3月8日。交通基本法案が閣議決定された。これから与野党の本格的な審議が始まる。
そして3月9日。衆議院国土交通委員会で、与党筆頭理事として質問。
国土交通委員会では副大臣として答弁側だったので、初めての質問となった。
質問といえば、主に野党側が政策の矛盾をついたり、問題点を追及したりするやりとりがやはり盛り上がる。それに対して与党側の質問というと地味だったり、ときには野党の質問時間を縮めるだけの「時間つぶし」にしかとれないような質疑にも、数多く遭遇してきたのも事実。
でも、与党だからこそできる大事な質問、というのもある。重要政策に対していい答弁を引き出して補強したり、政府の方向性を再確認させたりするのだ。
この日は大畠国交大臣の所信に対する質疑だが、大畠大臣は予算委員会でも呼ばれているため国交委員会にいられる時間はわずか。そういうときは野党の質疑者に大臣への質問機会をゆずるのが与党の「マナー」。私もそうしたため、この日は大臣ではなく副大臣・政務官の政務二役とのやりとりとなり、質疑のタイミングも直前まで変更、変更だった。
持ち時間は30分と短い。また大臣所信への質疑ということで、細かな案件よりも大きな国交政策の方向性、とくに「日本の交通政策の大転換」となる交通基本法について私は問うた。
まず冒頭、「政府はどんな理念で国交行政に取り組むのか?」と私。三井副大臣は「国民のいのちと暮らしをまもる」と明言。そのために8日、交通基本法を閣議決定した、と答弁。
続いて私は日本の社会資本整備について質問。1990年代までの日本はGDPにおける公共事業のしめる割合が他国よりも際だって高かった。でもお金をこれだけかけてきたのに、大型の港湾や滑走路、公園などの社会資本整備は欧米諸国やアジアの国々と比べて不十分。「この理由をなんと考えるか?」。これに対し、耐震構造化が必要など、日本ならではの理由が事情がある、と津川政務官。さらに「予算も厳しい中で選択と集中が必要だ」と答弁。
私は「トータルなグランドデザインを考えてこなかったのでは」と指摘。少子高齢化、低成長、環境への配慮など諸条件が変わってきている上、グローバル時代への対応も求められている。国交政策が変われば、日本は変わるのだ。
そして私は、地方で公共交通が崩壊している現状について質問。「生活交通の存続危機にある地域に住む人々はどれくらいと把握しているか」。2005年の調査では1050万人、推計では2010年に1120万人、2020年に1310万人とのこと。「自家用車をもたない人はどれくらい外出機会を制限されるか?」と私。地方で車を持たなければ、三分の一に減少、という答弁。ではいわゆる「買い物難民」の数は?と問うと、不自由を感じる人は600万人を超えるのでは、という答弁。
私は「買い物難民となった高齢者の低栄養の問題もある。では地方のバス路線は毎年どれくらい廃線となっているのか?」と質問。2006年から2009年まで、平均年2000キロメートルとのこと。これは、稚内から鹿児島までの距離に該当する。一方、ある県では空港が2つつくられ、新幹線も開通した。「これで便利になった」という期待もあったが、一方で空港や在来線の赤字が増大、バス路線はますます廃線が増えている。またストロー減少で他県の大都市へと人が吸い取られていく。便利どころか、ますます住みづらくなっているという現状を、地方に行くと目の当たりにするのだ。
「生活に即した公共交通の実態を把握し、交通のベストミックスは何かを今国会で徹底的に議論したい。そして孫や子の代になって『あのとき変えてよかった』と思ってもらえるよう、次世代につなげたい」と私。
副大臣時代、国交省内外で「国交政策には強さとやさしさが必要だ」と繰り返し訴えてきた。国際競争力の向上や成長戦略が「強さ」であれば、人や環境や安全に配慮する交通基本法は「やさしさ」だ。その調和のとれた政策が必要なのだ。
私は交通基本法の海外での立法例を質問。フランスや韓国でのとりくみがある、と政府答弁。私もフランスのストラスブールや韓国のソウルに行って、まちづくりと公共交通の調和ぶりに驚いた経験がある。環境への配慮も進んでいる。
実は日本でも、地方自治体での取り組みは進んできている。NPOと行政が協働して行うシンポジウムなども増えている。
そして「交通基本法ができたら自治体とNPOはどういう協力関係になっていくか」と質問。「NPOなど住民その他の関係者との協力関係が重要になる。利用者の視点、まちづくりの観点から公共交通を考える。地域で協議会をつくって話し合われたことを支援していく」と津川政務官が答弁。
私は「事業者も大事。自治体とNPOの役割もますます重要になる」と、いくつかの自治体の取り組みを紹介。
例えば福岡市の「公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例」。住民参加で生まれた条例で、人が主役のまちづくりを推進しようというもの。
公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例
その他にも京都・京丹後市の「上限200円バス」や、茨城・土浦市の「きららちゃんバス」などさまざまな取り組みが始まっている。こうした取り組みを後押しする交通基本法には、地方を元気にする可能性がつまっているのだ。法制定に向けて意見書を準備している県議会もあると聞いている。
また、先日参加した熊本市のNPO集会を紹介。与野党の超党派の議員、NPO、住民、市長まで参加して、公共交通のデザインについて活気ある議論が行われた。交通基本法は、多くの人たちが「まちづくり」を考えるきっかけになり、日本を元気にする起爆剤になる、と実感したのだ。
もちろん、観光における効果も高い。私は、富山市のLRT「富山ポートラム」の観光における効果について質問。富山市は2006年の「富山ポートラム」開通をきっかけに、町並み修繕やイベントなど立体的な動きが活性化し、その複合効果で観光客が増えているとのこと。
最後に私は、「日本を元気にする国交委員会にしたい」とみんなに訴えた。