2023/5/10(水)、「原子力発電所の再稼働と電気料金の関係に関する質問主意書」を提出しました。
→答弁書は5/19(金)に閣議決定されました。
【答弁】参71辻元清美君(原子力発電所の再稼働と電気料金の関係に関する質問主意書)
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原子力発電所の再稼働と電気料金の関係に関する質問主意書
岸田内閣総理大臣は二〇二二年十月五日の衆議院本会議において、「原子力発電所の再稼働により、電力需給逼迫が緩和されるとともに、電力価格上昇が抑制される」との認識を示し、二〇二三年二月十日に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」では「電力自由化の下での事業環境整備、再生可能エネルギー導入のための系統整備、原子力発電所の再稼働などが十分に進まず、国際的なエネルギー市況の変化などとあいまって、二〇二二年三月と六月に発生した東京電力管内などの電力需給ひっ迫に加え、エネルギー価格が大幅に上昇する事態が生じ」たとの現状認識を示している。すなわち、原発の再稼働が進まないことが電力需給ひっ迫及びエネルギー価格上昇の一因であるという認識である。
一方、昨年来、旧一般電気事業者七社(東北、北陸、中国、四国、沖縄、東京、北海道)から、電気料金(規制部門)の値上げ申請が行われ、現在、電力・ガス取引監視等委員会などで審査中である。原価算定期間である二〇二三年度から二〇二五年度中に原発再稼働を見込む四社(東北、北陸、中国、東京)はいずれも、原発再稼働によって一定程度の費用低減が可能であるとしている。ただし、いずれも原発の再稼働に伴う費用増と再稼働に伴い削減できる市場での電力調達費用の比較で費用が低減できるとしているのみであり、原発を維持するための費用などはここでは勘案されていない。
そこで、東京電力エナジーパートナーの申請書及び電力・ガス取引監視等委員会事務局が作成した資料をもとに、以下のとおり質問する。
一 電気料金は私企業の裁量で決定されるところではあるが、一方で、規制料金については改正電気事業法(平成二十六年法律第七二号)附則第十八条の規定に基づき、事業者の申請を国が審査し、①料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること、②料金が供給の種類により定率又は定額をもって明確に定められていること、③みなし小売電気事業者及び電気の使用者の責任に関する事項並びに電気計器その他の用品及び配線工事その他の工事に関する費用の負担の方法が適正かつ明確に定められていること、④特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと、の各項目のいずれにも適合していると認めるときは、経済産業大臣が認可することとされている。
すなわち、申請された規制料金の内容について、審査を行い、査定方針又は査定方針案を作成した国にはその内容に関する説明責任があると理解しているが、相違ないか。
二 政府は原発再稼働が電気料金引下げ効果を持つと答弁している。これは、再稼働に伴う原発に関する固定費及び燃料費の増分が、当該再稼働によって発電される電力量相当分を市場調達した場合の費用と比較して安価であることを前提としていると理解しているが、相違ないか。
三 東京電力エナジーパートナーの二〇二三年二月六日付申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」及び電力・ガス取引監視等委員会第四十三回料金制度専門会合に事務局が提出した二〇二三年四月二十六日付資料「特定小売供給約款の変更認可申請に係る査定方針案について(案)」によれば、原価算定期間中の他社購入電力料に占める原子力分は四千九百六十一億円、電力量は百十九億kWh、一方、他社購入電力料計は五兆四千六百十六億円、電力量は二千四百九十六億kWhとある。
すなわち、原子力購入電力単価は四十一・六九円/kWh、原子力を除く他社購入電力単価は二十一・八八円/kWhであると理解しているが、相違ないか。
四 電力・ガス取引監視等委員会事務局作成資料「特定小売供給約款の変更認可申請に係る査定方針案について(案)」によれば、東京電力は柏崎刈羽原発、福島第一原発、福島第二原発、東通原発の費用を負担する契約、日本原子力発電東海第二原発と東北電力女川三号、東通一号の受電契約を締結している、とある。また、東京電力エナジーパートナーの二〇二三年四月十一日付申請資料「他社購入・販売電力料(原子力)について」によれば、原価算定期間中に電力を市場で調達する場合の市場価格は二十・九七円/kWhとされている。
一方、原子力購入電力の単価は四十一・六九円/kWhであることから、柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働を行うとともに、契約しているその他の原発の費用を負担するよりも、電力を市場調達した方が安価になると理解しているが、相違ないか。
五 電力・ガス取引監視等委員会事務局作成資料「特定小売供給約款の変更認可申請に係る査定方針案について(案)」によれば、東京電力エナジーパートナーの申請における他社購入電力料に占める原子力分四千九百六十一億円の内訳は、人件費三百七十六億円、修繕費五百六十二億円、委託費六百十六億円、普及開発関係費二億円、諸費九十九億円、除却費七十九億円、再処理関係費二百五十五億円、一般負担金五百十三億円、減価償却費八百八十一億円、事業報酬四百一億円、核燃料費五十七億円、その他一千百十九億円である。
同資料によれば、東京電力エナジーパートナーは柏崎刈羽原発、福島第一原発、福島第二原発、東通原発の費用を負担する契約、さらに日本原子力発電東海第二原発と東北電力女川三号、東通一号の受電契約を締結している。東京電力エナジーパートナーの申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」によれば、原価算定期間中の原発再稼働は柏崎刈羽原発六、七号機のみとされている。東京電力エナジーパートナーが締結するこれらの原子力発電所の今回申請原価中の費用を、各費目に即してそれぞれ示されたい。またその額の適正性を示されたい。
六 東京電力エナジーパートナーの申請における他社購入電力料に占める原子力分四千九百六十一億円のうち、福島第一原発の廃止措置に関連する費用はどのようなものがあり、その額はいくらか。また、事故炉の廃炉に要した費用の原価算入根拠と、算入した金額の適正性を示されたい。
七 東京電力エナジーパートナーの申請資料「他社購入・販売電力料(原子力)について」によれば、柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働による費用削減効果は九百億円と見込まれている。申請上の見込み販売電力量は一千九百二億kWhであるから、柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働に伴う値下げ効果は〇・四七円/kWh程度となるが、この理解に相違ないか。
八 東京電力エナジーパートナーの申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」によれば、標準的な家庭一世帯の電力消費量は月二百六十kWhである。
そのため、標準的な家庭一世帯当たりの柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働による値下げ効果は月百二十二円となるが、この理解に相違ないか。
九 東京電力エナジーパートナーの申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」によれば、標準的な家庭一世帯当たりの電力消費量は月二百六十kWhである。一方、他社購入電力料に占める原子力分は四千九百六十一億円、申請上の見込み販売電力量は一千九百二億kWhであることから、販売電力一kWh当たりの原子力からの電力購入費は二・六一円となる。
すなわち、標準的な家庭一世帯当たりの原子力からの電力購入のための負担額は月六百七十九円となるが、この理解に相違ないか。
十 これまでの政府答弁から、原発再稼働は原子力規制委員会による確認と地元理解が前提とされている。
すなわち、事業者が再稼働したいと申請したからといって自動的に再稼働できるわけではなく、原子力規制委員会による確認と地元の了解が大前提とされていると認識しているが、この理解に相違ないか。
十一 原発再稼働は原子力規制委員会の確認と地元理解が前提とされている場合、柏崎刈羽原発の再稼働は申請した原価算定期間中に再稼働できないこともありうると認識しているが、この理解に相違ないか。
十二 東京電力エナジーパートナーの申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」によれば、申請期間中、柏崎刈羽原発六、七号機以外の原発再稼働は見込まれていない一方、申請資料「他社購入・販売電力料(原子力)について」では、これらの再稼働に伴い、電力量料金(核燃料費等)が三百億円、固定費(基本料金)が一千三百億円増額するとされている。
原価算定期間内に柏崎刈羽原発六、七号機が再稼働できない場合、他社購入電力料に占める原子力分は四千九百六十一億円から三千三百六十一億円になるが、この理解に相違ないか。
十三 東京電力エナジーパートナーの申請資料「規制料金値上げ申請等の概要について」によれば、他社購入電力料に占める原子力分は四千九百六十一億円、同申請資料「他社購入・販売電力料(原子力)について」に記載の再稼働による費用増分一千六百億円を削減した場合、三千三百六十一億円となる。
一方、「規制料金値上げ申請等の概要について」によれば、二〇二一年度の他社購入電力料に占める原子力分は二千八百一億円であるため、原価算定期間の原子力分費用は五百六十億円増となる。
なぜ増額するのか費目ごとに具体的に示されたい。
十四 二〇二二年十月五日の岸田総理の答弁時点では、「原子力発電所の再稼働により(中略)電力価格上昇が抑制される」という認識だったとしても、原子力購入電力よりも市場調達をした方が安価であれば、原子力以外の電力を市場調達した方が「一層電力価格上昇が抑制される」こととなり、国民生活に資することになると考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。