本日、予算委員会の集中質疑で安倍総理や菅官房長官に「憲法」について質問しました(詳細は下記)。
また、今日私は和泉総理補佐官を参考人に呼びましたが、認められませんでした。そこで、桜を見る会では総理の「公私混同・税金の私物化」と言われているが、総理の側近官僚にまで蔓延しているのではないか、総理に問いました。
総理補佐官が女性官僚と4度も公費出張で「コネクティングルーム」に泊まったことを問うと、菅官房長官は「問題ない出張」と答弁。民間企業であれば、男性上司から女性部下に対するセクハラとして認定される事案だし、合意していたなら職権乱用ではないか?
さらに驚いたのは総理答弁です。
幹部自衛官が風俗営業をやっていたことを安倍総理は「初めて聞いた」、「コロナ対策をしていたので承知していないから確かめる」と逃げるのみ。総理大臣は自衛隊の最高指揮官だし、和泉補佐官は安倍総理の「補佐官」のはずなのに。いったいどんな指揮系統になっているのか。
私は質疑時間の最後、安倍総理に「鯛は頭から腐る」という言葉を紹介しました。
総理補佐官が公私混同の疑いをもたれても、総理はけじめをつけさせることができないのはなぜか。加計学園疑惑で真実を知りうる立場でしゃべられたら困るから切れないのでは、という疑いが広がっている。「私の手で憲法改正」と言っているが、総理の手で成し遂げることは「憲法改正ではなく、ご自分の幕引きである」――そう発言して質問を終えた私の背中に、閣僚席の安倍総理が「意味のない質問だよ」と暴言を浴びせたのです。
<立憲国対ツイッター>
『本日2/12(水)予算委員会の集中審議において、辻元議員の質疑の後に、安倍総理から「意味の無い質問だよ」とヤジがあり委員会が紛糾しました。』
耳を疑いました。私以外にも何人もの出席者が聞いていたので、委員会は紛糾。棚橋委員長は「速記を確認する、速記が出るのは時間がかかる」というだけで事態を整理しようとしないので、NHKが中継する中およそ15分、委員会の混乱はやみませんでした。
次の質疑者である立憲民主党の逢坂誠二政調会長が総理に確認したところ、総理は「最後のところで私からすれば罵詈雑言の連続だった。私に反論する機会を与えずに終えられたので申し上げた」と、当然の権利であるかのように発言を認めました。
私は安保法制の議論のときも、質問中に安倍総理から「早く質問しろよ」とヤジを浴びたことがありました。今回は、質疑時間が終った後、背中に向けての暴言です。それこそ、私には反論のしようもありません。
辻元清美ブログ「安倍総理が「早く質問しろよ」発言、三権分立の基本をおわかりでないのか?」
私が以前ヤジを浴びたときに、質問主意書を出し、その答弁が閣議決定されています。
安倍晋三内閣総理大臣の不規則発言に関する質問主意書(2015年6月2日提出)
四、吉國一郎内閣法制局長官は、一九七五年六月五日の参議院法務委員会において、「ただいま仰せられましたように、憲法六十三条におきましては、内閣総理大臣その他の国務大臣の議院出席の権利と義務を規定いたしております。このことは、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席をいたしました場合には、発言をすることができ、また政治上あるいは行政上の問題について答弁し説明すべきことを当然の前提といたしておるのでございます。つまり、答弁し説明をする義務があるというふうに考えております。」と答弁している。政府は、現在もこの見解を維持しているのか。
これに対する政府答弁は、「政府の見解に変更はない。」です。総理大臣には質問に対し答弁する義務がありますが、「反論する機会がないから」と質疑者に背中から暴言を浴びせる「権利」があるとは思いません。
安倍総理の発言は、単に私を貶めるだけのものではありません。立法府の冒涜だとして、自民党からも問題視する声があがっているそうです。与野党でどう決着をつけるか、見守っています。
<立憲ツイッター>
『17時30分より、安倍総理のヤジ問題などについて、安住委員長と自民党の森山委員長が会談をしています。』
私は10人以上の総理大臣と議論し、ときには激しく対峙してきました。しかし、自分への批判を「罵詈雑言」と受け止め、背中から暴言をはいたのは安倍総理が始めてです。小渕総理などは、厳しい批判も飲み込んで「言ってくれてありがとう」とおっしゃる度量がありました。それが、ここまで劣化してしまったのかと思うと、悲しい限りです。
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本日、私は主に憲法について質疑をしました。
新型コロナウィルスの感染拡大について、与党の政治家が、緊急事態条項がないから、十分対応できないと発信しています。これは「憲法改正しないと感染症対策が出来ない国なのか」「そんな危ない国でオリンピックが開催できるのか」と海外にも間違ったメッセージが拡散しかねません。東日本大震災の後にも「緊急事態条項がないから十分に対応できなかった」と自民党議員が騒いだことがありました。震災後、私は当時の中谷元防衛大臣と議論。結論は、新規立法や自衛隊法改正なしで対応可能ということでした。
憲法改正して緊急事態条項を入れなくても、現行法でしっかり感染症対策はできると公式な国会の場で、国際的にも発信してほしい――と私は質問しました。安倍総理は「現行法の中で全力をつくす」と答弁せざるをえませんでした。
続いて、国政選挙と国民投票は同時にできるのかを確認。議員立法である国民投票法は、加藤勝信厚労大臣が法案提出者として、立法者の意思を答弁しています。
「与野党が政権をかけて争う国政選挙と、国会の三分の二以上の勢力が協調して行われる憲法改正是非を問う国民投票とは質的に異なるものである。同時に行えば有権者の混乱というものを引き起こしかねない。こういう観点から、この法律においては、憲法改正国民投票と国政選挙を同時に実施することは想定しておりません」(2006年12月7日)
立法府の意思は、国民投票と国政選挙を同時に行うことは難しいというもの。解散権を持つ総理も、この立法府の意思を尊重していただきたい、と安倍総理に問いました。安倍総理は「立法者の意思は承知している。他方、それが総理大臣の解散権をしばるか、はそうではない。いずれにしても解散は考えていない」と答弁。
当時はこのことをずいぶん議論して、当時委員だった公明党の斉藤鉄夫議員なども同じ発言をしている。肝に銘じていただきたい、というと安倍総理は大きくうなずいた。
そして、続いて菅官房長官に質問。
安倍総理は憲法九条の一項、二項はそのままにして、自衛隊の存在を書き加えるといっているが、その根拠は「七割の憲法学者が憲法違反の疑いがある、自衛隊に対してそういう疑いを持っているという状況をなくすべきではないか」というもの。菅官房長官も同じ意見か? と聞くと肯定。
しかし安保法制の議論のとき、私は菅長官に「9割の憲法学者が憲法違反だ」というが「安保法制は合憲である」と言っている憲法学者の名前は、という質問した。菅長官は三人の名前しか答弁できなかったが、そのときに「数じゃない」「大事なのは、憲法学者はどの方が多数派だとか、少数派だとか、そういうことではない」「(違憲だという元最高裁判所長官について)一私人の意見で聞く必要はない」と答弁しているのだ。
じゃあ、たとえ10割の憲法学者が「自衛隊は憲法違反」と言おうが、政府の公式解釈は合憲なのだから、安保法制の時と同じように無視、気にする必要はないのでは。憲法に自衛隊を明記する根拠になりえないのでは、と私。
この論理矛盾に対し菅官房長官は「私たち自民党は、自主憲法制定が党是として発足した政党だから」と非論理的な答弁を繰り返すのみ。まったく答えになっていません。
そして、もしも安倍総理のいう「憲法9条に自衛隊明記」が国民投票にかかって否決されたらどうなるか、と安倍総理に問うとやはり「政府見解は合憲なのだから何も変わらない。しかし自衛隊を合憲とする憲法学者が2割しかいないがために違憲合憲に議論がある、ということが教科書にのり、それを根拠に反対運動がおきている。自衛隊を憲法に明記することで終止符を打つことができる、これが国防の根幹」と答弁。甘い。
もしも否決されれば合憲だという社会的なコンセンサスに疑念が深まるのでは。自衛隊員の士気の低下にならないか。国際的に自衛隊の信用低下につながらないか。
否決されれば、「自衛隊の明記は国民投票で否決された」と教科書に書かれ、正当性を明らかにするどころか、社会的にも国際的にも、正当性を大きく低下させかねない。北朝鮮問題や中東情勢に直面している今、自衛隊の存在をかえって不安定にするカケをする必要がどこにあるのか――と私は訴えました。
そして、安倍総理の色が付きすぎた「自衛隊明記案」は否決される可能性が高いと思う、と指摘。事実、2016年にイタリアで行われた国民投票では首相が「憲法改正の成否に自分の進退をかける」と旗を振ったために「首相の信任投票」になり、否決された経緯がある。――と指摘しました。
かつては96条改正を声高に叫び、96条がだめだったら自衛隊明記、感染症問題が広がったら緊急事態条項。
安倍総理は、またしばらくしたら、別の項目を言い出すのではないか。これではやはり「自分の手で憲法を変えた」という実績をつくりたいだけの「思い出作り改憲」ではないか、という思いを強くした質疑でした。