4月14日、国土交通委員会質疑で公共交通の現状と支援について質問しました。
いくつかポイントがあるので整理します。
●公共交通は「走らせ続けろ」「できるだけ乗るな」「協力金はなし」
ひとつは、日本の公共交通の置かれている現状が「交通崩壊」に近くなっている現状を政府がどうとらえているかということ。
国は事業者に「走らせ続けろ」という一方で、国民にはテレワークなどを推進して「できるだけ乗るな」といっています。飲食店には協力金を配りましたが、公共交通の事業者にはそれもありません。
これ、おかしくないですか。
●公共交通全体の営収減(民間試算は6.5兆円減)、6月以降で明らかに
これまで政府は、野党議員が「公共交通を守るべき」と問うても、いつも「三次補正と令和3年度本予算で計500億円の予算をつけた」という答弁でした。
そこで私は、国交省に「公共交通全体でどれくらい営業収益が減少したと把握しているか」と聞きました。
政府答弁は営業収益でなく純利益の減少が「JR・大手民鉄・JAL・ANAで約2.8兆円」だったが、地域鉄道やバスなどは6月に事業報告があがる(ので把握していない)ということ。
実態がわからなければ支援が十分かどうかはわかりません。私は、調査結果が出次第提出するように求めました。
実は民間の調査では、公共交通全体で減収6.5兆円、地方鉄道・バス・ハイタク・船舶などの中小だけで1.6兆円にのぼるという試算もあるのです。
日本モビリティ・マネジメント会議資料「危機的な状況に追い込まれている公共交通・まち」
政府の予算500億円ではケタが2つ足りません。しかもこのなかで、路線バスなど「地域の足」を守るための追加支援はわずか30~60億円程度。焼け石に水ではないですか。
●貸切バス97%・タクシー89%が雇調金頼り、地域鉄道72%・タクシー99%が融資頼り
テレワークなどが可能な産業と違って公共交通は、運行を守るためには人員の確保=雇用の確保が不可欠です。大幅減収にも関わらず政府支援が少ない現状、雇用を守る柱は雇用調整助成金(雇調金)と金融機関からの融資(資金繰り支援)になっています。
私は、国交省に公共交通事業者がどれくらい上記2つに頼っているか、実態を問いました。
○給付済み、申請済み、申請に向けて検討中の事業者合計(国交省答弁・資料より)
1)雇用調整助成金
・貸切バス97%、タクシー89%、乗合バス76%、地域鉄道64%、
2)危機対応融資など資金繰り支援
・タクシー99%、貸切バス94%、地域鉄道72%、乗合バス71%
もしも雇調金が突然切られたら、多くのバス事業者などが追い詰められることになります。
融資についても、多くの事業者が借金でなんとか事業継続している実態が明らかになりました。
この2点について、私は政府と議論しました。
●7月以降の雇調金延長は「雇用状況」だけでなく「感染状況」も踏まえると厚労副大臣
<雇用調整助成金>
この日の質疑に、私は三原じゅん子厚労副大臣を呼びました。公共交通がどれだけ厳しい状況に置かれているかを知ってほしかったからです。
当初、7月以降の雇調金の特例措置(日額上限15000円、助成率最大10/10)の延長について三原副大臣の答弁はこうです。
・長期間にわたり休業による雇用維持を図り続けることには、働く方々のモチベーションの問題や、新しい産業等への人材の移動を阻害する等の懸念もある
・7月以降は、雇用情勢が大きく悪化しない限り、原則的な措置と地域や業況に係る特例措置をそれぞれ更に縮減する
「雇用情勢が悪化しなければ雇調金を縮減する」というのは、ベクトルが逆だと思います。
いまなんとか雇用を守っている事業者も、「雇調金が縮減すれば雇用が守れない→ひいては公共交通そのものが維持できない」のです。
議論の結果、三原厚労副大臣は、具体的には「休業者数、完全失業者数、完全失業率、有効求人倍率といった雇用指標に加えて、その時々の感染状況等も踏まえながら、総合的に判断していく必要がある」と答弁しました。
政府が「雇用指標」の中身を具体的に上げたのも初めてなら、雇用以外に「感染状況等」も踏まえる、と踏み込んだのは初めてです。
この答弁が重要なのは、仮に全体の失業率等が大きく悪化しなくても、感染状況が改善されなければ雇調金の特例措置は延長する可能性がある、と示したことです。コロナでむしろ業績を伸ばしている産業もある以上、トータルの失業率等が大きく落ち込まない可能性もあるなかで、傷んでいる産業が切り捨てられる――そんなリスクを防いだと考えています。
私は赤羽国交大臣に問いました。
・今、財務省の財政制度分科会では、雇用調整助成金の特例によって休業を促すことから再就職を支援することに労働政策の軸足を移していくべきではないかという議論がされている。
・しかし公共交通の労働者は、それでなくても平均よりも給料が低く、ドライバーの高齢化が進んでいる。
・そんな中で、他に移ってくださいといって労働者がいなくなったら、後で取り返しがつかない。6月で急にバサッと切ったらえらいことになる、と厚労省に実情を伝えるべき。
赤羽大臣も「(公共交通や観光は)典型的な集約型労働型の業界でありますので、最後までその対象にし続けていただきたいということは強く申し上げておりますし、是非これは与野党を超えて、政党からの応援もお願いしたい」と答弁しました。
●公共交通事業者も「長期の返済猶予と新規融資の積極実施」の対象になる、と金融庁
<融資(資金繰り支援)>
労働組合の私鉄総連が行ったアンケートで、実態が明らかになってきました。私鉄系の公共交通事業者だけで1兆円近い借金、という可能性があるのです。
地方の事業者のなかには返済猶予や新規融資が認められず、元本返済を迫られたり、返済計画を求められていて人員整理が始まりかねない、そういう厳しい実態の声も届いています。
そんななか3月23日、関係閣僚会議で「新型コロナの影響を特に受けている飲食・宿泊等の企業向けの金融支援等について」(財務省、経産省、金融庁、農水省)という文書が出されました。
「新型コロナの影響を特に受けている飲食・宿泊等の企業向けの金融支援等について」(令和3年3月23日、財務省・経済産業省・金融庁・農林水産省)
文書には民間金融機関にも長期の返済猶予と新規融資の積極実施の徹底等を要請する、と書いてありますが、これは公共交通事業者が対象になるのかどうか?
私は、「飲食・宿泊等の企業」の「等」に公共交通事業者が含まれるのか、「長期の返済猶予と新規融資の積極実施」の対象になるのか、と金融庁に問うたところ、明確に「含む」と答弁。
コロナがいつ収束するかわかりません。返済計画も立てられないなか、貸し渋り・貸しはがしをしてはいけないというのが金融庁及び政府の方針であるということが確認できました。
●「GoToワクチン」を提案! タクシーで接種会場へ移動、接種会場にバスを利用
最後に、公共交通を応援するための提案もいくつか行いました。
まずは内閣府の地方創生臨時交付金の活用です。大阪の堺市では、「おでかけ応援カード」というしくみを使った高齢者の運賃を、交付金を使って通常100円から無料にしました。こうした自治体、自治体議員、事業者、労働組合が知恵を絞った工夫で、コロナ前よりも利用者が増えています。
また、ワクチン接種とタクシー・バスの利用を組み合わせた「GoToワクチン」も予算をとってサポートしては、と提案しました。
赤羽国交大臣も以下の答弁。
「接種会場までの運搬をタクシー事業者ですとかバス事業者に依頼するということは、私もそう希望もしておりますし、そう実際やられている地方自治体もあります。そのときにドライバーになる方が優先的に接種をするという配慮もされている地方自治体もありますし、私はそうあってほしいとも思っておりますので、そういうことは、ちょっと政府部内での整理というのはどういうことなのかよく分かりませんが、そうしたことについては、もちろん厚生労働大臣とは、費用の面も含めて、配慮してほしいということは常に申し上げているところです」
海外の公共交通支援の例も紹介しました。フランスなどでも、バリアフリー化やホーム柵の設置、脱炭素化への鉄道車両の支援など、コロナをきっかけに交通を再生するという将来投資に予算をつけています。その予算約1.5兆円。
耐え続けている公共交通の事業者、そこで働く人たちのために、政府は規模と発想を変えた支援をすべきと今後も訴えていきます。