3月16日より本国会で初めて、憲法審査会の実質審議がはじまりました。
審査会のメンバーの中には、長年この場で議論をたたかわせてきた船田元議員や保岡興治議員の名前も。
委員席の後ろの席には、元憲法調査会長の中山太郎さんもいらしていました。
傍聴席は、憲法改正の動きを押し進めようとする与党の動きに危機感を持った大勢の市民が詰めかけ、立ち見が多数出ていました。
この日は、与党が「衆議院解散時に緊急事態が発生した場合に備え、憲法に議員の任期を延長する事項を盛り込むべき」と主張。
大災害発生時などに政治の空白を作らないことを理由に憲法改正の必要性を訴える流れで討論が進みました。
私は、東日本大震災発生時に総理補佐官として最前線で奔走した立場から、緊急時に政府と自治体、現場がどう動くかの現実意見を述べました。
以下、自由討論での発言の文字起こしです。
民進党の辻元清美です。私は、緊急事態条項について意見を述べます。
東日本大震災のときに、私は、被災者御支援の総理補佐官をしておりました。当時、災害担当大臣、そして副大臣、総務大臣、内閣官房副長官、 そして総理補佐官の私と五名が担当し、各省庁と自衛隊の指揮に当たる者が、連日、毎日、定刻に会議を開いておりました。そして、その中で出た課題については二十四時間以内に対応し、翌日また報告をするという体制で臨んでおりました。しかし、そこで痛感したことは、中央政府の判断や決定には限界があるということを痛感いたしました。私は、この経験から、中央政府の権限を強めるというよりも、地方自治体、特に市町村のいざというときにできることの権限を強めなければ、被災者の支援は非常に困難になるということを痛感しました。そして、被災した市町村、全て回りました。それは、政府の情報を伝え、市町村の、現場の状況を把握し、また要請を受けるということだったんですが、それでもやはり現場の判断が一番だと痛感するんですね。政府に持って帰っていって何かしようと思っても、もう遅いわけです。刻々と状況が変わります。例えば、県と市町村もそうだったんです。盛岡と陸前高田では情報がなかなか上がらない、県庁に来ない。また、福島市とそれから南相馬では、もう格段の差があったんですね。
ですから、地域でどれだけさまざまなことが決定できるか。先ほど太田委員の方から、国交省、当時、くしの歯作戦ということで、ものすごく頑張ったわけです。道をあけないと物が運べないということで頑張ったわけですが、これは東北の整備局に大きな権限を与えて、そこで物すごく頑張っていただいたということなんです。
ですから、そういう経験から申し上げますと、 憲法でどういう緊急事態条項を、総理大臣に権限を持たせるということの中身が一体何なのか、そういう発言をされた方がいらっしゃいましたが、 例えば自民党の憲法草案を拝見いたしますと、行政府が立法府を経なくとも法令を制定したり予算をつける権限を持たせるというようなことがありますが、これをつくって一体どういう、自民党がそういう方向を目指しているとすれば、私は言語道断で反対なんですけれども、これはワイマール憲法下のナチスが出てきたのと同じとも言われています。悪用も考えられるわけです。それが一体、現場の災害など緊急事態にどうプラスになるのか。 もしもそういうことを提案したい方がいれば、現場に即してぜひ説明をしていただきたいと思います。
そして、原発事故もありました。これは、人類が今まで経験した災害の中で一番過酷な事故だったわけです。津波や地震を経験した他国もあります。しかし、一番過酷な原発事故を伴った複合災害だったんです。このとき、自衛隊の皆さんには非常に過酷な任務を担っていただいたんです。そして、津波の対応もそうだったですけれども、今までの、さきの 戦争に次ぐ大きな任務だったと思います。しかし、 その任務を経た後、自衛隊法の改正をすべき点が あるか点検して、災害にまつわることなどでは改正点は今のところないわけですね。ですから、他の災害対策基本法などは地方に権 限を持たせるということで改正がなされましたという現実をしっかり踏まえた上で、緊急事態条項の議論をしないとだめだと思うんです。有効だと言われた対策は、飛び地の自治体間同士の協力などは非常に有効だったわけです。例えば南相馬に対して世田谷区が、自治体間同士での連携なんですよ。それは、中央政府を通さずにやっていたのが非常に迅速だったんですね。
緊急事態への対応というのは、その災害等が発生してから行うものではなくて、日ごろのそういう積み重ねをいかに政府でやっておくかということが最大の緊急事態への対応である。
最後に、選挙についてです。一言だけ申し上げたいと思います。
これは、政党政治のあり方。当時、東日本大震災で、私たち、支援に苦しんでいた。三月に始まって、五月に自民党を初め野党は不信任案を出したんですよ。解散に追い込まれかねない状況だったわけですよ。ですからこれは、あのとき、不信任を可決して解散しようとしていたんでしょうか。
政党政治が当時そういうことをしておいて、そして、災害のときに選挙ができないからどうしようって。これは、政党政治のそれぞれの緊急事態における振る舞いも、私たち、心して緊急事態についての選挙やそれから政治のあり方を議論すべきだということを一言申し上げて、終わります。
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なお、本日憲法審査会事務局から出された資料は以下、PDFで見ることができます。(4つのファイルに分割)