた。政治家になってからは街の商店街の活性化にも関わってきた。新しく起業しようという人への支援メニューがあまりに少ないことに愕然とし、とくに震災が起きてからは被災地での若者起業支援のための政策づくりに力を注いできた。ここは、私自身の実感をこめて議論をした。13時より議論開始。論点は以下の通り。
中小企業:経営支援、商店街活性化支援策
①中小企業はどうしたら強くなれるのか?
・中小企業の経営力・技術力等の強化のための補助は効率的・効果的なものになっ
ているか。
・中小企業の自助努力や持続可能な経営への自立を促すため、補助金とそれ以外の支援の使い分けについてどのように考えるか。
・中小企業政策に係る国と地方の役割分担についてどう考えるか。
企業への補助金は、モラルハザードを起こしやすい。とくに新商品開発については、成功の芽が高いものについては民間資金も集まりやすく、また企業も自己資金を注入してとりくむ。結果、もともと企業にとって期待が薄い開発や事業ほど「補助金をもらえるなら、やってみようか」となりがちではないか、という指摘は以前からなされていた。そうなってしまう大きな理由は、補助金が「売り上げ」や「収益」の成果を求めていないことではないか、という声が仕分け人の間で出された。例えば中小企業者の技術開発から試作までの取り組みを支援する補助金「戦略的基盤技術高度化支援事業」については、3年間の収量事業299件のうち、国費投入額約315億円に対し、収益どころか売り上げすらわずか約130億円。また、商店街の活性化を目的とした補助金「中小企業活力向上事業」については、「歩行者通行量」の増減が目標達成の指標となっている。
私は、「商売というのはもうからなかったら成功とはいえない。もうかるためのインセンティブをどうするか、が重要なのに、いまの補助金のあり方はむしろ意欲をそぎかねない」と指摘。「シンドイところの助け方、セーフティネットの議論は別途必要。大阪は中小企業が多く、シンドさはよくわかっている。しかし大阪の中小企業を回って『補助金はどうか?』と尋ねると、『毎年、使えない試作品と報告書が量産される』『商品化は3割、現実のビジネス化に直結されないテーマも見られる』という声があった。こうした厳しい声を参考にして制度をリニューアルすべきだが、失敗例の収集と分析はしているのか?」と問うた。省庁側は「ネガティブ意見は聞いています。事例集はホームページに公開しています」とだけ回答。
私は「(商店街の補助金について)今後、達成目標として『売り上げ』を指標にするのか? いま商店街を活性化するまちおこしのNPOなどが出てきているが、商店街を持続可能にする指標ははっきりしている。『売り上げ』だ。一時的にイベントをやっても、売り上げに裏打ちされないにぎわいはやがて細っていく」と指摘。省庁側は「景気が悪くなれば売り上げは落ちる。『通行量』と売り上げの相関はいま検討中」と回答。
私は「それはわかっているが、売り上げに着目しないと持続可能にならない」と重ねて指摘。「何のための補助金か、という方向性が必要。①売り上げ②水平展開という2つが重要。米英の例を見ても、単体のプロジェクトに補助金を入れるのはあまり効果がない。『空き店舗を別の利用へ』という発想ばかりで、広がらない原因になっている。アメリカは、商店街やまちの活性化を成功させたNPOなどの中間支援団体への支援へとシフトさせ、成功例を水平展開させた。また、重要なのは成功しているところは『補助金はいらない』というところが多い。関係者が少しずつ投資し、リスクを負い合わなければ成功につながらない、というのだ。そういったNPOやプロジェクトへの税制優遇が可能なシステムに変えた上で、本当に必要なところをちょっとだけ助けるなど、トータルな支援を」と訴えた。
中小企業支援のトータルな支援については、「国や自治体からさまざまな支援メニューがあるが、小さいところはそれをリサーチするだけで大変。また、一度お金をもらったら終わり、というメニューが多く、継続的な支援につながらない。例えば海外に販路を求める中小企業には海外企業のデータが必要だが、それを自前で調査しろというのは厳しい。トータルな『ワンストップ・サービス』がほしいという声もある。グローバル化のなかで、中小企業が生き残るための後押しをすべきだ」と訴えた。
結局、国が直接的に支援するよりも若い人が立ち上げたNPOなどが行う支援の方がより効果が高く、波及効果が大きい。国のやるべきことは「全体としてこれだけ底上げされた」という成果につながらなくてはならない。「一企業が立ち直るのはもちろん大事。それだけではなく、水平展開にどこまでプラスになるか、という視点がなくては国の仕事としては不十分。しっかりとした後フォローと情報公開を」と発言してこのセッションを終えた。
<評価結果のとりまとめ>
中小企業に対する支援というのは必要であるし、420万の中小企業がどのように頑張っていくのかという支援は大事だと思うが、ただ、実際取り上げられた今回の施策に関しては、効果を測っていこうという指標自体が非常に曖昧なものになっているということで、その有効性というものを直ちに肯定することはできないというのが全体の議論の流れ。中小企業の自助努力や技術の強化を進めていこうということは全体的な方向性として良いが、国自体がどの分野に対してどのような支援をしていくのかという明確なターゲットというものがない。そしてまた国と地方の役割分担ということに関してもはっきりとしたものは説明の中では伺えなかった。国の役割とは何なのかということをはっきりと定めた上で、具体的な施策を行っていくべきということを提言する。
今回の「提言形政策仕分け」については、「法的拘束力がないのでは」「やりっぱなしではないか」という批判も多い。確かに、毎回同じ指摘をされている事柄も多い。また、テーマによっては議論が拡散したり、時間が短すぎるものもあった。
今回「仕分け」をネットの同時中継で見た人は6万人。赤ちゃんを抱いた母親、若者、高齢者・・・連日たくさんの傍聴者が会場につめかけた。手が不自由な方が一生懸命自分でアンケートに意見を書き込んでいらっしゃる姿が目に焼き付いている。大臣、国会議員、専門家、そして国民が共に政策を考えるオープンな機会は民主主義の基礎だと感じた。「仕分け」に関わった者として、提言を出して終わりではなく、きちっと実現していくかどうか見張り番をやりたい。
→会場はすごい熱気。
また今回も、ネット公開や会場運営など、多くのボランティアの方々に支えられた。あらためて御礼を申し上げたい。
→中継ボランティアのみなさんと。
→アンケート記入場所。