つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)つじもと清美 公式 参議院議員 立憲民主党(全国比例代表)

活動報告・国会質問・質問主意書

民泊及び違法民泊に関する質問主意書

2017.5.23

質問主意書

民泊及び違法民泊に関する質問主意書

右の質問主意書を提出する。

  平成二十九年五月二十三日

           提出者  辻  元  清  美  

 衆議院議長 大 島 理 森 殿

   民泊及び違法民泊に関する質問主意書

 近年、民泊サービスが世界各国で展開され、わが国でも急速に普及するに伴い、様々な問題点も明らかになってきている。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会などが、二〇一六年三月に開いた会合(「民泊の真実――今、観光立国フランスで起こっていること」)では、「一日に一軒のホテルが廃業か倒産に追い込まれている」「アパートなどの所有者がより利益の上がる民泊営業に物件を回したため、パリ市内の家賃相場は数年で急上昇していきました。民泊物件へ回すために賃貸契約の約二十五%が契約更新されず、住人は住居を失い高額な物件を探してやむなく賃貸し直すか、郊外へと引っ越しを余儀なくされた。特に観光客が多い地域では、住民が減り学級閉鎖に陥る学校も出ている」という、フランスの業界団体代表からの報告があった。また、二〇一五年十一月十三日(日本時間十四日)に発生したパリ同時多発テロでは、その主犯格が潜伏先として民泊を利用していたという報告もあった。
同時に、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会や日本旅館協会などによる「『民泊』に対する共同声明」が出されている。
声明は以下のような提言を行っている。
一、『民泊』を含め全ての宿泊施設は行政官庁への申告登録を経て、許認可を得る必要があるとすべきであり、無許可営業並びに脱税行為を厳しく取り締まる必要がある。
二、テロの脅威を未然に防ぐ為に、『民泊』を含め全ての宿泊施設は宿泊者の対面確認と記録の保存をすることが必要である。
三、『民泊』を営むものは他の宿泊施設と同様に納税、衛生管理、消防の義務を負わなければいけない。また近隣住民に対する告知の義務を負う必要がある。
四、『民泊』を仲介するプラットフォーム提供事業者は、『民泊』を含める全ての宿泊施設が正式な許認可を得ているか確認しなければいけない。また、プラットフォーム提供事業者は税務署に対して宿泊施設の所得を開示する義務があり、その他宿泊地の法令を順守する必要がある。
五、『民泊』を含む違法な宿泊業者、プラットフォーム提供事業者の罰則を強化することが観光の発展に必要である。
また、日本中小ホテル旅館協同組合は、二〇一七年一月二十五日に意見広告を出し、「全国に許可された民泊施設は約三十件程度で(当組合調べ)法律を無視した無許可営業(懲役六カ月以下の罰則)をしている違法民泊施設は全国約四万六千カ所(当組合調べ)」と明らかにしている。また同組合は「この民泊は、ほとんどが都内、市内で営業されており、外国人旅行客は郊外、地方に行くことにならず、国が国策として掲げる地方創生政策の全く逆となる結果となっています」と指摘している。さらに、ホテル旅館不足という認識について、立地の良いシティホテルやビジネスホテルチェーンの客室稼働率が高くなっている一方、中小のホテルや旅館の平均稼働率について「都心部でも平日で約五十%、土祝日前日で約八十%、郊外ではそれより十%位低い(二〇一五~二〇一六年度当組合調べ)のが現実」である、と指摘している。
そして、サービス・ツーリズム産業労働組合連合会は、二〇一六年三月四日、二〇一七年三月十三日に見解を発表し、「『民泊サービス』に対する旅館業法を適用除外すれば、帳場(フロント)もないため身元が確認できない利用者が部屋を使用することになり、公衆衛生、感染症、火災、テロへの危機管理、近隣住民の日常生活への影響などへの対応がおろそかになることが危惧されます」「住宅宿泊事業を行う場合は、当該地域の住民に対する事前説明を行うなど住民の不安の払しょくに取り組む必要があると考えます」とするなど、サービス・ツーリズム産業の持続可能な発展や観光立国の実現に向けた提言を行っている。

民泊をとりまくこうした現状があるなか、政府もまた海外における民泊の実態について、「地域活性化ワーキング・グループ」で検討を行っている。
「パリ市では、一般住宅の『ホテル化』による家賃上昇や物件不足を懸念して、一年で四か月間以上を旅行客向けに貸し出す物件については届出義務を課すとともに、上記ALUR法に沿って、長期の貸し手は、同じ面積のアパートを同じ区内に用意するよう義務づけている」(第二十一回地域活性化ワーキング・グループ、二〇一五年十一月九日)
「海外の動向④フランスパリ市」人気のマレ地区等で、居住者よりもAirbnb利用の短期滞在者が多くなり、パリ市内のアパート供給量の低下、賃料高騰、住環境悪化が深刻な問題に。(『民泊をめぐる現状と法的課題について』矢ケ崎准教授提出資料、第二十回地域活性化ワーキング・グループ、二〇一五年十月二十九日)
一方、平成二十八年十~十二月に行われた全国民泊実態調査の結果において、「正確な住所が詳細に記載されている物件がほとんど無く、物件特定不可・調査中の割合が五十二・九%であり、物件の特定すら非常に困難」とされるなど、民泊の実態は明らかになっていない。
 以下、質問する。

問一 民泊及び、旅館業法の許可などを得ずに違法に営業する「違法民泊(闇民泊)」の実態把握について
1 直近の三カ年について、民泊に対する苦情について、どのように把握しているか。件数と具体的な内容について、自治体からの情報提供も含め明らかにされたい。
2 直近の三カ年について、摘発や賠償命令が下された「違法民泊」は何件か。違法行為の具体的な内容も列挙されたい。
3 民泊をめぐるトラブルや違法行為の増加について、どのような原因があると考えているか。
4 現在の違法民泊施設のうち、政府は今後の施策で何件が「合法」になると考えているか。
5 違法民泊施設が都心部に集中している現状、合法化された民泊施設が増えることは、地方の観光客を奪うことにつながりかねないと考えるが、政府の認識を明らかにされたい。また地方の観光促進のために、どのような施策を検討しているか。

問二 観光先進国であるところのフランスの実態について
1 「パリ市内のアパート供給量の低下、賃料高騰、住環境悪化」の主たる原因は何であると考えるか。
2 パリ同時多発テロにおいては、その主犯格が潜伏先として民泊を利用していたという事実を了解しているか。
3 民泊がテロや犯罪の滞在先になるのではないか、というリスクを減ずるために、政府は現在どのような対策を検討しているか。

問三 民泊のプラットフォーム提供事業者の実態について
1 現在、主なプラットフォーム提供事業者は何件あり、紹介物件はのべ何件か。
2 直近三カ年で、行政から摘発もしくは指導を受けたプラットフォーム提供事業者の数は何件か。
3 今後、プラットフォーム提供事業者に対するどのような規制や罰則強化が必要になると考えているか。 

問四 ホテル旅館不足の現状について
1 政府は、中小のホテル・旅館の平均稼働率について、どのように実態を把握しているか。
2 今後、民泊施設が増えていくことで、中小のホテル・旅館の平均稼働率はどのように推移すると予測しているか。

問五 上記のように、各種事業者団体、労働組合から民泊の推進について慎重意見・反対意見が出されていることを承知しているか。こうした懸念に対し、政府は今後どのように対応していくつもりか。

右質問する。